釜石の日々

目覚めた獅子

2008年のリーマン・ショックは中国にも大きく影響した。米国への輸出が激減したからだ。中国政府は経済成長を維持するために、国内の不動産投資を奨励し、低金利融資を利用して企業や個人が不動産を購入しやすくした。このため、膨大な企業債務に支えられた不動産バブルが生じている。このバブルの崩壊は中国経済を一時的に窮地に陥れるだろう。しかし、中国は巨大な国家であり、多様な側面を同時に持っている。早稲田大学の野口悠紀雄教授によると、中国のAI人工知能をはじめとするコンピューター技術・知識はすでに米国と並び、コンピューター部門での大学ランキングでは、米国のマサチューセッツ工科大学MITやスタンフォード大学を抜き、中国の清華大学が世界一となっている。日本の東京大学は91位である。全米科学財団の報告では、2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だったアメリカを抜き、世界のトップに立った。日本は2015年にインドに抜かれ、2016年は第6位である。コンピュータ科学分野の論文に限ると、中国がトップで、以下、アメリカ、インド、ドイツと続き、日本は5位となっている。中国政府は、AIを将来の最優先技術に指定し、昨年7月には「新世代のAI開発計画」を発表し、2030年までにAIで世界をリードするという目標を定めている。11月にはこの計画に基づき、4つのAI分野でそれぞれ「リード企業」を選定している。医療分野はテンセント、スマートシティはアリババ、自動車の自動運転は百度、音声認識はアイフライテックが担当する。テンセントの株式時価総額は、中国企業として初めて5000億ドルを突破し、フェイスブックを抜いて、アマゾンに迫る。1月末の時価総額は、テンセントが5581億ドル(世界第5位)、アリババが5167億ドル(第8位)となっている。ちなみに、日本最大のトヨタ自動車が2051億ドル(第43位)であることを考えると、中国企業の巨大さが分かるだろう。時価総額世界一は米国アップルの8596億ドルで、トヨタの4倍である。2017年のAI関連企業による資金調達額でも、中国がアメリカを抜いて初めて世界一になっている。中国電子科技集団(CETC)は、昨年6月、119機のドローンの編隊飛行のテストに成功した。多数のドローンが衝突せずに飛行するためには、高度のAI技術が必要で、人民解放軍は数千機ものドローン(UAVs)で空母を攻撃する戦法を生み出したと言う。教授によれば、米国は1990年代にITを活用して、「軍事革命」(RMA)を実現し、他国の追随を許さぬ圧倒的な優位を確立したが、今や「AI軍事革命」を先導しようとしているのは、中国の人民解放軍だと言う。顔認証技術でも、通常のカメラの前に立った人物の顔認証よりも雑踏の中の人物の顔認証ははるかに高度になるが、中国ではすでにそのような状況下での顔認証が可能となっている。基礎研究の基盤と、それを活かす巨大企業の存在と言う全ての条件が中国では整っている。
雪の中で咲く藪椿
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