瀬尾まいこさんの『天国はまだ遠く』のお話をしたいと思います
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まずは、あらすじをご紹介
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主人公は仕事も人間関係もうまくいかず、心も体も疲れきった23歳の山田千鶴。
彼女は会社を辞めて知らない場所に行って、自殺しようと決意します。
そしてたどり着いた山奥の民宿“たむら”で睡眠薬を飲むのですが…
深い深い眠りの後、爽快にすっきりと千鶴は目を覚まします。
自殺を諦めた彼女は、しばらく民宿に滞在することにしました。
民宿の田村さんの大雑把な優しさに、千鶴は癒されていきます。
そして大らかな村人たちとの交流、自然に包まれた場所、充足した日々の中で、自分を取り戻していくのです。
けれど、ここは自分の居場所ではないこと、するべきことがここにはないことに、気づいてしまいました。
悲しいけれど、寂しいけれど、「自分が戻るべき場所に戻らなくてはいけない」と感じた千鶴の、旅立ちの物語です。
私が本屋さんでこの本を手に取ったのは、帯がきっかけでした
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帯には「不器用にしか生きられないあなたに贈る清爽な旅立ちの物語。」と書いてあります。
千鶴にすごく共感して、私も田村さんの無骨な優しさに救われたような気持ちになりました
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物事や自分自身に対して「こうでなくてはいけない」「こうしなくちゃいけない」という思いに捕らわれていた千鶴にとって、
大らかな田村さんの言動には、最初は驚かされっぱなしでした。
でも、すごく気持ちを楽にしてもらったのではないかと思います。
民宿たむらで過ごすうちに、千鶴は確実に変わっていきました
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変わっていったというよりも、それがおそらく千鶴の本来の姿だったのでしょう
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いきいきしていて、楽しそうで…うらやましいくらいです
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そんな風に自分に活力をくれた場所、そばにいて安らげる人が居る場所、とても居心地がいいですよね
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その場所から帰りたくないけれど戻らなくてはいけないと、決断した千鶴の勇気に拍手
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戻る日に、田村さんは有機栽培した野菜を千鶴にたくさん持たせてくれます。
その袋の中には、民宿たむらの住所と電話番号が書いてあるマッチが入っていました。
当分の間そのマッチをお守りにして頑張り、そしてマッチを頼りにして再びここを訪れる日がいつか来ると、千鶴は考えています
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マッチをくれた田村さんはきっと千鶴を笑顔で迎えてくれるし、マッチを握り締めた千鶴もきっと笑顔がこぼれるのでしょう
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ふたりの再会がいつになるのか分からないけれど、その時もその後も、千鶴と田村さんの毎日が満ち足りたものであるようにと願わずにはいられません
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天国はまだ遠く、誰もがそれまでの日々を悩みながら苦しみながらも必死で生きている。
その中でかけがえのない出会いがあったり、大切な思い出ができたり…
それを糧にまた、自分の世界で生きていく。
何気ないことだけれど、とても大切なことだと思います、すごいことだと思います
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それを教えてくれる、優しく清々しい一冊です
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