草野心平のカエルの詩は、四季折々の場面をうたっています。その中で、これから長い冬眠にはいる心境を表現した「秋の夜の会話」もお気に入りです。
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■秋の夜の会話
さむいね。
ああさむいね。
虫がないてるね。
ああ虫がないてるね。
もうすぐ土の中だね。
土の中はいやだね。
痩せたね。
君もずゐぶん痩せたね。
どこがこんなに切ないんだらうね。
腹だらうかね。
腹とったら死ぬだらうね。
死にたかあないね。
さむいね。
ああ虫がないてるね。
秋も深まり、夏の間はあんなに食べ物があり、丸々と太っていたのにこの頃はエサがとれなくだんだん痩せてきています。それなのに、あの暗い穴の中で冬眠しなくてはなりません。「さむいね。ああ虫がないてるね」は、その心情をよく表しているなぁと思います。
この詩は、人生も晩年を迎えた自分にも重なるところあります。冬眠だったら来春目覚めるのですがー。