釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

レポ金利高騰は、やはり「異変」だ

2019-09-30 19:10:23 | 経済
今日も昨日同様によく晴れて、風は涼しいが日射しがまだ強い。一昨夜は、空がよく晴れ渡って、満天の星を見ることが出来た。都会とは異なり、釜石は夜には市街地の明かりも少ないため、空が晴れていれば、星空がとても綺麗に見られる。夜風もこの時期はとても気持ちがいい。夕方のウォーキング時には、今なお、たくさんの赤トンボが飛ぶのを見る事が出来る。身体を動かし、汗をかいても、川の流れと涼しい風が、暑さを忘れさせてくれる。日が暮れるのが早くなった。 先週の米国レポ市場での金利高騰は、やはり「異変」の兆しだと思われる。レポ市場は、主に銀行間で、債券を担保に1日だけ現金の貸し借りを行う市場で、時には保険会社も利用する。米国では1日に1兆ドルが取引されている。先週まではそこでの金利は2%程度であった。それが突然わずかな時間ではあったが、10%にまで急騰した。中央銀行FRBが連日介入し、現金を供給することで、金利は何と落ち着いたが、FRBはこのレポ市場への介入を10月10日まで続けると宣言している。2008年のリーマン・ショック後では初めてのことである。先日も書いたが、この金利高騰の原因は、メディアでは米国政府の新規国債発行があったためと、企業の税金支払いが重なったためであるとされた。いずれもがマネーを必要とすることではあるが、それらは事前に分かっていたことであり、レポ市場で突然、マネーが枯渇することは、やはり異常である。一部では、このマネーの枯渇原因にドイツ銀行が関係していたのではないかと、疑われている。少なくとも50兆ドルとされるデリバティブ(金融派生商品)を保有するドイツ銀行の経営不振は、やはり経営状態のよくないコメルツ銀行との合併で、切り抜けようとしたが、合併は失敗し、いずれの銀行も株価は95%も下落している。そのドイツ銀行が資金のやりくりのため、米国のレポ市場で調達しようとしたのではないか。レポ市場で金利が上がることは、借り手に対して、高い金利でしか貸す銀行がなかったことを意味する。今回の金利高騰が、メディアで言うように、新規国債発行や企業の法人税の支払いだけであれば、FRBは何も10月10日まで、介入を続ける必要はない。ドイツ銀行の破綻は時間の問題とされているが、高リスクの50兆ドルものデリバティブは、あまりにも巨額過ぎて、ドイツ銀行だけの問題では済まされなくなる。欧州は無論、米国や日本の金融機関をも巻き込んでしまう。先のリーマン・ショックでは、米国の金融資産の損失は400兆円と言われる。ドイツ銀行のデリバティブは5000兆円を超える。仮にこの半分でもが価値を失えば、いかに巨額の損失となるかが分かる。銀行の破綻は、必ず連鎖的な破綻をもたらす。現在の金融システムは、金融機関が互いにつながっているためだ。しかも、米国は、政府、企業、家計の全てが大きな債務を抱えている。世界の総債務も250兆ドルに迫る。世界に蔓延する巨額の債務には、超低金利の維持が必須である。金利が上がるような事態は、何としても抑え込まなければならない。これまで中央銀行は、金利コントロールに自信を持っていた。しかし、先週の事態は、それを揺るがせた。何れにしても、レポ市場での金利高騰は、リーマン・ショック直前と類似しており、すでに過去の景気後退で見られた長短金利の逆転も見られ、モルガン・スタンレーなどは、米国10年国債の利回りが現在、1年前と比べて、50%低くなっており、こうした現象は、過去50年で、2008年の世界的な金融危機と2011-12年の欧州ソブリン危機の間の2回しか発生しておらず、「異変」の兆しとして警戒を強めている。主要国の長い超低金利は、すでに金融機関を疲弊させており、次の2008年を超える金融危機では、多くの金融機関が破綻する。先進国でも銀行閉鎖や取り付け騒ぎは避けられないだろう。しかも、政府や中央銀行も、手元の対処手段は、2008年後にかなり使い果たしており、金融危機が到来すれば、再び、これまで以上に、政府債務を一挙に積み上げ、大量の通貨発行に迫られる。もはや、それでは事態を収拾することは出来ないだろう。これまで中央銀行が行なって来た金融緩和、通貨の大量発行は、その通貨が実体経済に流れ込んでおれば、まさにハイパーインフレになっていただろう。幸か不幸か、大量の通貨は、金融経済に債務の増大と言う形で流れた。しかし、それは資産バブルを生み出した。すなわち、資産のハイパーインフレだと言える。長期にわたる超低金利は、表面的には経済を安定させているように見えても、金融機関を弱体化させ、危険な資産バブルを生み出して来た。しかも、その資産バブルは、金融危機のたびに大きくなっている。何故なら、中央銀行が、金融危機のたびに、さらに発行通貨量を増やして来たからだ。もはや、次の危機では、金融システムそのものが機能不全となり、実体経済も大きく削がれることになる。
金木犀