ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

「ある男」

2023-02-11 | 映画のお話
日本アカデミー賞最多12部門で優秀賞受賞


「愛したはずの夫は、まったくの別人だった・・・」

離婚し、息子を連れて故郷で暮らす里枝を演じる安藤サクラを
こんなに儚くてかわいげな人だったかしらと思い
窪田正孝の別の一面を見たような、イメージが覆された作品だった。

柄本明がすごい
刑務所の面会シーンで 
こんな時出てきそうだなと思ったら 本当に出てきた・・・
戸籍ブローカー小見浦の役がらだ
そうして「朝鮮人」という言葉を久しぶりに聞いた

ほんとうに 
自ら命を絶つより
こうやって戸籍を入れ替えて
過去も名前も捨てて生きる方がいいのだろうかと思う。

過去とは何なのだろう
そんなに消さなければいけないものなのだろうか
それは普通の過去を持つ普通の人間のたわごとなのかもしれないが・・・

せっかく過去を変えたのに、
結婚して、子供を作り、勝手に死んでゆくなんて
何なの、いったい という 怒りの気持ちしか湧いてこない
それは女のサガなのだろうか・・・

息子が幾度も変わる自分の名字に「僕は一体何なの」というセリフに
(あなたがじゃなく、妹はどうなるのよ)と突っ込みたくなった。
4歳の娘こそ いったい誰の子なのだろうという思いが募る

父が殺人犯の子なら 殺人犯の孫なのだろうから
本当は何の関係もないけれど、
子供たちの戸籍はどうなるのだろう
心配と差別は違うと思っても、
やはりこんな風に考えるのは差別なのかもしれないけれど
でもやっぱり不安だ

日本に帰化した在日3世
人種差別、殺人犯の息子
そして
親ガチャ
子供は親を選べない

ある男たちは
谷口大祐も
曽根崎義彦も
殺人犯を父に持つ小林誠=原誠も
そして人権派の城戸弁護士もなのだろう

小見浦の
「貴方は在日っぽくないですね
それはつまり在日っぽいということです」のことばが痛烈だ。

義父の差別的発言や大祐の兄の言葉、ヘイトスピーチデモ
冷静でいられなくなる姿が案じられた。


ルネ・マグリットの絵画『複製禁止』(不許複製1937年)が
最初と最後に出てくる

男性が鏡の前に立っているのだが、鏡の中の男性も後ろ向きだ。
でもボード上の本はちゃんと鏡に映っている

不可思議な作品で知られるマグリットは
幼いころに母を自殺で亡くしたらしいが
調べてみると14歳だ、自死する前の母の様子も含め、多感な時期だったろう

写実と幻覚とが入り混じったようなこの絵が不気味で嫌だった。

ただ
妻の浮気発見のシーンは仕方ないとして
最期のバーのシーンはいらなかったと思う。
彼までが別の人間に成りすまして話すのは
なんだか蛇足みたいでいただけない





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