短歌味体 Ⅲ | 日付 |
短歌味体Ⅲ 1202-1203 固有値シリーズ・続 | 2016年09月17日 |
短歌味体Ⅲ 1204-1205 あっシリーズ | 2016年09月18日 |
短歌味体Ⅲ 1206-1207 おおシリーズ | 2016年09月19日 |
短歌味体Ⅲ 1208-1209 うっシリーズ | 2016年09月20日 |
短歌味体Ⅲ 1210-1211 あっシリーズ・続 | 2016年09月21日 |
短歌味体Ⅲ 1212-1214 うっシリーズ・続 | 2016年09月22日 |
短歌味体Ⅲ 1215-1216 おおリーズ・続 | 2016年09月23日 |
短歌味体Ⅲ 1217-1218 だからあシリーズ | 2016年09月24日 |
短歌味体Ⅲ 1219-1220 人と人シリーズ・続 | 2016年09月24日 |
短歌味体Ⅲ 1221-1222 えっシリーズ | 2016年09月25日 |
短歌味体Ⅲ 1223-1225 列島の西の端から東の端へ・便りシリーズ | 2016年09月26日 |
短歌味体Ⅲ 1226-1228 列島の西の端から東の端へ・便りシリーズ・続 | 2016年09月27日 |
短歌味体Ⅲ 1229-1230 列島の西の端から東の端へ・便りシリーズ・続 | 2016年09月28日 |
短歌味体Ⅲ 1231-1233 そうだねシリーズ | 2016年09月29日 |
短歌味体Ⅲ 1234-1235 沈黙シリーズ | 2016年09月30日 |
短歌味体Ⅲ 1236-1238 沈黙シリーズ・続 | 2016年10月01日 |
短歌味体Ⅲ 1239-1240 沈黙シリーズ・続 | 2016年10月02日 |
短歌味体Ⅲ 1241-1242 沈黙シリーズ・続 | 2016年10月03日 |
短歌味体Ⅲ 1243-1245 沈黙シリーズ・続 | 2016年10月04日 |
短歌味体Ⅲ 1246-1247 世界との出会いシリーズ | 2016年10月05日 |
短歌味体Ⅲ 1248-1249 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月06日 |
短歌味体Ⅲ 1250-1251 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月07日 |
短歌味体Ⅲ 1252-1254 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月08日 |
短歌味体Ⅲ 1255-1257 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月09日 |
短歌味体Ⅲ 1258-1259 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月10日 |
短歌味体Ⅲ 1260-1261 書くときはシリーズ | 2016年10月11日 |
短歌味体Ⅲ 1262-1263 書くときはシリーズ・続 | 2016年10月12日 |
短歌味体Ⅲ 1264-1266 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月13日 |
短歌味体Ⅲ 1267-1268 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月14日 |
短歌味体Ⅲ 1269-1270 書くときはシリーズ・続 | 2016年10月15日 |
短歌味体Ⅲ 1271-1272 世界との出会いシリーズ・続 | 2016年10月16日 |
短歌味体Ⅲ 1273-1275 農事シリーズ・続 | 2016年10月17日 |
短歌味体Ⅲ 1276-1277 ああいいねシリーズ | 2016年10月18日 |
短歌味体Ⅲ 1278-1279 ああいいねシリーズ・続 | 2016年10月19日 |
短歌味体Ⅲ 1280-1281 内と外シリーズ・続 | 2016年10月20日 |
短歌味体Ⅲ 1282-1283 ああいいねシリーズ・続 | 2016年10月21日 |
短歌味体Ⅲ 1284-1285 内と外シリーズ・続 | 2016年10月22日 |
短歌味体Ⅲ 1286-1287 内と外シリーズ・続 | 2016年10月23日 |
短歌味体Ⅲ 1288-1289 接続論シリーズ・続 | 2016年10月24日 |
短歌味体Ⅲ 1290-1292 つづけるシリーズ | 2016年10月25日 |
短歌味体Ⅲ 1293-1295 つづけるシリーズ・続 | 2016年10月26日 |
短歌味体Ⅲ 1296-1297 つづけるシリーズ・続 | 2016年10月27日 |
短歌味体Ⅲ 1298-1300 つづけるシリーズ・続 | 2016年10月28日 |
[短歌味体Ⅲ] 固有値シリーズ・続
1202
ふと気づく いつもの風が
匂い立つ
丘陵地に立っている
1203
はじまりはわからない でも
ごはんは
左に置いて食事をしてる
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ
1204
あっ なぜか急止して
言葉の橋が
がらがらと落下しゆく見える
1205
あっ 飛び石踏んだら
ぐらりと
水の匂うすろうもうしょん
[短歌味体Ⅲ] おおシリーズ
1206
おお できるように
なったんだね
川の水ゆったり流れている
1207
おお こんなにおいしい
ものがある
なんてbeyond description!
[短歌味体Ⅲ] うっシリーズ
1208
口に入り うっ うううう と
ズンズズン
見る間に肌合いをよじる
1209
うっ ううう うーむ
重たく
沈み閉じていく うっううう
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1210
あっ から あーああ の時間
の谷間に
無縁なように主流が流れている
1211
あっ 戻れない時間
悔恨の
深い色合いに染まり流れる
[短歌味体Ⅲ] うっシリーズ・続
1212
うっ 空洞の圧
高まり
丘陵のみどりどんより
1213
つまずく前の 寄せて来る大気
に触れる うっ
一瞬にみどり変色する
1214
うっ どこかのルートを
うーうーうー
サイレン鳴らし走る気配
[短歌味体Ⅲ] おおリーズ・続
1215
おお 感じた時
奥深い
丘陵地緑風にふくらむ
1216
おお おお おお と前に突き進み
押しのけて
殺殺殺殺と過ぎゆく者がいる
[短歌味体Ⅲ] だからあシリーズ
1217
川を下るいつもの流れ
ふいと混じる
濁り具合に自然と声の出る
1218
だからあ と放つ流線
過去の
くり返された場面に畳み込まれる
[短歌味体Ⅲ] 人と人シリーズ・続
1219
場に合っておもい黙す
から一歩
出ようとすれば有り合わせで狼煙を上げる
1220
ひととひと余所行き着てても
「いい天気ですね」
と自然に流れ出せればいいな
[短歌味体Ⅲ] えっシリーズ
1221
通りの角曲がろうと
瞬間
引き戻される引力に えっ
1222
ええ ええ ええ ええ えっ
平坦な
道をゆったり歩く突然の雨
[短歌味体Ⅲ] 列島の西の端から東の端へ・便りシリーズ
1223
柳田の明らかにしたように
同じ雨
でもそれぞれの地差異を奏でる
1224
目に写る一つ列島でも
季節は
スペクトル帯を震わせ移る
1225
狂い咲きの暑い夏も
終わり 秋
つかの間の穏やかさに浸かる
[短歌味体Ⅲ] 列島の西の端から東の端へ・便りシリーズ・続
1226
若い頃はたくさん誤解してた
たまねぎを
ただ刻むばかりに見えていた
1227
内にいても年とらないと
見えてこない
内の内なる風景の流るる
1228
大口や饒舌の峠下り
触れて来る
小さなことが言い様もなく
[短歌味体Ⅲ] 列島の西の端から東の端へ・便りシリーズ・続
1229
顔は知らなくても
言葉の
生み出す流れや屈折があり
1230
盲目の人のように
流れに浸かり
像の手前の〈像〉の匂う
[短歌味体Ⅲ] そうだねシリーズ
1231
絡み合いこんがらがった
糸糸糸
閉ざされた夢に薄明かりの差す
1232
ずんずんと絡まるばかり
の森の中
「そうだね」をなぎ倒し突き進む
1233
ふいとつぶやく「そうだね」
冷氷に
日が差して水ぬるみゆく朝
[短歌味体Ⅲ] 沈黙シリーズ
1234
言葉の駅の手前で
引き返した
夜風は寒く孤星たちはまたたく
1235
何にも言うこともなく
星たちは
昼夜またたく〈・・・・・・・〉
[短歌味体Ⅲ] 沈黙シリーズ・続
1236
沈黙の内にあっても
飛び立たない
言葉たちがにぎやかだ
1237
沈黙は否定肯定越えて
峠下り
そのままそこに溶けいることがある
1238
沈黙が人間界を
超えゆけば
木の葉が深々と落ちている
[短歌味体Ⅲ] 沈黙シリーズ・続
1239
黙々と何かしてる時
からだは
静かの海に到達している
1240
沈黙の純度が上がる
ということは
死の漸近線(ぜんきんせん)に引き寄せらるる
[短歌味体Ⅲ] 沈黙シリーズ・続
1241
人の話を聞いている
二方向に
引かれ二重化している沈黙
1242
身を退いてひとり静かに
凪いでいる
水面に映る色付く木の葉
[短歌味体Ⅲ] 沈黙シリーズ・続
1243
ぽつぽつ滴とともに
沈黙の
時間遙かに下っていく
1244
言葉は溶けて消失し
にぎやかな
魚語のこだまする海中にいる
1245
言葉がありありと見える
金縛り
ただ魚のように肌震わす
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ
1246
気づいたら渦中にいて
この世界
上流下流あり流れている
1247
おそらくは気づくこともなく
ふうっと
この世界から消えていくのだろう
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1248
ひと滴落ちてしまった
波紋 それだけで
広がり滲みて世界の色深まる
1249
不在でもぽっかり空いた
空席に
その人の匂いつなぎ止められている
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1250
何気なくころがしたボール
追いすがるも
離破離破鈍曇(リハリハドンドン)ころがりゆく
1251
すれちがうつもりなくても
すれちがい
平行線の撓(たわ)み反れゆく
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1252
しっかりと用意周到に
綱張り
巡らせても世界は複雑系か
1253
リュックしょい準備万端に
歩み出す
特異点に落ち込んだ朝の
1254
いちにいさんと数えていく
数は合っても
不在の人がいる匂いする
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1255
今が全てに見えるけど
誕生日
もありつながる葬式にも出る
1256
「おはよう」に「おはよう」と返す
何気ない
朝に静かに世界は下りている
1257
〈おはよう〉と無言の内に
つぶやくは
誰ともなく世界へのあいさつ
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1258
行動や言葉だけが
波風を
立てるわけじゃ ない
1259
静かに黙っていても
空間は
ゆがみ伝わる重力場
[短歌味体Ⅲ] 書くときはシリーズ
1260
書く時は無心になって
砂場する
子どもの手の 探査もしている
1261
書く時はひとりのたましいの
在所を
思い浮かべて信号している 時がある
[短歌味体Ⅲ] 書くときはシリーズ・続
1262
これがね、今発掘した
ばかりの小石
積み上げてみなよと自分に言う
1263
さてと言葉に向かう時
馴染みない
いろんな人も立ち現れる
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1264
見た一瞬の〈あっ〉や〈(あ)〉には
ひとりひとり
の年輪が放つ光の川流る
1265
人ならば見られても
見られてなくても
どこかで余所行きになっている
1266
岬近く無心のからだは
闇を背に
光る小川に浸(つ)かっている
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1267
赤ちゃんの〈あうあう あう〉
もうみんな
忘れてしまったけど 流れる深層水
1268
明示する言葉がなくても
居るだけで
言葉のような 場所がある
[短歌味体Ⅲ] 書くときはシリーズ・続
1269
イメージの破片、破片の
懸垂し
言葉の流れに浮上する
1270
イメージ群ぽっと点(とも)る時
あったかい
流線描いて言葉の舟へ
[短歌味体Ⅲ] 世界との出会いシリーズ・続
1271
言葉かけられ「かまいませんよ」
と返す時
水濁り出し泡立つことがある
1272
「かまいません」と返す時
海は凪ぎ
玄関から部屋に静かに戻る
[短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続
1273
農に出て土に鍬(くわ)打ち
打ち打ちて
帰り着き心地よい疲労の
1274
疲労の曲線は
定常値
以下に心もからだも沈む
1275
生活のドーム内に浸かり
心からだ
溶けて別世界へ羽ばたかない
[短歌味体Ⅲ] ああいいねシリーズ
1276
アリさんがぶつかっちゃったね
(ああいいね)
やさしい風も吹いてるね
1277
そうやってそこの峠を
越えて来た
んだね 冷たい風に煽られながら
[短歌味体Ⅲ] ああいいねシリーズ・続
1278
ああいいね そんな風に
できるんだ
折り紙の鳥の今飛び立つ
1279
七曲がりキリキリねじれ
澱むばかり
の空気にふいと風穴の開く
[短歌味体Ⅲ] 内と外シリーズ・続
1280
(しょうがない)と思っていても
懸垂し
大きな声で「悪だ」と叫ぶことがある
1281
内から外へ同じ線路
でも幅も
景色も違い軋(きし)みを上げる
[短歌味体Ⅲ] ああいいねシリーズ・続
1282
このシャツ着心地がいい
なんか
うまくいくような 肌合いの予感
1283
あっ 葉っぱに 水玉が
ころころん
水しぶき上がる イメージ走行
[短歌味体Ⅲ] 内と外シリーズ・続
1284
√(るーと)の内外同じ
演算でも
内外間の直通はない
1285
個のルートと多のルート
メビウスの輪
ねじりよじり夢うつつに抜ける
[短歌味体Ⅲ] 内と外シリーズ・続
1286
さくら散る 鎧(よろい)の内を
はらはらと
落ちてゆき身は湿りゆく
1287
静かに佇んでいても
ずんずんと
重り重なりつま先立つ
[短歌味体Ⅲ] 接続論シリーズ・続
1288
くねくねくね山道上り
心待ちに
ぱっと開けた湾に日の差す
1289
(うっうっう)言ってやろうー
言ってやるー
お父さんに言ってやろうー
[短歌味体Ⅲ] つづけるシリーズ
1290
よーいドンみたいに始まり
曲がりくねる
道々を日々周回する
1291
同じ景色に見えても
少しだけ
日々新たな匂い立ち上る
1292
走行する内側では
ふだん着の
季節に合わせ衣更えもする
[短歌味体Ⅲ] つづけるシリーズ・続
1293
つづけるは意志力が要る
日々を経て
くり返す中に溶けていく
1294
つづけるは意志力だけ
ではなく
人の奥処(おくが)から立ちのぼるもの
1295
つづけるは年経(ふ)る二人
ドキドキは
形を変えて自然走行す
[短歌味体Ⅲ] つづけるシリーズ・続
1296
ドラマでもつづけるうちに
次第に
作る観る共になじんでゆき
1297
つづけるは人との出会い
のように
いくつもの起伏の物語があり
[短歌味体Ⅲ] つづけるシリーズ・続
1298
走り出すERの
次第に
造型してしまう幻の物質感
註.ER: Emergency Room ,救急救命室 ,十数年続いたアメリカのテレビドラマ。
1299
目まぐるしいERの日々
人々に
時折舞い降りてくる静けさの物語
1300
いずれの地も人と人の
関わり合い
流れ出し合うものは普遍に見える