釜石の日々

予想以上に手強いウイルス

米国の学校に行っていた息子は、私事で釜石へ来てくれたが、米国での感染拡大のために米国へは戻れなくなってしまった。米国だけでなく、日本でいた大阪にさえも今では危なくて帰れない。一部はオンライン授業で補えるが十分ではない。毎晩深夜に米国の友人と連絡をとり、米国の感染拡大の様子を聞かされているようだ。息子とは異なり、こちらは在日していた大連市出身の知人と連絡をとり、中国の感染状態を教えてもらって来た。その知人も父親がウイルス感染とは別の病気でICUに入るまでの重病となったため、帰国したが、成田ー大蓮の直通便の運航が中止され、上海へ向かった。上海へは現地時間0時に着き、それからウイルス検査や数々の質問があり、結局、2週間隔離されるホテルには朝の4時半にようやく入り休めたそうだ。検査結果はわずかな時間で伝えられ、陰性であった。ホテルの動画も送ってもらったが、ツインベッドの広いいい部屋で、食事はドアの外にシートに包まれて置かれ、味も悪くないとのことだった。宿泊費は食事を含めて日本の5000円くらいになるそうだ。陰性であっても2週間は上海の決められたホテルにいなければならない。2週間後に再び検査をして陰性であれば、解放されて、大連へ飛行機で向かうことが出来るようになる。この知人によれば、日本人はあまりにもこのウイルスに対して警戒心がなさ過ぎると言う。知人は東京の友人宅から成田に向かったが、その時点ですでにマスクは無論「予防服」や予防眼鏡、手袋などを身に着け、機内に搭乗する直前にさらに新しいものに着替えると言う周到さである。中国への帰国者は必ずそうしていると言う。息子も日本への帰国時の成田の検疫の甘さに驚いていた。中国では現在、あたかも終息に向かうかのように見えているが、帰国者だけでなく、国内在住者からも新規感染はまだ発生している。上海新型コロナウイルス(COVID-19)治療専門家チームのトップを務める上海の華山医院(Huashan Hospital)感染症科張文宏科長は、人類がこの夏に新型コロナの世界的な感染を完全に終息させることは出来ず、11月に感染の第2波が発生する可能性があると述べている。そして、世界の感染状況は、医療資源が不足しているアフリカや南米がどのように感染に対処出来るかにかかっているとも付け加えている。現在、世界では70種のワクチンが開発され、3種がすでに臨床試験に入った。しかし、こうしたワクチン開発が無駄になる可能性もある。1月末にインド工科大学の研究者が、この新型コロナウイルスがHIVウイルスと同じ4種類のタンパク質を持つことを報告し、そのような変異は自然界ではあり得ないとまで踏み込んだため、むしろ世界中の研究者から非難を浴び、この論文は取り下げられた。しかし、12日の香港のSouth China Morning Postに掲載された「Coronavirus could attack immune system like HIV by targeting protective cells, warn scientists」と言う記事によると、人の免疫システムでいわば司令塔的な役割を果たすT細胞と呼ばれる重要な細胞が、新型コロナウイルスにより機能不全に陥らされると言う。上海復旦大学とニューヨーク血液センターの研究者らによる共同研究である。HIVウイルスは免疫の司令塔であるT細胞内に侵入し、その細胞内で複製され増殖する。SARSウイルスやMERSウイルスは、T細胞内へは侵入出来ない。ところが、新型コロナウイルスSars-CoV-2は、HIVウイルス同様にT細胞内へ侵入することが明かになった。ただ、HIVウイルスと異なり、T細胞内での複製、増殖は出来ない。侵入してT細胞の持つ機能を不全にしてしまう。HIVウイルスは一度人の体内へ入れば、そのまま人が命を落とすまで、体内で生き続けるが、新型コロナウイルスは、おそらく死滅すると考えられ、T細胞とともに死滅するのではと考えられているようだ。新型コロナウイルス感染による重症化では、二つのパターンがある。重症肺炎状態ではT細胞の減少が見られ、サイトカインストームでは免疫細胞の過剰反応が見られ、多臓器不全を起こす。何故サイトカインストームが起きるのかはまだ分かっていない。中国のウイルス対策のトップである鍾南山医師は、このウイルスがすでに変異して人体内での生存に適した形になっており、致死率はインフルエンザの20倍になるとしている(WHOは10倍と発表しているが)。15日と言う速さで変異し、免疫の司令塔を攻撃し、免疫力を阻害するウイルスに、有効な抗体を作るワクチンが開発出来るだろうか。
夕暮れの甲子川
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