さて、大晦日です。
2012年も、あっという間に過ぎて行きました。
去年もこんな風に年の瀬を迎えていたなあと、ふと。
年々、時が過ぎ行くのが早くなる気がするのです。
今年も、何本かお芝居やりました。
誰かに発信するというよりは、忘れっぽい自分のための備忘録。
★4月 空想組曲「深海のカンパネルラ」★ 演出助手
また今年も、空想さんに関わらせて頂きました。
演助につかせてもらうのも回を重ねてきて、少しづつスタンスがわかって来たというか。
作品にのめりこみすぎずに、一歩置いた感じでいた方が色々と上手く回るのだと、なんとなく。
素敵な役者さん達が、目の前で作品を作り上げていく現場に立ち会えるのは、ホントに贅沢。
今回は、代役に入って稽古することが多くて、なんだか緊張したような気がします。
あ、そうだ。誕生日の役者さん(演出も)が多くて、サプライズを考えるのが大変でした。
毎度、ケーキを調達して、稽古場の最寄のケーキ屋さんに詳しくなりました。
★7月 天幕旅団「僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪」★
脚本・演出・出演
天幕旅団は今年、メンバーが増えました。
僕と、加藤晃子の二人で始めたユニットでしたが、
♯4から新たに、佐々木豊と渡辺実希が加わりました。
去年の「SUPER☆STAR」が終わってからしばらく、
天幕旅団がこれからどういう方向に向かっていくのかを思案していて。
これまで、笑劇ヤマト魂でやって来たこととは違う方向性を目指していくために、
新たなメンバーを迎えることにしたのです。
新生・天幕旅団として初めての作品ということで、四人だけで作ってみることにしました。
新しい天幕旅団が目指すのは、削ぎ落として最後に残るもの。
今まで、過剰に派手に、色々付け加えて着飾っていく作り方をずっとしてきたのですが、
逆に、くっついているものをどんどん削ぎ落としていく作業。
要るか要らないかを選択して、本当に要るものだけを残していく作業。
「物語を伝える」というシンプルな事象だけにフォーカスして作品作りをしようと思ったのです。
SPACE雑遊というこじんまりとした空間で、
セットは大きなテーブルと四脚の椅子だけ。
真っ白い床と真っ白い衣装。
小道具は紐だけ。それを色んな使い方で見せていく。
まな板の上に、役者という素材を乗せて、じっくりと素材の味を堪能してもらえたら、と思いました。
奇しくも、白雪姫ブームな今年でしたが、
この題材にしたのはホントに偶然。
7人のコビトと白雪姫の恋の物語を、いつかやりたいなあとずっと温めていたのです。
とても長いタイトルは、クラムボンの「Sooo,quiet」という曲からのインスパイア。
歌詞の中に、「僕の中にある、quiet、quiet」という言葉が、
ぐるぐるとイメージをつれてきてくれました。
この作品は、なんだか本当に、自分の中の「転機」になったような気がするのです。
今まで、「何かが起こること」がドラマだと思って脚本を書いて来ましたが、
「何も起こらないこと」「続いていくこと」「暮らしていくこと」こそがドラマなのだと、
そんな作品になったような気がしています。
実希の白雪姫の、真っ白な美しさと純真さ、
豊の女王様の、悲劇性と熱量、
さぶろうのコビトの、一人七役(?)という超人技の確かな表現力。
収穫がいっぱいありました。
天幕旅団としての、エポックメイキングな作品になったような気がするのです。
★10月 Growth with Laugh「Cellaur Storys」★脚本・演出
プロデューサーの麻里さんからこのお話を最初に聞いたのは、2011年の2月ぐらいだったと思うのです。
それから件の震災があって、今年の秋にやっと実現しました。
「カえるくんのたからもの」という一冊の絵本を渡されて、
これを芝居にして欲しい、というオーダーでした。
ホントに短い、所謂童話なのですが、この絵本を縦糸に、
「不思議の国のアリス」を横糸に絡め、携帯電話をキーワードにしたオムニバスファンタジー。
普段、お芝居を見ないお客さんが多いということで、難しくなくて明るく楽しいもの、を目指しました。
ダンスと芝居のコラボ、という企画。
芝居なんてしたことない、というダンサーさん達との作品作りは、結構刺激的でした。
役者さんの台詞って、やっぱりどこか垢がついてしまっているというか、
どこかに嘘が混じっているような気がします。
ダンサーさんの吐く純粋で正直な台詞に、うっとりしながら稽古しました。
20人以上の大所帯での芝居作りは、やっぱり迫力がありまして。
夏に4人芝居をやったばかりだったのでその反動も大きかったのかも。
いつか、大人数の芝居も作りたいな、と強く思いました。
★12月 天幕旅団「弔いの鐘は祝祭の如く」★脚本・演出・出演
そして、年末興行。
ちょうどクリスマス真っ只中の時期に劇場を予約していたので、
ひとつクリスマスらしい作品をやりたいなあと思いました。
夏に、新生・天幕旅団の第一弾を作って、さて次はどういうものを作ろうか、と。
いつかやりたいと思っていた「クリスマスキャロル」の企画。
スクルージという主人公の老人を演じてもらうのならば、
菊川仁史さんしかいない、と思っていました。
0歳から90歳まで、人間の一生を一人で演じる難しい役。
何度も何度もオファーをして、引き受けて頂いてようやく、この作品は形を成し始めました。
個というよりは、天幕旅団という4人の総合力を何か形にして提示したいと思い、
菊川仁史×天幕旅団、みたいな構図の作品にしようと思って作りました。
「死」というものとこんなにちゃんと向き合ったのは、初めてだと思います。
今まで、どこか「物語の中の死」という絵空事でしか考えていなかった自分が居て。
それを、「自分の死」としてきちんと向き合ってみたのです。
それはとても痛くて辛くて、切実なドラマなのだと思うのです。
アイデア出しの為に見た、アルバート・フィニーが主演している
1970年の「クリスマスキャロル」の映画の冒頭で、真っ暗な画面の向こうで、
鐘の音が狂ったように鳴り、そしてタイトルロールが始まります。
その、音が耳から離れなくて。
そしてこの映画で、未来の場面でスクルージの葬式のシーンがあります。
街の人々が、スクルージが死んだことを祝って、街を歌い踊り行進します。
その、祝祭的な怖さ。
弔いと祝祭の共存する、寒い寒い冬の朝のイメージから、作品を紡いでいきました。
金の音。
服を重ねること。
棒を見立てること。
色んなアイデアを稽古場で試行錯誤して。
スタッフさんからもいっぱいアイデアをもらいました。
7月の白雪姫で見えた、天幕旅団としての「色」みたいなものは、
この12月の公演を経て更にはっきりと浮かび上がったような気がしています。
2012年は、「転機」と思っています。
天幕旅団で発表した2本の芝居は、これからの作品作りに、大きな影響を与えると思うのです。
もっと、深く、濃く。そう思ってます。
さて、来年はまず7月。
中野ザ・ポケットでの本公演です。
夏だし、大きめの劇場だし。
爽やかな、海洋冒険ファンタジーとかいいなあ、と思っています。
あくまで、今のところは、ですが。
そして、冬にも一本、なにかやれたらいいなあと思ってます。
今年も一年、お世話になりました。
来年も、天幕旅団を宜しくお願い致します。