釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

日本の司法行政の後進性

2015-09-08 19:12:28 | 社会
昨日、女性を監禁した上で集団で性的暴行を加えたとして、大阪府警の警察官と元警察官が逮捕された。警察官の性犯罪は日本では後を絶たない。大阪府警の不祥事もいつまでも続く。警察官の犯罪は処罰が軽く、仮に退職しても交通安全協会、共済等外郭団体や警察と取引のある一般企業、警備会社などに再就職を斡旋してもらえる。2012年、奈良県警生活安全部の58歳の警視が電車内で痴漢行為をしたとして、書類送検されたが、奈良地検は「事実は認められるが、被害者の心情に配慮して起訴を猶予した」として警視は不起訴処分となった。同じ年に海水浴場で少女に酒を飲ませて泥酔させ、性的暴行をしたとして逮捕された大阪府布施署の元巡査長も地検は「少女の酔いの程度がはっきりしない」などとして不起訴にしている。これらは一例だが、こうした不祥事は毎年起きており、いずれも警察や検察だけでなく、メディアも追求することがない。ことに日本では代用監獄に容疑者を拘禁し、外部との連絡が許されず、長時間の取り調べが女性容疑者へのセクハラや性的暴力を誘発し、被害を受けた女性も抵抗出来ない状況が作り出されている。2005年6月に警視庁留置管理課菊屋橋分室内の取調室で担当した警部補が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された女性に性的関係を強要して逮捕されている。女性は「逆らえなかった」と述べている。取調室での性的犯罪は表に出にくく、この犯罪などは氷山の一角に過ぎない。こうした事件の背景には日本の遅れた司法制度と司法行政の人権意識の欠如がある。2013年5月、国連拷問禁止委員会は日本の代用監獄制度を批判し、捜査と拘禁の機能の分離を実質的に確保するための立法その他の措置をとること、警察留置場拘禁期間に上限を設けること、全被疑者に取調べの全期間を通じた弁護人との秘密のアクセス、逮捕時点からの法律扶助、事件に関する全記録へのアクセス、独立した医療を受ける等の権利の保障を勧告し、代用監獄制度廃止の検討を求めた。取調べと自白については、日本の刑事司法制度が実務上、自白に強く依存していること等に深刻な懸念を表明し、取調べ時間の制限及び違反に対する制裁規定を設けること、自白中心主義の実務をやめること、取調べの全過程の電子的記録と同記録の法廷での利用等を求めた。この中でアフリカのモーリシャス最高裁判事であるドマーDomah委員が、「自白に頼りすぎではないか。これは中世のものだ。中世の名残りだ。こういった制度から離れていくべきである。日本の刑事手続を国際水準に合わせる必要がある。」と発言した。それに対して感情的になっていた日本政府を代表して挨拶した上田秀明人権人道大使は「日本は、この(刑事司法の)分野では、最も先進的な国の一つだ」と述べたため、他の委員たちが苦笑し、同大使はこともあろうに「Don't Laugh!(笑うな!)」「「Why you are laughing?  Shut up! Shut up!(なぜ笑うんだ、黙れ!黙れ!)」と怒鳴りつけている。現在もこの場面はYouTubeに掲載されている。上田人権人道大使は外務省官僚で第一次安倍内閣で任命されたが、この発言後退職し、現在は京都産業大学客員教授となっている。日本は明治維新で強固な官僚制度を築き、将軍から天皇にトップを変えただけで、上意下達のシステムは変わらず、敗戦まで継続された。敗戦後、米国が民主主義を日本に導入しようとはしたが、東西冷戦の勃発もあって、再び戦前の官僚たちや官僚システムが採用された。特に戦前から強権的であった司法行政には基本的な姿勢が温存されたまま現在に至っている。警察、検察、裁判所は一体であり、そこには人権意識はシステムとして欠如している。そしていずれも自浄能力を持たない。こうした司法行政に今またさらに秘密保護法や盗聴の拡大が許された。国連が勧告を出しても安倍首相は「従う義務はない」とする。しかし、その国連の安保理の理事国にはなりたいのだ。日本には欧米のような民主主義や人権はまだまだ根付いてはいない。むしろ国としては次第に逆行している。始末が悪いのはそれが経済力の低下を伴っていることだろう。経済的中間層の減少が一層進み、そのことが民主主義や人権意識のさらなる後退に拍車をかけるだろう。
韮(にら)

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