釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「債務中毒」の世界経済

2018-01-10 19:16:05 | 経済
米国では年明け後も株価が史上最高値を更新し、日欧も株価を上げている。世界では総債務が223兆ドルを超えていると言われる。世界のGDP総額の3倍以上である。米国のメリーランド大学のカーメン・ラインハートCarmen M. Reinhart教授とハーバード大学のケネス・ロゴフKenneth Saul Rogoff教授らによる、債務と経済成長に関する分析では、政府債務がGDPの90%を超えると、経済成長が鈍化し、成長率が年率で約1%低下するとしている。2008年にリーマン・ショックが起きると、日米欧中の各国中央銀行はそれぞれ4兆ドル以上の金融緩和を行った。欧州はギリシャ、スペインの財政危機やドイツ銀行の75兆ドルとも言われるデリバティブの破綻を避けるため、中国は米国のリーマン・ショック後の急激な需要減少による経済成長の鈍化に対応するため、米国は各25兆ドルを超える負債を抱えた巨大銀行群を救済するために、また、日本は貯蓄率の低下した国民預金では賄い切れなくなった国債購入を肩代わりするために。各中央銀行の救済目的の金融緩和で、所得低迷で消費が増加しない実体経済へはマネーが流れず、株や債券、一部不動産へ流れ、それぞれを高騰させている。米国の株価の時価総額はすでにリーマン・ショック直前を超えてしまった。毎日新聞が発行する週刊エコノミストは昨年11月、「世界金融大緩和で生じた160兆ドル債務の崩壊近し」と題する記事を載せている。このエコノミスト誌の「160兆ドル」は2016年末の数字であり、現在では223兆ドルを超えている。記事の中で、同志社大学大学院の浜矩子教授は現在の世界経済を「債務中毒」と称し、「実物経済とは比べるべくもない規模で債務が膨らんでいる。FRB(米連邦準備制度理事会)の資産縮小に加え、ECB(欧州中央銀行)のテーパリング(量的金融緩和の縮小)も始まる可能性がある18年は危ない」と述べている。そして、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「リーマン・ショック直後は中国が4兆元(約60兆円)の経済対策をしたことで世界経済を救った。だが、リーマン以降、世界の先進国で財政政策や金融緩和が積極的に進められてきたことで、現在は何かをきっかけにショックが起きた時に対応できる国がない」と言う。同誌は、地政的リスクもあり、「何をきっかけに金融ショックが誘発されるか分からない。だが、そのマグマは間違いなく臨界点近くまでたまりつつある。大規模な金融緩和がもたらした「借金バブル」は、いつ世界経済に激震を起こしてもおかしくない。」と結論付けている。株や債券、一部不動産のバブル状況は、金融緩和により中央銀行が作り出した。しかし、そのバブルを支える中央銀行が、米国に始まり、今年から欧州が、そして日本は昨年末から密かに金融引き締め、いわゆるテーパリングを始めており、支えを失ったバブルは何処かで崩れて行くだろう。この時、日本の国債金利が急騰しかねない。株や債券の暴落ともなれば、それらは日本の財政破綻の引き金となり得る。
職場の裏山で咲き始めて来た藪椿