釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

まだまだ先が見えない原発事故

2011-11-22 19:30:05 | 文化
昨夜も小雪がちらつく寒い夜だった。今朝周辺の山々を見ると700~800mくらいの連なった山にも雪が積もっていた。市街地では木々の葉がだいぶ落ちて来た。低い山の色付いた葉はまだ残っているので日中晴れて来ると青空の広がりの中でほんとうに美しいと感じさせてくれる。東北の自然はすばらしい。まだ若い娘まで最近はこの東北の自然の美しさに感動するようになった。特に娘は雲の美しさをこの東北で知ったようだ。この自然の美しさはすべて光のおかげでもある。光の角度で雲も真っ白く見えたり、黒っぽく見えたりする。山々の色彩もその光の角度で微妙に変わって来る。この時期は太陽も比較的低く傾いているので斜めから刺し込む日射しが明暗を創り出して、なお、美しさを表現してくれる。釜石は海にも恵まれ、リアス式海岸の続く三陸は魚介類の宝庫であり、海水も驚くほど澄んでいる。日本でも他所では見られない独特の景観を見せてくれる。しかし、今回の原発事故でこの海も汚染されてしまった。今月16日気象庁気象研究所は東京電力福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質は太平洋を横断して約10日でほぼ地球を1周し、その結果、半分以上が海洋に落下したとするシミュレーション結果を発表した。放射性物質のうち、セシウムは4月までに70~80%が海に落ち、陸地に降ったセシウムは3割程度だという。ヨウ素131は放出量の約65%が海に落ちたとされる。偏西風や低気圧の渦に乗り、上空に昇って拡散し、太平洋を主に北回りに広がり、ロシア極東部やアラスカ近辺を通過して3月17日ごろに米国西海岸付近に到達。同月24日ごろには、ほぼ地球を1周したとみられるという。また今月20日海洋研究開発機構は放射性セシウムが福島第一原発事故から約1カ月後に、2千キロ離れた深海5千メートル地点まで到達していたと発表している。海洋中の放射性物質は、海流のほか、様々なルートで移動、拡散している実態が裏付けられた、とされる。海の汚染は事故直後に東京電力が冷却水をそのまま海洋投棄したことでも増大させられた。このことは国内ではほとんどのメディアが取り上げなかったが、海外、特に、太平洋沿岸諸国からは強く非難されていた。19日には社会技術システム安全研究所の田辺文也所長の解析で東京電力福島第1原発2号機は地震の揺れで早期に損傷したか、劣化した可能性が高いという結果が得られたことが報じられた。3号機でも昨日これまでで最高の1600mSvという放射能汚染が認められたことが報じられた。1~3号機の炉内にはメルトダウン、メルトスルーした燃料体があり、4号機の燃料プールには、いまだに1331体の燃料体が保管され、余震などによるメルトダウンの危機に晒されている。海洋汚染は長期に渉る食物連鎖による放射性物質の濃縮をもたらし、魚介類の汚染が今後本格化してくるだろう。政府や東京電力が発表しているほど冷温停止は容易ではない。コンクリートの土台を貫いて、土中に埋まってしまった可能性がある燃料体をどう回収するのか、世界でも未だ未踏の領域だ。そんな位置に燃料体があれば、原子炉の温度をいくら測定しても高い温度が観測されないのは当たり前である。それをもって、冷温安定などと考えることは安易過ぎるだろう。陸の除染にしても今月15日に東京大学の児玉龍彦教授は日本原子力研究開発機構が公募している除染モデル事業について「原子力発電を推進してきた機構と原発施工業者で独占する除染では、国民の信頼を得られない」と批判されている。何より、委託された組織はいずれもこれまで除染のノウハウを持って来なかった本来の素人集団であることが問題だ。セシウムは他の物質と反応しやすく、瓦や植物、コンクリート、粘土質の土壌などに吸着し、除染してもわずかしか減らないことが各地で報告されている。東京都の清掃工場での焼却灰などからも10月には多くの放射性セシウムが検出されている。毎日新聞も「たまる一方、セシウム汚染焼却灰 流山市」と題して汚染処理の困難さを報じている。最近NHKや政府も低線量被曝についてやっと模索を始めたが、それらはすべて外部被曝の問題に留まっており、チェルノブイリでも示された最も重要な内部被曝についてはいまだに看過され続けている。呼吸や飲食によって体内に取り込まれる放射性物質は微量であっても継続的に取り込まれることで想像以上に体内の各臓器で蓄積されていることが元ゴメリ医科大学長、バンダジェフスキー博士によって『人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響ーチェルノブイリの教訓 セシウム137による内臓の病変と対策 ー』というレポートで報告されている。特に亡くなった小児の解剖結果から、小児では各臓器でのセシウム137の蓄積率が大人以上に高いことが明らかにされている。外部被曝も地域によっては極めて重要な問題だが、内部被曝は全国的に最も重要視されなければならないだろう。被害の大きい子供や妊婦のために。
甲子柿 小粒の渋柿で、釜石ではいたるところで見かける柿だ

四国でもかってはこうした渋柿を軒下に吊るして渋を抜く風景がよく見られた