大川原有重 春夏秋冬

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チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた

2014-05-23 23:42:31 | 原子力関係

【広瀬隆さんより】美味しんぼ騒動についてDAYS JAPANから知性的な反論
カテゴリ:広瀬隆放射能汚染(健康)
2014年5月13日 株式会社デイズジャパン

「チェルノブイ リ子ども基金」前代表広河隆一



チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた

2万5564人のアンケート調査で判明



 『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に掲載中の漫画「美味しんぼ」の「福島の真実」篇に多方面 からの抗議が寄せられているという。問題になったのは次の2点である。


 ・原発を訪れた主人公が鼻血を出すシーン

 ・そして疲労感を訴えるシーン


特に鼻血が「ありえない」 「不安をあおる」といった抗議を受けた。


疲労感については、福島原発 事故の後に私自身が経験している。2011年3月13日朝から原発周辺での取材を繰り返した後、持っていた測定器が振り切れるという経験をし て、その後4月に突然非常な疲労感と下痢が襲ってきた。被曝と疲労感が関係あるのかど うか、あとで数字を見てもらう。


鼻血はどうか。私自身は鼻の 粘膜の異常を感じることはよくあった。しかしはっきり流れるほどの鼻血は経験していない。


私は2012年7月 に沖縄県久米島で福島の子どもたちの保養施設「沖縄・球美の里」を設立し、運営している。ここにこれまで訪れた保護者たちから、鼻血の話題は よく聞いた。 福島でも聞いている。だから誰でも知っていることかと思っていた。だがこれほど大騒ぎになって、「ありえない」とか「事実無根」とか聞くと、 そんなに完全 に打ち消そうとするということは、どのような意図が働いているせいかと疑ってしまう。これほど大きく問題にすると、かえって「住民の不安をあ おる」ことに なってしまうではないかと思う。鼻血は出ると訴えている人がいることを認めた上で、それが大きな病気に結びつくのを防ぐためにはどうすればい いのかを話す 方が建設的ではないかと思う。


私は1986年のチェルノブ イリ原発事故以降、50回 を超えて現地での取材と救援活動を続けている。そしてこの3月、映画取材班とともに、チェルノブイリを5年ぶりに取材した。ウクライナの高濃 度汚染地域で あるナロジチ地区のナロヂチ市中央病院の副院長に、日本では福島原発事故の後、鼻血がでた子どもが増えたという声を聞くが、チェルノブイリで はどうだった のか、と聞いた。すると副院長は「チェルノブイリでも事故の後、鼻血が増えた」と答えた。被曝によって血液系統の病気が増えた。鼻血もそうだ が、貧血も増 えたということだった。白血病の前段階の症状も増えたという。


1990年、 IAEAはチェルノブイリの調査団を派遣し、翌年、健康被害の不安を打ち消す報告書を発表している。その報告に疑問を持った私たちは、広河事 務所とチェル ノブイリ子ども基金(当時は私が代表だった)共同で、現地NGOの協力を得て、1993年8月から1996年4月まで、避難民の追跡調査を 行ったのだ。

調 査項目は数百にのぼり、アンケート形式で本人あるいは家族に書いてもらった。回収できたアンケートは2万5564人分である。チェルノブイリ 避難民のこれ ほど大掛かりなアンケート調査は、ほかにはないと思われる。私たちにそれができたのは、これが救援目的におこなった調査だからである。人々の 健康状況を把 握できなければ、どのような救援を行っていいのかわからないからだ。


アンケート調査は困難だった が、私たちにはIAEAにはない強みがあった。それはそれまでの救援活動の実績と現地 の人々との信頼関係、チェルノブイリ支援の現地NGOとのつながり、である。ほかならぬ被災者に会うことが、私たちの仕事だったということも ある。


この報告書は日露版の冊子の 形で発行され、この3・11後にその一部を『暴走する原発』(小学館)に収録した。

 その結果から、鼻血と疲労に関する数字を中心に見ていきたい。ただ人々を襲ったのはもっと多様な症 状だったので、それらも記載しておきたい。




●プリピャチ市(原発から約3キロ)の避難民アンケート回答者9501人 


 「事故後1週間に体に感じた変化」という質問に、人々は次のように答えた。

頭痛がした 5,754人 60.6%

吐き気を覚えた 4,165人 43.8%

のどが痛んだ 3,871人 40.7%

肌が焼けたように痛んだ 591人 6.2%

鼻血が出た 1,838人 19.3%

気を失った 880人 9.3%

異常な疲労感を覚えた 5,346人 56.3%

酔っぱらったような状態に なった 1,826人 19.2%

その他 1,566人 16.5%


  

「その人々の事故から約10 年後の健康状態」

健康 161人 1.7%

頭痛 7,055人 74.3%

のどが痛む 3,606人 38.0%

貧血 1,716人 18.1%

めまい 4,852人 51.1%

鼻血が出る 1,835人 19.3%

疲れやすい 7,053人 74.2%

風邪をひきやすい 5,661人 59.6%

手足など骨が痛む 5,804人 61.1%

視覚障害 2,773人 29.2%

甲状腺異常 3,620人 38.1%

白血病 50人 0.5%

腫瘍 440人 4.6%

生まれつき障害がある 34人 0.4%

その他 1,715人 18.1%




「現在の健康状態は事故の影響だと思っているか」

100%事故が原因である 47.3%

かなり事故が影響している 14.5%

全く事故と無関係ではない 38.2%

事故とは無関係である 0.0%

健康である 0.0%



念のため、数は多くはないが、比較対象のために行ったモスクワ市民の集計(316人)は次のとおりである。


「現在の健康状態」

健康   173人   54.7%

頭痛    53人   16.8%

のどが痛む 27人    8・5%

貧血     6人    1・9%

めまい   22人    7・0% 

鼻血が出る 10人   3・2%

疲れやすい 67人  21・2%

  風邪をひきやすい 56人 17・7%

手足などの骨が痛む23人   7・3%

視覚障害     51人   16・1%

甲状腺異常    11人    3・5%

白血病       2人    0・6%

腫瘍        8人    2・5%

生まれつき障害がある0人    0%

その他      22人    7・0%


 


●チェルノブイリ市(原発から約17キロ)の避難民のアンケート回答者2,127人

(人々は事故からおよそ8~ 9日後に避難した)


「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 1,372人 64.5%

吐き気を覚えた 882人 41.5%

のどが痛んだ 904人 42.5%

肌が焼けたように痛んだ 151人 7.1%

鼻血が出た 459人 21.6%

気を失った 207人 9.7%

異常な疲労感を覚えた 1,312人 61.7%

酔っぱらったような状態に なった 470人 22.1%

その他 287人 13.4%


「現在の健康状態」

健康 58人 2.7%

頭痛 1,587人 74.6%

のどが痛む 757人 35.6%

貧血 303人 14.2%

めまい 1,068人 50.2%

鼻血が出る 417人 19.6%

疲れやすい 1,593人 74.9%

風邪をひきやすい 1,254人 59.0%

手足など骨が痛む 1,361人 64.0%

視覚障害 649人 30.5%

甲状腺異常 805人 37.8%

白血病 15人 0.7%

腫瘍 80人 3.8%

生まれつき障害がある 3人 0.1%

その他 426人 20.0%





●チェルノブイリ地区の村々の避難民12,864人 の回答


「事故後1週間に体に感じた 変化」

頭痛がした 7,805人 60.7%

吐き気を覚えた 5,497人 42.7%

のどが痛んだ 5,160人 40.1%

肌が焼けたように痛んだ 813人 6.3%

鼻血が出た 2,491人 19.4%

気を失った 1,194人 9.3%

異常な疲労感を覚えた 7,259人 56.4%

酔っぱらったような状態に なった 2,471人 19.2%

その他 1,966人 15.3%




●ノヴォシュペリチ村(原発から6キロ)の避難民の回答者351人


「事故後1週間に体に感じた 変化」

頭痛がした 216人 61.5%

吐き気を覚えた 158人 45.0%

のどが痛んだ 124人 35.3%

肌が焼けたように痛んだ 19人 5.4%

鼻血が出た 65人 18.5%

気を失った 35人 10.0%

異常な疲労感を覚えた 192人 54.7%

酔っぱらったような状態に なった 69人 19.7%

その他 55人 15.7%

「現在の健康状態」

健康 4人 1.1%   

頭痛 264人 75.2%

のどが痛む 114人 32.5%

貧血 55人 15.7%

めまい 171人 48.7%

鼻血が出る       70人 19.9%

疲れやすい 268人 76.4%

風邪をひきやすい 225人 64.1%

手足など骨が痛む 211人 60.1%

視覚障害  80人 22.8%

甲状腺異常 110人 31.3%

白血病  0人 0.0%

腫瘍 19人 5.4%

生まれつき障害がある  0人 0.0%

その他 86人 24.5%




●ポレスコエ地区(原発から約45キロ)避難民の回答者1,005人

「事故後1週間に体に感じた 変化」

頭痛がした 623人 62.0%

吐き気を覚えた 380人 37.8%

のどが痛んだ 420人 41.8%

肌が焼けたように痛んだ 76人 7.6%

鼻血が出た 292人 29.1%

気を失った 166人 16.5%

異常な疲労感を覚えた 595人 59.2%

酔っぱらったような状態に なった 215人 21.4%

その他 92人 9.2%


「現在の健康状態」 

健康 29人 2.9%

頭痛 705人 70.1%

のどが痛む 361人 35.9%

貧血 133人 13.2%

めまい 435人 43.3%

鼻血が出る 216人 21.5%

疲れやすい 675人 67.2%

風邪をひきやすい 528人 52.5%

手足など骨が痛む 651人 64.8%

視覚障害 185人 18.4%

甲状腺異常 306人 30.4%

白血病 2人 0.2%

腫瘍 25人 2.5%

生まれつき障害がある 2人 0.2%

その他 162人 16.1%




このほかアンケートを行ったのは、約40の市や村である。その避難民の統計を見ても、同じような数字 の傾向となっている。鼻血と疲労感だけを抜き出して見ると次のようになる。


●ナロヂチ地区の場合(194人)

「事故後1週間に体に感じた 変化」

鼻血が出た 47人 24.2%

異常な疲労感を覚えた 111人 57.2%

「現在の健康状態」

鼻血が出る 40人 20.6%

   疲れやすい        143人     73.7%



●ナロブリャ地区の場合(1881人)

「事故後1週間に体に感じた 変化」

鼻血が出た 323人 17.2%

異常な疲労感を覚えた 921人 49.0%

「現在の健康状態」

鼻血が出る 195人 10.4%

疲れやすい 975人 51.8%



●ホイニキ地区の場合(908人)

「事故後1週間に体に感じた 変化」

鼻血が出た 124人 13.7%

異常な疲労感を覚えた 443人 48.8%

「現在の健康状態」

鼻血が出る 72人 7.9%

疲れやすい        445人     49.0%



●ブラーギン地区の場合(1,019人)

「事故後1週間に体に感じた 変化」

鼻血が出た 161人 15.8%

異常な疲労感を覚えた 677人 66.4%

 「現在の健康状態」

鼻血が出る 119人 11.7%

疲れやすい 492人 48.3%

(アンケートの翻訳には、東京外国語大学のロシア語科の学生を中心に、約60名が協力してくれた)

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