情熱の薔薇

天幕旅団主宰:渡辺望が傾ける様々な情熱。

「2009年・総括」の情熱

2009-12-31 23:30:56 | Weblog
さて、あっという間の大晦日です。
終わり往く2009年を、ざばっと総括してみようかと。


◆1月 風太郎ぷれぜんつ『日曜日の田中さん』◆

2009年の幕開けは、コントで始まりました。
公演の記録写真を撮っていただいている風太郎さんのイベントに参加させて頂く事になり、昨年春の『キャノンボール』の中でやった「チョコレイト・ディスコ」のコントを抜粋して上演しました。
太田・加藤、そして僕の三人コント。15分、一回勝負のスペシャルコント。
周りはみんなミュージシャンばかりで僕らはとても浮いているような気がして、ものすごく緊張しましたが、蓋を開けてみれば、お客さんはみんなとっても温かく。笑いに包まれた素敵な時間を過ごせました。
普段、演劇の上演って、セット組んで照明吊って、場当たりして本番やって、小屋入りしてからものすごく時間がかかるものなんですが、こういう風なイベントへのコント参加とかは、なんというか手軽で小回りの利くものなんだなあと思ったりして。
稽古時間も短くて持ち運びの便利な「レパートリー」みたいな作品を持っておくのもいいなあと思ったりしたのでした。


◆2月 劇団SevenStars『燃ゆる暁に翳せ深紅の心』客演◆

昨年末の「西遊記」で振付をお願いしたタケの劇団。
とにかく若いカンパニー。そして、ものすごく人が多い稽古場でした。
今まで、何処へ行っても同い年もしくは年上の人達ばかりだったので、自分が年上というのがなかなかに珍しく。自分たちが彼らの年齢だった頃はどんな風に芝居を作っていたっけな、と考えることしばしば。
個人的には、稽古場に馴染むのにすごく時間がかかった記憶があります。
三ヶ月連続ヒゲ公演の第一弾です。


◆3月 Nudo『春の祭典』客演◆

「言葉」と「からだ」という事についてちょっと考えている時期があって。
で、そういうことを体現していて、前から興味があった劇団でした。
ここも、年下の演出家。集団自体は割と長いんだと思うのですが、やっぱり若いカンパニーだなあと思った次第。それは、作品の作り方しかり、演出しかり、制作面しかり。
演出家のやりたいことが100%舞台上に体現できているのかどうか。
役者の力不足なのか、演出家の導き方なのか。
どちらにせよ、それはとてももどかしい気がしたものです。
稽古場が、ものすごく遠くてひーひー言っていた記憶ばかりが残っています。
三ヶ月連続ヒゲ公演の第二弾。


◆4月 .comet『クロノランナー』客演◆

2月の舞台で出会ったほっしーの劇団。
殺陣やダンスがあるわけでもなく、特殊な身体表現があるわけでもなく、今までかかわってきたお芝居にしたら、かなりオーソドックスなお芝居に分類されるのではないかと思います。
脚本も最初から完本していて、純粋に、書かれていることをそのまま立ち上げていく作業なわけですが。
これがまあ、苦労した稽古場でした。
繰り返しになってしまいますが、役者の力不足なのか、演出家の導き方なのか。
どちらにせよ、それはとてももどかしいものなのです。
わりかし出番が少なくて、また、楽屋がとてもくつろげる場所だったので、ずーっとラーメンの本を読んでいました。
三ヶ月連続ヒゲ公演の完結編。


◆7月 笑劇ヤマト魂『Heavens~夜と夜と音楽~』◆

ヤマト夏興行は、本歌取りファンタジーの再演でした。
劇団として、ちょうど20回目の興行で、区切りという意味も込めて、今まで一番再演したかった作品をリメイク。
「不思議の国のアリス」をモチーフにした、ダークファンタジー。劇構造とか身体表現とか演出とか、今やってる事の原石がいっぱい詰まっている芝居で、ヤマトのファンタジー路線の原点とも言うべき作品です。
初演時はギリギリの状態で舞台に上げてしまったのでとても悔いが残っていて。脚本も演出も、リベンジマッチのつもりで臨みました。
客演は、ゆたか・祥ちゃんの常連組、二度目の登板の菊川ヒゲ先輩・みっきーロボ、公募からありさ姉さん、そして、黒アリス久保田。
厳選10人のキャストが、ひとり10役づつぐらい演じる、目まぐるしい舞台でした。
たくさん通し稽古を重ねて、たくさん推敲を重ねて作りました。
再演というものの意義を、とても強く感じた作品でした。


◆8月 ヘッジホッグマジックサーカス『ワンダーフォーゲル~Good-bye.Have a nice trip.~』◆

劇団を続けていると、運営とか集客とか色んな事を考えなくてはいけません。劇団とはそういう宿命にあるもので、それはまあ仕方のないことなのですが。
ただ、そういう諸々の細かい事を一度全部忘れて、ちょうど僕らが芝居を始めた頃のような、隅々にまで手が届くような規模での芝居がやりたいなと思ったのです。
ということで、個人ユニットを旗揚げ。
少人数小スペースで、極めて個人的なお芝居をやりました。
中野にある、Bloomという小さなバーにお世話になり、加藤と僕の二人芝居。(正確には、マスターもちょいだけご出演頂きましたが。)
ワンダーフォーゲルは、五年前にヤマトの番外興行でやった作品で、村上春樹の「ノルウェイの森」を元にした作品です。今年は、「1Q84」が出たりとか、ノルウェイも映画化が決まったりとか、春樹Yearだなあと勝手に思ってたりして。また、20代のうちにやっとかないといけない芝居だなあと思ったのでした。一日だけ、2ステージだけの公演。
当日の昼に小屋入りして夜は本番。あっという間。終わってみれば、チラシもないし、映像も写真も取り忘れていて。記憶のなかにだけ残る、幻で幸せな公演でした。


◆10月 .comet『キャサリン・ザ・トリックスター』◆

4月に出たほっしーの劇団に再び。
魅力だったのは、転換なし、ワンシュチエーションのコメディだったということ。
普段、自分のところでやってる芝居からして、場面も時間軸もポンポン飛ぶし、なんなら複数役やったり、無生物までやったりするので、最初から最後まで同じ役で、実時間と同じ時間の流れをお客さんと共有するって事が今までなかったのです。こんだけ演劇やってて、そういう芝居に一回も出てないというのも、どうかと思いますが。
やはり、やってみるとシュチエーションコメディってすごく難しくて、お客さんと共有する空気とか時間とか、ものすごく緻密に操作していかなきゃいけないのだなあと思ったのです。何かひとつ取りこぼしたら、そこから全部崩れていくような。とってもデリケートなもので。それは、役者個々でどうにかできるものでは決してなくて、チーム戦で作っていかなきゃいけないものなのです。
そういう諸々を含め、「演出」という作業はとても大事なのだなあと改めて思ったのです。
僕もいずれ、シュチエーションコメディの演出に挑戦してみなくてはなあと思ったり。
個人的には、茶髪が意外と好評だった芝居でした。


◆12月 笑劇ヤマト魂『ヤマト版 仮名手本忠臣蔵』◆

一年の締めくくりは年末大歌舞伎。
前に、『四谷怪談』をやったときに、いずれ『忠臣蔵』にもチャレンジしてみたいな、と思って温めていた企画がついに実現しました。
ほとんど一般常識かの如く語られる『忠臣蔵』の物語が、その実、「何故刃傷事件が起こったのか」という肝心の部分が全くの謎のままだという事が、最大の焦点でした。
そこには、「元禄赤穂事件」という史実と「仮名手本忠臣蔵」という虚構が、長い時間をかけて語り継がれる中で、ない交ぜになってきてしまったという歴史があるのです。
そんな歴史の綻び(=行間)から、物語を紡いでいきました。
「虚」と「実」を繋ぎ合わせる役目として、作家(=竹田出雲)を登場させ、そしてそれを僕自身が演じるという所で、さらに現代ともない交ぜにしていくという趣向でした。
作家が作家役を演じるというのはどうにも恥ずかしかったりも。。。
出演者は、ヤマト史上最多の15人。
連投組は、流石の貫禄・菊川ヒゲ先輩、ゆたか・祥ちゃんペア、みっきーちゃんこ、良妻ありさ。久々組は、一年ぶりのケンケン丸、実に三年ぶりのまこと先輩。初参加組は、梶川ほっしー、堀部アシベ、お軽ひめ、主税しみー。
脚本がとにかく難産で、ホントに危ない橋を渡りました。多方面に迷惑をかけ、いっぱい凹んでいっぱい反省をしました。
中野ザ・ポケットに初進出。千秋楽、カーテンコールで拍手が鳴りやまなくて、初めてダブルで出ていった時の事は、多分一生忘れないと思うのです。とても小さな一段だけれど、よいしょっとひとつ登ったような気がした公演でした。


そんなわけで、
劇団公演が2本、プロデュースが1本、客演が4本、コント1本。
ちょっと詰め込みすぎの一年でした。

来年は、ちょっと趣向を変えて。
今までにない事にチャレンジしていく一年にしたいなと思っています。

本年も、笑劇ヤマト魂をご愛顧くださいまして有難うございました。
お客様あってのヤマト魂です。
来年も、お客様にお楽しみ頂ける作品を作る事が出来るよう、
より一層精進してまいる所存です。

今年も一年、ありがとうございました。
よいお年を。

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