釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

未解決問題を放置して推進されるマイナンバー

2013-05-20 19:18:20 | 社会
朝には昨夜の雨が止んでいた。しかし、雲が多く、すっきりしない天気になった。昼には23度まで気温が上がった。夜は15度の予想になっている。所用で昼休みに甲子川のそばを通ると、オオヨシキリが甲高く鳴いていた。時間が少しあったので裏山の旧道を走ってみると、山藤がきれいに咲いていた。ウグイスの声も聞こえて来た。もうすぐ桐の花や朴(ほお)の木の花なども見られるようになるだろう。職場の裏の山でも椿の木の上から山藤が伸びて来て、花が開き始めている。今も咲く椿には今日もヒヨドリたちがやって来ていた。 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」、通称「マイナンバー法案」が5月9日の衆議院本会議で修正案とともに可決された。国民背番号制度などとも称される法案だ。この法案は2011年1月31日前政権党の「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」決定に基づき推進されて来た。法案が成立すれば、2016年1月から実施される。国民一人一人に12桁の番号が割り振られ、所得や納税、年金などの個人情報を、国や地方自治体が管理することになる。政府は脱税などを防止し、公平さを確立出来るとする。コンピュータをネットワーク化して情報管理するため、セキュリティ上の問題が発生する。そのため、「情報提供ネットワークシステム」が中核となり、日本年金機構、国税庁、地方自治体に対して、「符号」と呼ばれるキーが発行され、対応する「利用番号」で「紐付き」の状態で情報が交わされる仕組みになっている。「情報提供ネットワークシステム」自体には個別情報は集積されない。言わば仲介役である。このシステムを導入するにあたり、初期費用は2700億円とされ、年間維持費は300億円とされる。セキュリティ上の問題を回避しようとするために、システムを複雑にしている。その上、各団体毎にこれまで管理して来たシステムの「文字コード」が異なり、この違いが、個人名の表記の統一を難しくしている。何よりもこれだけの費用と労力をかけても政府が言うほど自営業者の脱税などを防ぐことが出来ない。銀行口座がリンクされている訳ではない。そして、最も危惧されているのが、ハッカーによる情報の漏出だ。今月13日河村たかし名古屋市長が批判したように、一度決められた番号は一生変えることがないと言う、「時代錯誤」がさらにハッカーの侵入を容易にさせる可能性がある。16日には「行政が個人データを収集・利用する範囲が無制限に拡大できる余地を残している」などとして、日本ペンクラブが反対の声明を出している。2017年からは個人が利用する「マイ・ポータル」制度も開始される。これにより、個人がパソコンで税や保険料の納付状況を確認でき、一部の年金手続きなどがネットで可能になる、と言う。しかし、パソコンが利用出来ない高齢者に発行されたマイナンバーカードが悪用される危険性もはらんでいる。よく言われる、国民の監視手段として使われる可能性も否定出来ない。2003年に導入された住民基本台帳と住基カードは400億円のシステム構築費と年間維持費150億円をかけてカードはわずか5%しか普及していない。要するに国民に利用されていない。1936年から「社会保障番号」を利用している米国ではコンピュータ管理になってから他人の番号を不正利用する「なりすまし犯罪」が発生し、年間5兆円もの被害が出るようになったため、利用範囲を制限しようとしている。英国では国民IDカードを導入して、わずか2年で制度そのものを廃止している。韓国は「住民登録番号」により、個人情報がインターネット上に流出し、金銭的な被害も多発し、昨年8月ネット上での登録番号の収集を禁じる法律が施行されている。東京新聞論説委員の桐山桂一氏はマイナンバーの実現自体が巨大な公共事業であり、「IT箱モノ」そのもだと言われている。国民にとって益よりも損失の方が大きい可能性が強い。
裏山の旧道沿いの山藤

裏山の椿の大樹を覆う花の開き始めた山藤

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2 コメント

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Unknown (M)
2013-05-22 05:49:22
ご指摘のように、米国の個人IDは、盗用が本当に簡単で、被害にあった人は多数います。インターネット、郵便、履歴書、税金書類その他、盗もうと思えばいくらでも方法はあります。そのために、自分の個人情報管理が非常に重要ですが、信頼できる管理サービスは有料だったりします。特にひとり暮らしの高齢者の方たちにとっては難しい問題です。日本の場合、高齢者で多額の貯蓄を持っている方が多いので、家族や法による保護が必要ですね。
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貴重なコメントありがとうございます (管理人)
2013-05-22 10:19:19
インターネットのようなネットワークは現代では日常生活にとって不可欠のものになりましたが、セキュリティーの面ではまだまだ問題があり、マイナンバーのような個人の重要な情報は閉じた系の中で管理するしかない状態です。そして、閉じた系であれば、マイナンバーの有用性は損なわれるため、結局、進められているマイナンバー制は矛盾を未解決のままだと言えます。今後高齢者が増加すれば、被害は増大して行く形になるでしょう。しかし、海外からネットに接続された侵入だと摘発も難しいものになると思います。コメントありがとうございました。
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