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しまいびと

☆終活や介護に関する役に立つ情報を発信しています☆

ペット信託によりペットの命を守れるか(前編)

2022-11-10 | エンディングプラン
ペット信託を考える前に、
まず『信託』について説明したいと思います。

『信託』とは、
その名の通り、
自分の財産を誰かに「信じて託す」ことです。

信託銀行等が遺言書の作成・保管・執行まで行う
『遺言信託』や、
投資家から集めた資金を投資信託運用会社が投資・運用する
『投資信託』等があり、
これらを『商事信託』と言います。

報酬を受け取り営利を目的とする『商事信託』は、
金融庁の免許が必要で信託業法の規制を受けます。
日本の信託は大半がこの『商事信託』です。

一方、
2006年の信託法改正により、
営利を目的としないものであれば、
家族や知人等が受任することが可能となりました。
これらを『民事信託』と言います。

最近よく耳にする『家族信託』とは、
一般社団法人家族信託普及協会が商標登録したもので、
この『民事信託』の一つになります。

では、
『民事信託』について説明します。
まずこの制度には、
「委託者」(財産を預ける人)
「受託者」(財産を管理する人)
「受益者」(財産から利益を受ける人)
の3者が登場します。

ここからはわかりにくいので例を挙げてみたいと思います。
Aさん(70歳男性)は一人暮らしですが、
知的障がいがありグループホームに入所している
息子のBさん(40歳)がいます。
妻とは死別し、その他の親族は甥のCさん(45歳)がいるだけです。
Aさん自身に病気や認知症はありません。

Aさんは、
預貯金1000万円と、
自宅マンションの他、
賃貸マンションを1室所有しており、
家賃収入を得ています。

Aさんは、
この安定収入のある賃貸マンションを、
息子Bさんに渡したいと考えていますが、
Bさんは知的障がいのため自身で管理することは難しい状況です。
かといって今はAさんが自分で管理していますが、
Aさん自身も高齢になり、
今後のことが心配になってきています。

病気になったり認知症になった場合に備えて
『財産管理委任契約』や『任意後見契約』等を調べてみました。
いざとなったら確かに第三者に自分の預貯金や賃貸マンションを
管理してもらえることがわかりましたが、
これらの制度では、
あくまでAさん自身のためになることにしか
お金を使用することができません。
すなわち賃貸マンションの収入を、
Bさんのために使ってもらうことができないのです。

そこで『民事信託』を活用することにしました。
甥のCさんに賃貸マンションを預けて、
家賃収入から毎月息子に生活費を振り込んでもらうようお願いしました。
AさんとCさんの間で信託契約を結ぶことで、
例えAさんが認知症になり後見人が選任されたとしても、
賃貸マンションの収入はBさんに支払われ続けることになります。

この場合、
Aさんが「委託者」
Cさんが「受任者」
Bさんが「受益者」
となります。

『民事信託』は、
後見制度よりも自由度の高い、
本人の意思を反映した運用が可能になる制度と言えます。

またこのケースを、
「他益信託」といい、
他に「自益信託」「自己信託」等の形態があります。

但し、
この『民事信託』は、
「受任者」の負担が大きくなります。
かつ信頼できる人にしか頼めません。
「受任者」を見つけにくい場合があり、
その点はデメリットの一つと言えるでしょう。

これらを踏まえた上で、
『ペット信託』について考えていきたいと思います。

つづく、

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自然災害で利用者の借家が損傷した場合

2020-07-19 | エンディングプラン
数年前に実際に担当したケースの話です。

その方は文化住宅に住んでいたのですが、
台風により屋根が大きく損傷し、
日常的に雨漏りが起こるようになりました。

当然ながらこの損傷に対しては、
家主に修繕義務が生じます。
ただ、再三修繕をお願いしたにも関わらず、
被害を受けている家屋が多くて、
順番に対応しているが、いつになるかわからないとのことで、
しばらく放置されました。

怒った利用者(借主)は、
修繕が終わるまでは、家賃を払わないと言い出しました。

仮に家主が修繕してくれない屋根の修理を、
借主がお金を払って修繕したとしましょう。

この費用に関しては、
借主は、直ちに家主に請求することができ、
また、家賃との相殺を主張することも可能です。

ただ、このケースでは、
借主が修繕するのではなく、
家主が修繕するまで家賃を支払わないという内容でした。
確かに、
家主の修繕義務不履行を理由に家賃を支払わない、
という選択肢もありますが、
この場合、損傷の程度によっては、
家賃の全額ではなく、
一部減額が認められるだけの場合もあるため、
注意が必要です。

ちなみに、
借主が実際に修繕して立て替えて支払った費用を、
自己判断で家賃と相殺した場合、
 (例えば家賃が月10万円の家で、
 修繕費が50万円掛かったから、
 家主に家賃との相殺の意思表示をせず、
 勝手に家賃を5ヶ月間支払わないという行動に出るなど)
家主から家賃滞納を理由に契約解除されてしまうと、
その解除は有効となり、退去しなければならなくなるので、
これについても注意しなければなりません。

さて、
今年4月1日の民法改正により、
以下の通り賃借人の修繕権が明文化されました。

『賃借物の修繕が必要である場合において、
次のいずれかに該当するときは、
賃借人は、その修繕をすることができる。
①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、
又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、
賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
②急迫の事情があるとき。』

なお、
同じく4月1日の民法改正により、
入居時の賃貸借契約等の連帯保証人の保証範囲が、
今までは無限保証でしたが、
今後は極度額(上限)を定めなければならなくなったことも、
押さえておきたい重要な改正ポイントです。

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侮ってはいけない医療費控除の効力

2020-01-26 | エンディングプラン
そろそろ確定申告が始まりますね。

高齢者の方で、
定期的に医療機関に掛かっていたり、
介護サービスを利用している方は、
医療費控除を申告すると、税金が還付される場合があります。

例えば、
年金額1,800,000円(月150,000円)
社会保険料180,000円(月15,000円))
という方がいたとしましょう。

この場合、
公的年金等控除1,200,000円
基礎控除380,000円
を差し引くと、
所得税額は2,042円となります。

ただ、この方がもし、
医療費180,000円(月15,000円)
を支払っていたとしましょう。

確定申告することにより、
非課税となり、2,042円が還付されます。

ところが、
「な~んだ、たった2,042円か。
手間暇かける方が面倒くさいから、このままでいいわ。」
とそのままにする方が、意外にたくさんいらっしゃいます。

ただ、それは大きな間違いの場合があります。

先程のケースのように、
ギリギリ課税世帯の方が確定申告し、
所得税・住民税ともに非課税世帯となった場合、
税金の還付よりも、
後期高齢者医療保険料、
介護保険料、
施設入所時の食費や居住費など、
いろいろな費用が下がることになり、
こちらの方が大きなメリットとなります。

ですので、
手間暇をかける甲斐がある場合も考えられますので、
ギリギリ課税世帯の方は、
一度専門家に話を聞いてみましょう!

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意思決定支援という考え方

2019-08-09 | エンディングプラン
介護や福祉の世界では、
利用者と関わる際に、
『自己決定を尊重する』ことが、
基本中の基本になります。

当たり前のことなのですが、
自分で意思表示できない方や、
判断能力が著しく低下している方の場合、
この自己決定はどうすべきなのでしょう?

この場合については、
平成29年3月に厚生労働省から発出されている
『障害福祉サービスの利用等にあたっての
意思決定支援ガイドラインについて』の中に、
「本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、
本人をよく知る関係者が集まって、
本人の日常生活の場面や事業者のサービス提供場面における
表情や感情、行動に関する記録などの情報に加え、
これまでの生活史、人間関係等様々な情報を把握し、
根拠を明確にしながら障害者の意思及び選好を推定する。
本人のこれまでの生活史を家族関係も含めて理解することは、
職員が本人の意思を推定するための手がかりとなる。」
と書かれています。

これを読むと、
我々が介護サービス利用の際に必ず開催する
「サービス担当者会議」も
意思決定支援のための話し合いの場とも
捉えることができますね。

そして、その意思の推定の際に、
「本人に不利益になるような決定はしない」
ことがほとんどだと思います。

ところが、
大阪意思決定支援研究会が、
平成30年3月に発表した
『発表意思決定支援を踏まえた成年後見人等の
事務に関するガイドライン』の中には、
「最善の利益は
代行決定を行う場面において検討される概念であり、
客観的最善の利益と主観的最善の利益に分類される。
客観的最善の利益とは、
支援者の価値観に基づき本人にとって客観的、合理的に
良いと考えられるものをいうのに対し、
主観的最善の利益とは、
本人の希望や価値観などを最大限に考慮し、
本人の価値観において最善と考えられるものを指す。
いずれも本人以外の者により判断されるが、
本ガイドラインでは主観的最善の利益を採用し、
意思決定支援におけるチームミーティング参加者により
判断されるものと定めている。
なお、意思決定支援の場面においては、
あくまで本人が表明した意思を中心に支援が行われる。
ここでは主観的最善の利益も客観的最善の利益も
検討されることはない。」
とあります。

要するに、極論ではありますが、
本人の意思であれば、
本人の不利益になることでも尊重する、
という考え方です。

例えば、
〇タバコはドクターストップの方が、
 タバコを吸う
〇自宅での一人暮らしはかなり危険な方が、
 施設には行かず自宅で住み続ける
〇屋外での歩行は極めて転倒の危険性が高い方が、
 一人で外出される        などなど。

もちろん、
その行動に対するリスクを丁寧に説明することが
大前提にはなると思いますが。

さて、この考え方・・・
基本的に私は大賛成です。
自分が支援を受ける立場であっても、
そうして欲しいと望みます。

ただ、
今の日本の社会にこの考え方は、
受け入れられるのでしょうか?

先日のブログ記事「尊厳ある介護とは」の中で、
裁判になったデイサービスの話を紹介させて頂きました。
この裁判結果と相反することにはならないでしょうか?
また、「セルフネグレクト」の方への対応とも、
矛盾すると言えるかもしれません。

とはいえ、いかなるときでも
本人の意思は最大限尊重されるべきであり、
我々のような支援者は、
「主観的最善の利益」を常に意識しておかなければ、
画一的で無難な意思決定の支援につながってしまう
かもしれません。

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アドバンス・ケア・プランニングは浸透するか?

2019-03-12 | エンディングプラン
『アドバンス・ケア・プランニング』
という言葉をご存知でしょうか?
昨年、『人生会議』という愛称に決まりましたね。

命の危険が迫った状態になると、
約70%の方がこれからの治療やケアについて、
自分で決めたり人に伝えることができなくなるそうです。

そこで、
治療やケアに関する方針を元気なうちに決めておきましょう、
という取り組みです。

そうすることによって、
万が一のときに、自分の家族などが自分の代わりに決断を下すための
重要な手助けになるわけです。

この制度については、厚生労働省のホームページ
わかりやすいパンフレットがアップされていますので、
そちらをご参照下さい。

さて、
この『人生会議』は今後浸透するのでしょうか?

リビング・ウィル」などと同じく、
『人生会議』で決めた意思は尊重されますが、
法的強制力はありません。

しかし、法的強制力がないにしても、
今の自分のはっきりとした意思を示しておくことは、
とても重要なことであると言えるでしょう。

私も基本的にこの制度を進めることには賛成です。
ただ私としては、
法的強制力がないから良い面もあると思っています。

透析中止で亡くなられた44歳の女性のニュースを拝見して、
とても考えさせられるものがあり、とても悲しくなりました。
この方は当初透析中止を意思表示されていましたが、
最後にその意思を撤回し、家族も透析再開をお願いされたようです。
人は感情がありますから、意思が変わるものです。
そのときそのとき望むことは違って当然だと思います。

先程も述べましたが、
私はこの『人生会議』を進めることに賛成です。
なぜならば、
その人の考え方を知っておくことは、
家族や支援者にとって、とても重要な意味を持つからです。

ただ、
定期的に見直すことが必要になると思っています。
一度決めたらもう終わりということでは、何の意味もありません。

「元気なときの意思、しっかりしているときの意思」は、
もちろん最大限尊重しなければなりませんが、
例え認知症になって、
しっかりしていたときに自分が示した意思を忘れてしまったとしても、
定期的に本人の意思を確認し続けることは大切になるでしょう。

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