釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

1羽の白鳥

2018-01-06 19:11:31 | 自然
釜石での花が少ない冬の楽しみは北からやって来る渡り鳥たちを見ることだ。中でもやはり白鳥の姿が見られると、毎年のことだが、感動する。昨年末に夜空を鉤型に並んで内陸方向へ飛んで行く白鳥たちのシルエットを見ただけで、日中の甲子川ではその姿を見かけることがなかった。年が明けて、仕事始めの4日の朝、出勤時に1羽だけの白鳥が職場近くの川にいるのを認めた。昼休みに出かけて見ると、まだ、ほぼ同じ位置で寝ていた。昨日の朝もやはり同じところにいたので、昼休みにパンを買って、川に出た。岸辺からパンのカケラを投げてやると、たくさんのカラスが群がって来たが、白鳥は上手くパンをとらえて食べてくれた。しかし、そのうち通りがかったウォーキング中の初老の方から、注意を受けた。「野鳥の餌付けは禁止されているから、やめて」と言われた。一頃鳥インフルエンザが騒がれ、遠野でも野鳥へのエサやりは禁じられたと聞いた。環境省も人為的なエサは、野鳥の生態を乱すため、エサやりはしないよう呼びかけている。それを承知の上で、ただ1羽やって来た白鳥に何がしかのエサをやりたくなった。少しでも長く川にいてもらいたいと思ったからだ。震災前には鵜住居川が野鳥の観察地として知られ、たくさんの野鳥が見られた。その鵜住居川が津波で、すっかり様相が変わり、野鳥が以前のようには来なくなった。その後の鳥インフルエンザの騒ぎで、一層人の野鳥への関心が薄れてしまった。内陸ではずっと以前から、白鳥の飛来地には表示があり、観察用の施設なども簡単だが整備している。市街地を流れる甲子川には通年でたくさんの野鳥が生息している。青い宝石、飛ぶ宝石、川の宝石などと呼ばれるカワセミもいて、また、滅多に見ることのないヤマセミ、オシドリなども来る。川にはアユやヤマメもいて、今のように鮭もやって来る。10年前に初めて釜石へ来て、この自然のあり方にとても感動したが、地元の人には、当たり前過ぎて、釜石の自然の豊かさにほとんど意識がなく、そのため、あえてその豊かさを大事にしようとはしない。自分たちの住む風土を大切にしようとする釜石近隣の遠野や住田町、大槌町などを見ルト、尚、それを強く感じる。亡くなられた高齢の識者の方も同意見であったが、釜石は製鉄の街として、他地域から来た人たちが多いために、どうしても郷土意識が薄いのでは、と考えてしまう。また、製鉄所の城下町であったことが、自分たちで何かをしようとするより、製鉄所に何かをしてもらおうとする姿勢が植え付けられてしまったのではないか、と考えてしまう。震災後の「復興」はまさにその最たるもののように見える。何れにしても、このとても豊かな自然がいつまでもそこにあって欲しいと願うばかりだ。