医科歯科通信  (医療から政治・生活・文化まで発信)



40年余の取材歴を踏まえ情報を発信

ロッテ取得の特許成分 歯周病対策素材ユーカリ抽出物と

2015-08-06 20:12:35 | 歯科
<株式会社ロッテ 25年にわたる研究結果を発表>
その効果成分「マクロカルパールC」 
歯垢の生成抑制と歯ぐきの炎症の改善効果を説明
株式会社ロッテ 2015年7月29日
株式会社ロッテでは“むし歯”と並ぶ口腔の2大問題の1つ“歯周病”を、口腔だけにとらわれない健康に関係する問題だととらえ、これまで研究を続けてきました。その中で発見された、ユーカリ抽出物とその効果成分『マクロカルパールC』の、歯垢の生成を抑制し、歯ぐきの炎症の改善効果が立証された研究結果について、2015年7月28日(火)に発表会を開催いたしました。

研究発表会
厚生労働省によると、日本において35歳を超えると、8割以上が歯肉炎も含めた歯周病にかかっているという調査結果が出ています。また、歯周病は、年齢を重ねるごとに罹患率が上がるだけでなく、その深刻度も増していきます。そもそも歯周病が深刻になると、歯ぐきの不健康で最終的に歯が抜けてしまい“噛むこと”ができなくなります。慢性感染症なので、細菌の活動を封じるには治療の継続が必要です。さらに歯周病の怖い点は、影響が口の中だけで収まらないことです。近年の研究で、歯周病菌が肥満や全身の様々な病気に関係することが明らかになってきています。

1948年の創業以来ガムをつくり続け、“噛むこと”に取り組んできた弊社は社会のためにできることを考えるべく、本年「噛むこと研究室」を立ち上げ、様々な研究機関や企業と連携し、最適な“噛む”を提供することで、生活者の力になりたいと活動しています。また、“歯ぐきの健康”を通じて全身の健康を推進する団体『オーラルプロテクトコンソーシアム』に参画することについても、この度発表するなど、歯ぐきの健康化を促進するため、社内外で今後も活動してまいります。

今回のセミナーでは、「歯周病発生のメカニズムと、歯周病対策素材ユーカリ抽出物とその効果成分『マクロカルパールC』の効果」について、研究開発に携わった大阪大学 天野 敦雄 教授、株式会社ロッテ 中央研究所 基礎研究部 部長 大澤 謙二、大阪大学 永田 英樹 准教授の3名にご講演頂きました。

本講演で大阪大学 永田 英樹 准教授は、「歯周病は歯垢除去をはじめとする、日常のケアが非常に大切。その中で、歯垢の生成自体を抑制するユーカリ抽出物『マクロカルパールC』は、セルフケアとして今後大いに注目できる」と、ユーカリ抽出物『マクロカルパールC』の可能性について言及されていました。


【講演(1)】『日本人の口腔および口腔ケアの実態』
国民医療費の約3割を占めるなど、日本人にとって国民病といえる生活習慣病と、深く密接な関係があることが近年明らかになっている、「歯周病をはじめとした日本人の口腔および口腔ケアの実態」について、基礎知識やその予防法を交えて、大阪大学 歯学部長 天野 敦雄 教授よりご講演頂きました。

全身の健康を害すきっかけになる歯周病になることの弊害や、加速させる要因など、どのようなメカニズムで歯周病になりうるのかを説明。歯周病の最も重要な対策方法として、歯ブラシ、やデンタルフロスなどを活用した、セルフケアやプロフェッショナルケアについてご紹介頂きました。また、21世紀に求められるセルフケアとして、「抗菌・殺菌効果」「歯垢成熟抑制効果」を持つ食品成分の出現に注目されている旨も、お話しされていました。

◎天野 敦雄(あまの あつお)先生
大阪大学 歯学部長・大阪大学大学院 歯学研究科長
専門は予防歯科学、口腔感染症の感染制御、病原細菌の細胞内輸送。1984年大阪大学 歯学部卒業。2000年大阪大学大学院 歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 先端機器情報学分野教授。2011年より予防歯科学分野教授。歯周病に関する研究に取り組んでいる。


【講演(2)】『ユーカリ抽出物の効果成分について』
“歯周病”を、口腔だけにとらわれない健康に関係する問題だととらえ、これまで研究を続けてきた、歯周病対策素材ユーカリ抽出物とその効果成分『マクロカルパールC』について、「ユーカリ抽出物の効果成分について」として、株式会社ロッテ 中央研究所 基礎研究部 部長 大澤 謙二より講演いたしました。

ユーカリ抽出物を発見するまでの研究内容をはじめ、何故歯周病に着目したのかを説明。また、『マクロカルパールC』特有の抗菌効果(歯周病原因菌)や、歯垢形成阻害効果が強く、口の中の歯周病菌の増殖を抑制し、歯垢をつくられにくくして、歯周病を予防するメカニズムについて紹介いたしました。

◎大澤 謙二(おおさわ けんじ)
株式会社ロッテ 中央研究所 基礎研究部 部長
1985年株式会社ロッテ入社。「お菓子からお客様に健康を提供する」新商品開発の中で、ユーカリ抽出物を発見。1995年学会に発表。その後、本社勤務を経て、2014年ロッテ中央研究所に復帰。噛むこと研究室などで様々な研究を行う。


【講演(3)】『ユーカリ抽出物配合のガムの歯周病予防効果について』
「ユーカリ抽出物を配合したチューインガムは歯ぐきの健康に寄与できるか?」という疑問をもとに実施した、ヒト試験による効果の検証について、『ユーカリ抽出物配合のガムの歯周病予防効果について』と題し、大阪大学 歯学部 永田 英樹 准教授より講演頂きました。

講演では、無作為に人選し複数回実施した試験で、ユーカリ抽出物配合チューインガムから溶出されたマクロカルパールCをはじめとするユーカリ抽出物が、歯肉炎や歯周炎の原因である歯垢の堆積を抑制することにより、歯肉の炎症を抑制した結果、歯周病の臨床指標に有意な差がみられ、歯周病予防効果がある可能性が示されたことをご紹介頂きました。

◎永田 英樹(ながた ひでき)先生
大阪大学 歯学部 准教授
専門は予防歯科学、歯周病菌のバイオフィルム形成、歯周病予防のための機能性食品。1987年大阪大学 歯学部卒業。2003年大阪大学大学院 歯学研究科 助教授、2007年より准教授。天野教授とともに、歯周病に関する研究に取り組んでいる。


【ユーカリ抽出物『マクロカルパールC』とは?】
●ユーカリ抽出物の『マクロカルパールC』に、歯周病予防の効果!
ユーカリ(グロブラス種)の葉から抽出した成分「マクロカルパールC(*)」をはじめとするユーカリポリフェノール類には、歯周病予防の効果があることが明らかになっています。特にマクロカルパールCは、“歯周病菌への抗菌作用”と“歯垢形成の酵素を阻害する働き”が強く、口の中の歯周病菌の増殖を抑制し、歯垢をつくられにくくして、歯周病を予防します。この成分のもう一つの特徴は、歯周病菌には抗菌活性を発揮する一方で、口腔内の細菌叢や腸内細菌叢を大きく変えることはないという点です。ユーカリはもともとハーブティーなどの飲用にもなっていて安全性が認められていますが、細菌叢への影響が少ないことも確認済み。安心して口に入れることができます。

*マクロカルパールCは、特定のユーカリにのみ含まれ、ユーカリポリフェノールの中でも、歯周病予防効果が最も高い成分です。

●ユーカリ抽出物で、歯垢が減少!
ヒトを対象にした比較試験でも、『マクロカルパールC』などのユーカリ抽出物が歯周病を予防・改善するという結果が出ています。ユーカリ抽出物を配合したチューインガムの摂取で、“歯垢の蓄積”“歯肉の炎症”“歯肉からの出血”が抑えられ、“歯周ポケットの深さ”が改善されたことなどが、数値として示されました。この試験結果からも、ユーカリから抽出した成分が、歯周組織の健康維持・増進に有効に働くと考えられます。


■被験者:歯肉に炎症を有する20~40代
■試験群:ユーカリ抽出物0.6%添加ガム群 32名、
     ユーカリ抽出物0.4%添加ガム群 32名、
     無添加ガム群 33名
■摂取量:1回2粒、1日5回
■期間 :2006年2月~6月(大阪大学大学院 歯学研究科)


歯髄細胞を用いた再生医療分野への取組みについて

2015-08-06 19:05:00 | 歯科
タカラバイオ ニュースリリース
2015年7月24日

タカラバイオ株式会社は、歯髄細胞を用いた再生医療の開発に関し、株式会社再生医療推進機構(以下「再生医療推進機構社」)と共同で実施することに本日付で合意しました。
ヒトの乳歯や親知らずといった、従来は廃棄されていた脱落歯や抜去歯から容易に採取可能な歯髄細胞は、再生医療に利用できる幹細胞として有望視されています。今般、当社は、個人から本目的で歯髄細胞を預かり保管する「歯髄細胞バンク」事業を展開する再生医療推進機構社と共同で、歯髄細胞を用いた再生医療事業を目指し、以下項目を含む技術開発を実施いたします。

 ●他家移植を想定した、歯髄細胞の拡大培養法および品質評価法の確立
 ●歯髄細胞の凍結保存法の確立
 ●歯髄細胞培養用培地の最適化などの検討・開発

当社は、本共同開発を通して、適切に品質管理された、再生医療に利用できる歯髄細胞の調製技術の開発や歯髄細胞の培養に適した培地など製品の開発を行い、本技術を応用した再生医療製品の製造開発受託サービスの提供や培地など製品の販売を目指します。

当社は、今後とも再生医療分野の新製品・新サービスの開発に注力し、業績拡大を目指します。

<参考資料>
【株式会社再生医療推進機構の概要】
会社名 株式会社 再生医療推進機構
設立 平成20年10月30日
代表者 代表取締役 大友宏一
住所 東京都中央区銀座一丁目20番15号 (研究所:山梨県笛吹市)
会社概要 全国1,500施設の歯科医療施設と連携し、国内初となる歯髄細胞保管事業を運営する一方で、国立大学法人岐阜大学などの研究機関や製薬会社などとの共同開発により、保管細胞を利用した再生医療等製品(脳梗塞や脊髄損傷の神経再生製品、小児先天性疾患および歯科分野の再生医療製品など)の実用化に向け積極的に取り組んでいる
ホームページ http://www.acte-group.com/

【語句説明】
歯髄細胞
歯の神経に含まれる間葉系幹細胞の一種。脱落乳歯や親知らずなどから採取できる細胞です。歯という硬質の素材に保護されているため紫外線などの外部刺激を受けにくく、遺伝子は傷つきにくいとされています。
他家移植
再生医療において、他人の細胞を原料として製造された細胞や組織を移植することを他家移植と言います。一方で、自分の細胞を利用する場合は自家移植と言います。

本日、「医薬品・医療機器等安全性情報」が発出

2015-08-06 19:01:52 | 医療と介護
┏━━━━━━━━━━━【PMDAメディナビ】━━━━━━━━━━━┓

「医薬品・医療機器等安全性情報」発出のお知らせ (2015/08/06配信)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

本日、「医薬品・医療機器等安全性情報」が発出されましたので
お知らせいたします。

2015年8月6日「医薬品・医療機器等安全性情報」No.325
http://www.pmda.go.jp/files/000206551.pdf

登録時に「医薬品・医療機器等安全性情報」について
添付ファイルの配信を希望された方には, ファイルが添付されて配信されます。


(No.325の内容)
1.医療機関における医薬品安全性情報の入手・伝達・活用状況に関する調査について
PMDAでは,講じた安全対策措置のフォローアップの強化・充実を図るため
平成22年度より,医療機関における安全性情報の入手・伝達・活用状況を把握し
医療機関における安全性情報の活用策を検討することを目的とした調査を実施しています。
本号では,平成26年度に実施した調査結果の概要が紹介されています。

2.重要な副作用等に関する情報
【1】アスナプレビル, ダクラタスビル塩酸塩
【2】アビラテロン酢酸エステル
【3】インダパミド
【4】インフルエンザHAワクチン
【5】インターフェロン ベータ-1a(遺伝子組換え)
平成27年7月7日に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち
重要な副作用等について、改訂内容等とともに症例の概要等が紹介されています。

3.使用上の注意の改訂について(その266)
(1)トラマドール塩酸塩(OD錠,カプセル剤,注射剤)
(2)トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン 他(2件)
平成27年7月7日に改訂を指導した医薬品の使用上の注意について,
改訂内容,主な該当販売名等が紹介されています。

4.市販直後調査の対象品目一覧
平成27年6月末日現在の市販直後調査の対象品目が掲載されています。

┏━━━━━━━━━━━【PMDAメディナビ】━━━━━━━━━━━━┓

「使用上の注意の改訂指示(医薬品)」発出のお知らせ (2015/08/06 配信)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

本日、「使用上の注意の改訂指示(医薬品)」が発出されましたのでお知らせいたします。

■平成27年8月6日指示分
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/revision-of-precautions/0293.html

(対象医薬品)
1. ヒドロキシジン塩酸塩
ヒドロキシジンパモ酸塩
2. メマンチン塩酸塩
3. デフェラシロクス
4. 滅菌調整タルク
5. パニツムマブ(遺伝子組換え)
6. ポマリドミド
7. ザナミビル水和物
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物

------------------------------------------------------------
■過去の「指示分(医薬品)」はこちらから
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/revision-of-precautions/0001.html
------------------------------------------------------------


numata727 2014年08月06日 に書かれた記事をお届けします

2015-08-06 18:56:23 | お知らせ

自己破壊した極めて危険な放置できない少女

★ブラック企業は何時までも放置されていいのか?★耳ある者は聞くべし 金ある者は使うべし ゲーテ★少女(16)義理の母親から「猫を殺すことが楽しいの」と聞かれ、「うん」と答えた。さらに、「人を殺したい」という要求があることなどを話したため、母親はこの内容を医師に伝えた。★両親と医師は事件前日の7月25日、病院で...
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紫陽花は色あせ、枯れたまま残っている

季節的にも異常を感じている夏だ。紫陽花は色あせ、枯れたまま残っている。フジの花も一房咲いている。また、バラは2度先である。京都へ行って気づいたが百日紅(さるすべり)の花が多い。取手市内にも白、ピンク、紅赤の百日紅がどこの家の庭に花を咲かせていた。花の写真はたまるばかりだ。コスモスが6月に咲き今も咲いている。し...
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「命の危険」精神科医助言で父娘別居

2014年08月04日 佐世保高1殺害  長崎県佐世保市の県立高1年の女子生徒(15)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された少女(16)の父親は、実家で少女から金属バットで殴られ重傷を負ったため、少女をマンションに一人暮らしさせていたことがわかった。父親はバットで襲われた後、少女を医療機関の精神科に受診...
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真性の勇者は、苦しんでいる人々の側に立つ

★人間は「人間を超えた聖なる存在」を必要とする。★万人の中に内なる聖性が発見された。★ヒトとカミの関係は時代とともに変容した。★カミを社会から追い出してしまう近代は、やはり「異形」★カミは人間と人間、集団と集団の関係を滑らかにする「緩衝材」★信仰の放棄が行動を小さくする。★読んでいる人が幸せな気持ちになれる、...
>続きを読む


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1日1万歩は効果無し?

2015-08-06 13:48:59 | 医療と介護
健康に暮らす10歳若返る歩行術 -インターバル速歩-

毎日新聞 2015年7月23日 医療プレミア
能勢 博 / 信州大学教授

 私が住んでいる安曇野は槍ケ岳・穂高岳を起点とする梓川(あずさがわ)と、木曽駒ケ岳を起点とする奈良井川が合流する、犀川(さいがわ)の河川敷周辺に広がる平野です。今の季節、日中はここで発生する水蒸気が雲になって、北アルプスの峰々の全貌を見ることはできません。しかし気温が下がってくる朝夕の一時、雲の合間からそれらの峰々をのぞき見ることができます。そして、この時間帯をねらって多くの市民が「インターバル速歩」をしています。
「ややきつい」と感じる運動とは
 さて「インターバル速歩」とは、「ややきつい」と感じる速歩とぶらぶら歩きを3分間ずつ繰り返すトレーニングです。これを1日5セット以上、週4日以上繰り返すと、5カ月間で10歳ほど若がえる体力を得ることができることは、連載第1回で述べました。では、一般に「ややきつい」と感じる運動とは、どのようなものなのでしょうか。
 表1に、本人にとっての運動の「きつさ」を数値で表す主観的運動強度 (RPE:Rating of Perceived Exertion) を示しました。6ポイントが最低値で「非常に楽である」、20ポイントが最高値で「非常にきつい」と設定すると、「ややきつい」と感じる運動は、12~14ポイントに相当します。簡単に言えば、2〜3分間続けると「もうダメだ」と感じる運動の、6〜7割の強度が「ややきつい」運動です。
表1 主観的運動強度(RPE)
 RPEのポイントに10を掛けると、20歳の人の1分間あたりの心拍数になります。すなわち、20歳の人で「ややきつい運動」は、2〜3分間続けると、1分間あたりの心拍数が120〜140拍になるような運動ということになります。一方年を取るにつれて、運動によって増加する心拍数の上限は低下し、1分間あたりの最高心拍数は【220−年齢】と推定されます。それから導かれる各年齢の「ややきつい運動」時の心拍数は表2のようになります。
表2 年齢と心拍数
 もうお分かりだと思いますが、「ややきつい」と感じる運動は、個人の体力レベルによっても異なります。例えば、オリンピックでマラソンに出場するような選手に「ややきつい」と感じる速度で走ってください、と言えば、私たちが全速力で走るよりもはるかに速い速度で走ります。一方、不幸にして脳梗塞(こうそく)などが原因で片足が不自由な方は、私たちよりも遅い速度でしか歩けないでしょう。でも、そんなことは問題ないのです。その方にとって「ややきつい」と感じる運動であれば、それは速歩なのです。
「ややきつい」運動を続けるのは難しい
 では、なぜ「インターバル速歩」は、この「ややきつい」と感じる速歩とゆっくり歩きを3分間ずつ繰り返すのでしょうか。答えは簡単。3分間歩くとほとんどの方が速歩を続けるのが嫌になるからです。胸がドキドキし、息が切れてきます。そして、すねが少し痛くなってきます。ちょうど、バスに乗り遅れまいとして、停留所に向かって速足で歩いているような状況を思い浮かべてください。
 実際、私たちには苦い経験があります。米国スポーツ医学会がすすめる運動処方では、体力向上・生活習慣病予防のために「ややきつい」と感じる運動を1日30分以上、週に4日以上、5カ月間実施することが推奨されています。それにしたがって、松本市の中高年の方に「ややきつい」と感じる速歩を指導したことがありましたが、結果は散々たるもの。ほとんどの方は途中でやめてしまいました。理由は「面白くない、しんどいだけ」ということでした。
インターバル速歩は「インターバル・トレーニング」の中高年版
 担当した大学院生ががっかりしてやって来て、相談して決めたのがインターバル速歩だったのです。ヒントは、1952年ヘルシンキ五輪で、長距離3冠を達成したエミール・ザトペックが考案した「インターバル・トレーニング」でした。高負荷と低負荷の運動を交互に繰り返すこのトレーニングは、世界中に広まっており、身近なところでは学校の校庭でサッカー部員がやっているのを見たことがある方もおられるでしょう。非常にきつい運動をすると、筋肉から大量の乳酸が排出され、それが息切れや筋肉痛を引き起こします。しかし、2〜3分ゆっくりした運動を挟むと乳酸が代謝され、再度非常にきつい運動が可能になります。その結果、トータルで長時間、高強度の運動をすることが可能になります。
 これを歩行系の運動に導入したのが「インターバル速歩」です。結果、松本市のほとんどの参加者がトレーニングを継続しました。大げさだと思われるかもしれませんが、私は、これは人間行動学上の大発見だと思っています(笑い)。だから、授業中、信州大学の学生にも言っています、「疲れたと思ったら無理せずに休みなさい、そのうちまた頑張ろう、という気分になりますから」と。
1日1万歩は効果なし?
 ちなみに、インターバル速歩中に分泌される乳酸は、筋肉肥大を引き起こし、さらに筋肉内での酸素を利用しやすくすることで、体力を向上させます。連載で後に述べますが、この体力の向上こそが、生活習慣病の予防・治療に必要なのです。一方、一般に推奨されている1日1万歩をもし、低い (楽な) 強度で「ダラダラ」と実践されていたら乳酸が産生されず、顕著な効果は得られないでしょう。「きつく、短く」歩いて勝負をしよう、これがインターバル速歩なのです。

のせ・ひろし 1952年生まれ。京都府立医科大学医学部卒業。京都府立医科大学助手、米国イエール大学医学部博士研究員、京都府立医科大学助教授などを経て現在、信州大学学術院医学系教授(疾患予防医科学系専攻・スポーツ医科学講座)。画期的な効果で、これまでのウオーキングの常識を変えたと言われる「インターバル速歩」を提唱。信州大学、松本市、市民が協力する中高年の健康づくり事業「熟年体育大学」などにおいて、約10年間で約6000人以上に運動指導してきた。趣味は登山。長野県の常念岳診療所長などを歴任し、81年には中国・天山山脈の未踏峰・ボゴダ・オーラ峰に医師として同行、自らも登頂した。著書に「いくつになっても自分で歩ける!『筋トレ』ウォーキング」(青春出版社)、「山に登る前に読む本」(講談社)など。

原爆投下70年
潘 国連総長、寄稿全文
毎日新聞 2015年08月05日 19時54分

長崎市を訪れ、被爆マリア像の前で会見した潘基文・国連事務総長
=長崎市の浦上天主堂で2010年8月5日、金澤稔撮影
関連記事: 潘国連総長寄稿「核廃絶、責任尽くす」
 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は日本への原爆投下から70年の節目に「核兵器のない世界」の実現を求め、毎日新聞にメッセージを寄稿した。その全文を紹介する。
 広島と長崎に原爆が投下されてから70年を迎えるにあたり、5年前にこの2都市を訪問した時のことを思い出します。感動的なその体験は、被爆者との面会で一層意味のあるものとなりました。勇敢な生存者たちの勇気と不屈の精神に深く感動しました。核兵器のない世界を求めて信念に満ちた行動を続けてきた彼らの70年間という歳月に敬意を表します。
 被爆者の平均年齢が80歳を超え、広島・長崎から世界の隅々に向けて発信されてきた彼らの平和へのメッセージを広げていくことの緊急性をいま強く感じています。
 被爆者の疲れを知らぬ積極的な活動のおかげもあり、核兵器のない世界というゴールを目指すという点では私たちはみな完全に一致しています。核兵器のない世界の実現はすべての国家と国民にとって利益となるのは明らかです。しかし、核軍縮の責務は明確であるにもかかわらず、核兵器のない世界をどうやって実現するのかについては深刻な意見の相違が残っています。
 だから私は各国の指導者に呼びかけるのです。世界を不安定なものにする兵器に貴重な国力を浪費するのではなく、人類の要求を満たす大胆でかつグローバルなビジョンを受け入れるように、と。核軍縮の緊急性に疑問を呈する人には被爆者の声を聞けと言いたい。勇敢で打たれ強い被爆者のまなざしを見ずして、核兵器が何をもたらすかを分かっている、と言える人はいないでしょう。
 広島、長崎への原爆投下から70年というこの荘厳な節目以上に、核兵器が人類にもたらす結末を思い起こすのに適切な機会はありません。
 この70年の節目は、この最も破壊的な兵器を地球上から取り除くための具体的な行動をとるチャンスでもあります。私はかねて核拡散防止条約(NPT)の当事国、特に核保有国に対し、核軍縮につながる効果的な方策について交渉するという義務を果たすよう強く求めてきました。これは個別の、しかも相互に補強しあうような措置に支えられた枠組みに合意することで(核兵器の廃絶という)この目標を追求することができます。あるいは、強力な検証制度に裏打ちされた核兵器禁止条約の交渉を検討することでも可能です。
 また、私は一貫してすべての国による核実験全面禁止条約(CTBT)の批准を提唱してきました。条約はすべての核実験を禁止し、核兵器の開発と拡散を抑制するほか、核軍縮の進展に貢献するものです。核実験で生じる危険な放射性副産物から環境を守ることの助けにもなります。
 国際社会として、私たちは(原爆投下から70年の節目を)歴史的なチャンスととらえ、意見の隔たりを埋め、一致できる点を見つけ、軍縮を実際に進展させるべきです。
 原爆投下から70年、国連創設から70年を迎えるにあたり、私たちは、核兵器のない世界の実現に向けて、いま一度全力を尽くす責任を、被爆者、すべての生き物、そして未来の世代に対して負っているのです。
 ◇長崎原爆資料館で記帳
 私は長崎を訪れ、原爆の悲惨な出来事を見ることに身の引き締まる思いです。原爆の惨状はとてもショッキングであり、そして被爆者の勇気は驚くべきものでした。被爆者の歴史的な出来事が、全人類に語り継がれていくことを願います。共に核兵器のない世界の実現へ向けて、取り組んでいきましょう。悲しい歴史を学びそして伝えていく場として、長崎原爆資料館を称賛いたします。
 国連事務総長 潘基文(2010年8月5日、長崎原爆資料館で記帳)
 ◇広島原爆資料館で記帳
 65回目の原爆の日を記念する平和記念式典に国連事務総長として参列し、光栄な思いです。この優れた博物館は、想像を絶する破壊と人類の苦痛を私たちに伝えてくれます。後世の世代がより平和に、より豊かに生きていける核兵器のない世界を実現するために、共に取り組んでいきましょう。
 国連事務総長 潘基文(10年8月6日、広島原爆資料館で記帳)

人は何かに執着する

2015-08-06 05:59:50 | 受けとめる力
動執生疑(どうしゅうしょうぎ)
人は何かに執着する。
それは思想であったり、哲学、宗教であったり、お金であったりする。
単なる詐欺師を教組と崇める場合もある。
執着している心を動揺させて、疑いを生じさせ、正しい方向へ導く。
特殊詐欺(振り込め詐欺)も人間の執着という弱点を巧みに利用するのだ。
電話してきた相手は、携帯電話の番号が変わったとまず、信じ込ませる。
信じ込むことも心の「執着」。
あるいは、儲け話で人の心を執着させる。
金融機関の人たちに期待されるのは動執生疑。
詐欺を未然に防ぐ水際作戦だ。
高齢者が多額のお金を下ろしに来る、そのこと自体が不自然。
「何にお金使うのですか?」
「息子さんが、携帯電話の番号が変わったと言っていましたか?」
「振り込め詐欺の手口を知っていますか?」
お金を下ろしに来た高齢者の「執着」する心を動揺させ、疑いを生じさせるのだ。