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しまいびと

☆終活や介護に関する役に立つ情報を発信しています☆

家を貸すと返してもらえない?

2018-02-15 | 介護施設・高齢者住宅
「一旦家を貸すと返ってこない」
家主さんたちが、よくいう言葉です。

自宅の隣に貸家を持っているけど、
あと何年後かには、
そこに息子夫婦に住んでもらって、
自分の世話をしてもらおうと思っている。

などと考えている場合には、
さっきの言葉通り、
貸してはならないといえるでしょう。

なぜならば、
家を借りた人には、
【借家権】という権利が発生するからです。

これは普通に何か「物」を借りるのとは、考え方が全く異なります。
有料老人ホーム等で主に採用されている【利用権】(明日解説します)と、
比較して頂ければ、違いがわかりやすいかもしれません。

≪比較ポイント①≫
家主からの解約には正当事由が必要。

つまり、よほどのこと(例えば建物倒壊寸前とか)がない限り、
借主が問題なく住んでいる間は、返してもらうことができません。
どうしても返してもらいたい場合は、高額な立退料が必要となります。

≪比較ポイント②≫
家主が変わっても、新しい家主に対抗できる。

あなたは、
「X」という家主から家を借りていたとします。
「X」は「Z」にその家を売りました。
どうやら買った「Z」は、あなたに出て行ってもらって、
自分で住むために買ったようです。

という場合でも、出て行く必要は全くありません。
あなたの【借家権】は新しい所有者「Z」にも、
同じように有効な権利だからです。

≪比較ポイント③≫
相続される。

あなたは娘と二人暮らしだとします。
自分名義で借りているこの家に、
自分が死んだあと、娘も引き続き住みたがっている。
どうしたらいいのだろう?

案ずることはありません。
【借家権】は相続されますので、
娘さんは、そのまま何もしなくても、
住み続けることができます。

と、ここまで聞くと借り手にとっていいことばかりですよね。

そうなんです。
むかしむかしは、地主さんの権利がとても強く、
借り手が困ることがたくさんありました。

そこで、借り手(借家人)保護のため、
1921年に「借家法」が制定され、
その後1992年に「借地借家法」へ改正され、
今なお【借家権】として、強い権利のまま存在しています。

ところが時代も流れ、
さすがにこのままでは、家主側もかなり不便であるということから、
2000年の借地借家法改正により、
【定期借家権】というものが導入されました。

【定期借家権】は、
期間を定め、
それを公正証書等の書面によって契約すれば、
契約の更新がない旨を定めることができます。

契約期間中は、
原則として、双方ともに中途解約はできません。
(賃借人のやむをえない事情での解約には、例外規定があります。)

ただ、この制度は認知度も低く、
手続きも煩雑なことから、
ほとんど普及されていません。

明日へ続く、

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契約に印鑑は必要?

2018-02-14 | 介護施設・高齢者住宅
『契約』は、
いつの時点で成立すると思いますか?

以前私は、地域の高齢者の集まりに訪問し、
「消費者被害防止」について1時間ほどお話しする、
という活動をしていたことがあります。

そのときに、必ず先ほどのクイズを出します。

①契約書にサインをしたとき
②契約書にサインをし、認め印を押したとき
③契約書にサインをし、実印を押したとき
④口約束でも、お互いの意思の合意があったとき

この4択で質問すると、
うまい具合に何人かはひっかかってくれます。

答えは④ですね。

当然です。
スーパーで卵を買うのも売買契約です。
そのとき、皆さんイチイチ「卵売買契約書」にサインをしますか?

というと、皆さん納得して頂けます。

民法では、
契約の当事者、いわゆる売り手と買い手は、
対等な立場として、とらえられています。

皆さんは卵の買い方を学校で習ったことがありますか?
そんなこと習わないですよね。

それでも、
スーパーへ行って卵を買うときは、
まず消費期限を確認し、
次に卵のパックをひっくり返して、卵が割れていないか確認する。
問題なければレジへ持っていく。
という流れを知っています。

人は普通に生活をしていると、
いろいろな知恵や知識を身につけていきます。

だから、売り手と買い手は対等。
よって、契約書なんていらないのです。
もし全ての売買に契約書が必要なら、
日常生活がスムーズに流れず、滞ってしまいますよね。

・・・・・
ちょっと待てよ・・・。
卵の話はわかるけど、
家を買うときは契約書どころか、
実印まで押して、印鑑証明書まで提出したけど・・・?

と思っている人がいるかもしれません。

その通りです。
スーパーでの買い物は先ほど説明したとおりですが、
世の中、そんな簡単な契約ばかりではありません。

家を買うのは、一生に1回あるかないか。

それ以外にも、
すでに介護が必要になった状態で、
始めて利用することになる介護保険。

また、
心の準備もないまま、いきなり訪ねてこられて、
知らない商品の説明を受ける訪問販売。

こういう場合も、売り手と買い手は対等といえるでしょうか?

もちろん対等とはいえず、
圧倒的に買い手が不利となるため、
何らかの保護をする必要があります。

そこで、これらの契約をするときには、
口約束だけではなく、買い手を保護するルールが設けられています。

家の購入の場合でいうと、
宅地建物取引士の資格を有する人間が、
必ず売買契約の【前】に、
書面にて『重要事項説明書』を『説明+交付』しなければなりません。

また、
介護保険利用の場合には、『介護保険法』が、
訪問販売の場合には、『特定商取引法』が、
それぞれ何らかのルールを定めています。

さて、これからお話ししていく
『サービス付き高齢者住宅』や『有料老人ホーム』

家は、
売るのも、買うのも、借りるのも、貸すのも、
専門的知識が必要となります。

日常的には、不動産屋が仲介し、
先ほど例示した宅地建物取引士が業務にあたっています。

ところが、
『サービス付き高齢者住宅』や『有料老人ホーム』は、
家であって、家でない側面があります。

まずは、
いわゆる不動産の取引との違いを知る上で、
最も重要な「権利形態」から、お話ししていきたいと思います。

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