釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「ひどく異常な政策」

2019-09-14 19:18:59 | 経済
一昨日、ECB(欧州中央銀行)は金融政策決定会合を開き、既にマイナス0.4%となっていた金利をさらにマイナス0.5%に下げ、月額200億ユーロで、無期限に量的緩和も再開することを決定した。EUを牽引するドイツ経済がマイナス成長となり、ドイツ国債が全ての年限でマイナス利回りとなっていた。来週には日本銀行や米国中央銀行FRBでも政策決定会合が開かれる予定だ。米国の市場では、すでにこの会合での利下げが織り込まれており、仮にFRBが利下げをしなかった場合は、株式の下落が起きるだろう。また、FRBが利下げをした場合は、日本銀行も利下げをせざるを得なくなる。放置すれば、円高になるからだ。しかし、日本でのこれ以上の金利引き下げは、経営が圧迫されて来ている金融機関をさらに苦しめることになる。昨日のブルームバーグBloomberg日本版では、「窮余の策迫られるか、銀行が口座手数料の導入検討も-追加緩和なら」と題して、日本銀行がさらに金利を下げるようであれば、少しでも利益を確保するために、預金者に対して、預金口座維持手数料を課すことも検討し始めるとの見方が出てきていることを伝えている。また、米国大統領が中間層への「非常に大幅な減税」を計画していることも伝えている。すでに巨額となっている米国の財政赤字がさらに大きく膨らむ。それを承知で実行しようとしている大統領にとっては、FRBの金利引き下げは何としても実行してもらはなければならないことだ。今年5月7日、米国の債券投資家で「Bond King債券王」と言われるジェフリー・ガンドラックJeffrey Gundlach氏は、米国メディアCNBCのインタビューで、「People are starting to realize that the deficit and debt are totally out of control.(みんな政府赤字や債務が完全に制御不能になっていることに気付き始めている)」と語り、2018年には、米国政府債務対GDP比率は6%増加したのに対して、名目GDPは5.1%増で、債務増大比率より成長の方が低いことを指摘し、政府債務の増大がなければ、経済成長はマイナスであったと述べ、それは過去5年間同じであると言う。政府債務だけでなく、社債もリーマン・ショック前の2006年より悪い状態で、景気後退が来ればジャンク級に格下げされ社債が増えると予想している。「ECBや日本銀行のような本当にひどく異常な政策以外、経済は政府が救済に出るような状態にはない」と結んでいる。ECBや日本銀行は政府国債を買って、国債金利(利回り)を抑えており、米国も同じようにする以外は金利上昇の圧力を抑えることが出来ないだろうと言う。EUBの金利引き下げを受けて、EUの株式市場は上昇した。米国も同様だ。中央銀行が金利を引き下げるのは、経済状態が悪くなっているためであり、実体経済が悪化しているにも関わらず、株式市場は上昇すると言う、摩訶不思議な世界になっている。要は株式市場は、低い金利の債務で、株式を購入出来るからである。実体経済も金融経済も全てが債務で支えられている異常な世界が現出しており、それ故にマイナス金利と言う、また異常な金利でなければならないほどに、本当は現在の世界の経済は、過去よりはるかに良くない状態に落ち込んでいるのだ。この異常をいつまでも持続させることは不可能である。債務の増加を超える成長が達成出来ない世界になってしまったからだ。かっては、債務を凌ぐ成長が繰り返されたために、豊かになった。金利の上昇を超える成長が可能であった。それが出来なくなったために、債務だけが膨れ上がり、その膨れ上がる債務の破綻を防ぐために金利を繰り返し下げざるを得なくなり、とうとうマイナス金利にまでなってしまった。しかし、ガンドラック氏が言うように、どこかで金利は上昇に転じるだろう。その上昇する金利が、ことごとく大きな債務をなぎ倒していくことになる。それは起きるかどうかではなく、いつになるかである。
木槿