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医療供給縮小の可能性に言及、厚労省幹部

2014-08-28 08:41:55 | 医療と介護
安倍政権の医療制度改革



日病が常任理事会開催、動向注視の構え



m3.com 2014年8月25日(月) 池田宏之(m3.com編集部)

日本病院会は8月23日に常任理事会を開催し、堺常雄会長が8月25日の会見で内容を説明した。同理事会には、厚生労働省の幹部らが出席し、地域医療ビジョンや医療介護連携の考え方を紹介したが、医療について「マーケット・リサーチ」「サプライ・サイド」などの経済用語を用いて表現し、医療供給を減らしていく可能性に言及する発言などがあったという。
医療介護総合確保促進法で定める「新たな財政支援制度(基金)」(以下、新基金)は、基本的に、国と都道府県の負担で行うが、医療機関に負担を求めている事例などもあり、堺会長は、医療提供体制を巡る今後の動向を注視していく考えを示した。
■「ナショナル・ミニマム確保する」
 理事会で、地域医療ビジョンと医療計画の今後について話したのは、厚労省医政局医師確保等地域医療対策室長の佐々木昌弘氏。堺会長によると、佐々木氏は、医療計画について、「マーケット・リサーチを実施して、将来推計を加味すれば、サプライ・サイドの縮小もある」と述べ、医療全体の供給量を減らしていく可能性に言及したという。出席者からは、「地域の衰退につながる可能性がある」と疑問が出たのに対して、佐々木氏は説明を追加。「患者の動線を明確化にした上で計画が進む」「国民に適切な情報を提供し、医療者に求めていくものを、理解できるようにする」旨などを説明した。
 全体として、佐々木氏は、「ナショナル・ミニマムは確保したい」と話し、見直しを進めながら、最低限の医療提供を確保する考えを示した。ただ、堺会長は「今あるデータでは『ナショナル・ミニマム』が分からないのではないか。地域格差が出てくる懸念はある」とした。また、「マーケット・リサーチ」「サプライ・サイド」といった経済用語を用いて、医療提供体制を表現したこともあり、堺会長は、医療需給の適正化について「最初は(病床機能報告制度のように)定性規制だったのが、(都道府県ごとの医療費目標など)定量規制になりつつある」と危機感を示した。
■医療ビジョンの首長関与に懸念
 理事会では、医師の地域偏在についても話題になり、厚労省の幹部は、医学部定員の地域枠の増加によって対応していく考えを示したという。ただ、堺会長は、現在までに「医師のプロフェッショナル・オートノミーでは、(偏在が)解決されてこなかった経緯がある」と問題点を指摘。医療界に、行政によって、地域ごとの医療提供体制のある程度の枠を設定するように求める声があることも紹介したが、「軽々に制度に頼るのもどうかと思う」とも述べ、難しさをにじませた。
 地域医療ビジョンについては、都道府県と医療機関との協議がうまくいかない場合、堺会長は、「首長の力が全面に出てくるのではないか」と危惧を示した上で、現在、医師会中心に進んでいる点について、日病でも都道府県における支部のようなものを設置して、議論に積極的に関わりたい考えを示した。
■新基金、3分の2は医療機関負担?
 医療介護連携について、堺会長が指摘したのは、新設された医療提供体制の充実などに利用される904億円規模の新基金に対する都道府県ごとの温度差。基本的に、資金は3分の2が国の負担、3分の1を都道府県が負担する仕組みが想定されていたが、神奈川県では、医療機関に3分の2を負担するように求めているケースが発生していると言い、「都道府県の動向を注視したい」と述べた。
 堺会長は、全体として、医療関連の法律改正が相次いでいることに加えて、政府の規制改革会議などから、さまざまな医療関連の提言が出ている点をふまえて、「大変分かりにくい状況だが、粛々とやりたい」とした。その上で、やりっぱなしの事業でなく、PDCAサイクルを回しながら効率的な政策にしていく必要性に言及した。

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