情熱の薔薇

天幕旅団主宰:渡辺望が傾ける様々な情熱。

「回顧・2014」の情熱

2014-12-31 14:52:07 | つれづれに


書こうかなと気が向いたら書こう、と思ってるとホントに書かない。
ええと、元気です。
先日の「夜よ、水際に揺らぐノートルダムの夜よ」無事終わりました。
なんだか今更です。


そんなわけで、大晦日。

今年は冬の公演の時期が早かったので、
12月をじっくり過ごしたような気がします。
年の瀬へと徐々に加速していく街並みをぼんやりと見ながら、
なんだか色々と考え事をして。

先の事については頭の中でぐるぐる考えてみたりしたので、
一年の終わりにあたって、ここでは今年の事を思い出しておこうと思います。
終わったことには急に興味がなくなってしまう性分なもので、
台本もチラシも、千秋楽を迎えたらすぐに捨ててしまう。
ホントに、終わったそばから忘れていってしまうので、
こういうところに記録しておかないといつか思い出せなくなってしまうのでは。
とか、そんなことを考えながら、回顧・2014。
忘れっぽい自分のための、備忘録。


★3月 THE TRICKTOPS『東 京〈reprise〉』★ 出演

一本目は客演から。
2014年始まってすぐぐらいで顔合わせがあって、そこから丸二ヶ月とちょっと、
この公演はずいぶん長いこと稽古していたなという印象があります。
本番近くなってもきちんとオフの日があったので、
実際の日数的はそこまで稽古回数が多いわけではなかったし、
自分のとこの芝居はもっと長い期間で作ることもあるのですが、
この作品はなんか、とにかく長かった印象。

昨年にsmokersで共演したご縁で誘って頂き、若いカンパニーに参加しました。
年下の演出家と作品作りをするのはあまりなかったので、新鮮でした。
そもそも、年下が多い稽古場では居方というか、ポジションをどうとるか、
なんかこっそり色々考えていたような気がします。

「マグノリア」とか「ラブ・アクチュアリー」とか、
群像劇というか、所謂グランドホテル形式の映画が大好きなので、
演劇でそういう作品に関われるというのは嬉しかったです。

駅を舞台にした芝居だったのですが、
ホームで電車をずっと待っているというシーンがあって、
それが結構長かったので、集中力を切らさないように、と、
客席を端から端まで観察していました。
お客さんはこういう時にこういう反応をするのか、とか、
じっくり見れて、すごく勉強になりました。


★5月 Hedgehog Magic Circus『凍てつく森のカノン』★ 脚本・演出

結構、急に決まった企画でした。
前々から、加藤晃子ひとり芝居をやりたい、とはずっと思っていたのですが、
スケジュール的なものとか色々考えていたら、
「今ぢゃないの?」みたいな話に急遽決まって。
んで、急いで場所を押さえて。
立ち上げから本番まで、一ヶ月ちょっとだったのではないでしょうか。

久しぶりのヘッジホッグマジックサーカス。
実に、5年ぶりに復活した僕の個人レーベル。
今回は、加藤晃子ひとり芝居。

歌を歌う芝居が作りたいなとずっと思っていたのです。
んで、作品の内容とかは一切考えずに、
劇中で歌ってもらうならこの曲がいいな、みたいな候補曲だけいくつかあって。
その中で、戸川純さんの「蛹化の女」という曲を、
前々からいつか劇中で使いたいと思っていたのです。
有名な、パッヘルベルのカノンに歌詞を載せて歌う、素敵な曲なのです。

お借りした、アンティークスタジオみのるという場所は、
ウチの近所にある喫茶店なのですが、
中に入ってみたらまあ、ホントに素敵な空間なのです。
少し軋む階段を上っていくと、洋館の一室、みたいな場所が広がっています。
世俗から切り離された場所というか、異世界というか、
空間がすごく雰囲気を持っていて。
この場所にはどんな作品、どんな音楽が合うだろう、と考えて、
やっぱりクラシック曲だろうと思ったのです。

だったら、「蛹化の女」だろうな、と。
空間と、音楽と、二つが結びついて、
『凍てつく森のカノン』という作品が立ち上がっていきました。

古い洋館にずっと住んでいるひとりの女。
加藤晃子には、子供から老人まで、
長い時間をぎゅっと60分で演じてもらいました。
ひとりきりでその間ずっと舞台上に存在し続ける彼女の姿、
喋り、歌い、笑い、泣き、演じ続ける集中力は、流石だなと思いました。
彼女の目線の先にいつも居る父親の存在。
人生の節目節目で、その父親を想って歌う、「蛹化の女」。
不思議な手触りのする、愛おしい作品でした。

客席数も少ないし、1日のみ、2回だけの公演でしたし、
記録映像も撮っていないし。
ホント僅かな人しか目撃できていない幻の公演でした。
まさに、見た人の心の中にだけ刻まれる、
幻の曲馬団、ヘッジホッグマジックサーカス。
次はいつあるのでしょうか。いずれ、また。


★7月 天幕旅団『Heavens~夜と夜と音楽~』★ 脚本・演出・出演

天幕旅団の夏興行は、「Heavens」。
笑劇ヤマト魂で2003年に初演、2009年に再演、初演から10年以上、
今回は、3演目でした。

再演をする作品には、その瞬間で再演をする意味があって。
この「Heavens」という作品に関しては、
再演を重ねるべき作品だなあとなんとなく思っておりまして。
んで、天幕旅団バージョンとして再演をするんだったら、
何ができるだろうかと考えました。

一番最初にこれを書いた時には、
ロードムービーみたいな芝居がやりたいと思っていたのです。
「トゥルーロマンス」とか、すごく好きで。
長い道のりを旅をしていく話、
道中、色んなところで色んな人が現れては去っていく、みたいな。
場面がどんどん変わっていって、
役者達が入れ代り立ち代り、何役も演じていく、そんな芝居。
初演の時は8人、再演の時は10人で上演したこの作品を、
今度はメンバー4人だけでやってみようと。
加藤が4役、実希が4役、豊が6役、んで僕は7役。
どうしたら混乱せずに見てもらえるか、知恵を絞りました。
実希デザインの小さな人形達を使って、
くるくると場面が変わっていく、
ロードムービーならぬロードシアターを作りました。

そして、もうひとつ挑戦が、舞台の形。
近年の天幕旅団は、多面舞台をずっとやり続けておりまして、
これはまあ、色々と理由はあるのですが、
なんというか、客席と舞台の境目を曖昧にしたいという思いがあって。
んで、この「Heavens」再々演では、いままでずっとやってみたかった、
プロレスのリングみたいな、完全四方囲みの舞台を作りました。
どっちを向いてもお客さんが居るし、
お客さんのすぐ近くまで降りていって芝居をするし。
客席の反応をダイレクトに受け取れて、すごく楽しかったです。

この「Heavens」という作品は、
自分の中でもやっぱりちょっと特別な思いがあって。
上演するたびに、物語の中に色んな発見があるし、
演出としても、アイデアというか手法というか、
こういうこともできる、という発明が出てくる。
毎回ハードルを課してくるみたいな、不思議な作品です。
また、数年後に再演をしたいなと思うのです。
きっとその時には、全然別の演出になっているような気がします。


★10月 Performance Unit S4U『葬儀屋クミちゃん ~楽しいこの世の別れ方~』★ 出演

ヤマト魂の時代からお世話になっている、舞台監督:吉田さんのユニット。
その記念すべき旗揚げ公演に参加させて頂きました。

僕が演劇を見始めた頃、高校生の頃なのでもう、相当前ですけれど。
思い返せばその頃は、劇場に「笑いに」行っていたような気がするのです。
そういう劇団を好んで見に行っていたんだと思うのですが。
面白い=笑える、というような。とにかく、よく笑っていました。

んで、このS4Uの作品は、すごく懐かしい肌触りがして。
とにかく、面白いことを詰め込んでいくようなお芝居。
稽古中にずっと言っていたのですが、「チャンピオン祭り」みたいな、
面白いヤツが勝ち、という現場だった気がするのです。

とはいえ、近年の僕も天幕旅団も、
笑い、というモノからちょっと距離をとっていて。
苦手意識とまでは言わないのですが、笑いはとにかく難しい、と思っているのです。

そんなわけで、結構ドキドキしながら稽古していたような気がします。
とにかく台本の隙間を見つけて、そこを膨らましていく作業。
役者の自由にやらせてくれる分、責任は自分にあるわけだし、
ずーっと、大丈夫かなあ、と思いながらやっていました。

あ、そうだ、久々にダンスとかあって、それも緊張しました。
もう随分、踊りなんていうのもやっていなかったので。

なんだか、祭りみたいな、楽しい公演でした。


★12月 天幕旅団『夜よ、水際に揺らぐノートルダムの夜よ』 脚本・演出・出演

んで、冬興行は、新作。
ヴィクトル・ユーゴー「ノートルダム・ド・パリ」の本歌取りでした。

去年の冬にピノキオをやって、実希にセンターを任せたので、
今度は豊をセンターに据えて一本やろうと思っていました。
で、どんな作品があいつに合うか、と考えていて出てきたのがこの企画。
カジモド、という醜い鐘撞きの役でした。

原作の「ノートルダム・ド・パリ」は、
ディズニー映画の「ノートルダムの鐘」で有名ですが、
映画と原作は、かなり違います。
原作はホント、かなり暗くてドロドロとしていて。
登場人物もたくさん出てきて、長い物語なのですが、
隅の隅まで何度も読み返してみて、取り出して来た核は、
カジモドとエスメラルダ、どこにも居場所のない二人の、純愛の物語でした。
思えば、「純愛」なんてちゃんと銘打ってラブストーリーを書いたことなくて。
そういうの、どうしても照れてしまって、今までやってこなかったのですが、
一回ちゃんと向き合ってみようと思ったのです。

最近、公演を打たせてもらっているSPACE雑遊には、地下の部屋があって、
その機構を使った作品を作りたいなあ、とずっと思っていました。
今回、ノートルダム大聖堂を舞台にするならば、
長い階段を上に上に上ってくる必要がある、と。
それならば、地下から続く切り穴を使って、
大聖堂の上に上ってきたという雰囲気が作れるのではないか、と。
そういうわけで、舞台上に穴が二つもあいている、不思議な舞台装置になりました。
その周りで、喋ったり走り回ったりしていたのですから、結構危ない。
常に緊張感のある芝居でした。

久しぶりに客演さんを招いて6人芝居。
天幕旅団では3回目の出演、牧野ななわりさんと、
WSからの初参加、小田本亜莉紗嬢。
年齢も上手いことバラけていて、バランスのいい座組みだった気がします。

豊の演じるカジモドは、耳が聞こえないし喋れない、という役。
どう他者とコミニケーションをとるんだ、と頭を悩ませました。
でも、豊のピュアな部分というか、正直なところが舞台上にちゃんと載って、
当たり役だったなあと思うのです。

実希のエスメラルダは、ジプシーの娘。
優しさと、強さと、きちんと持っている女性。
強さ、という部分を表現できるようになってきたので、
成長したなあと思うのです。
あ、あと、歌も歌ってもらいました。
劇中で歌う、「ラストダンスは私に」。耳に残る歌でした。
歌は、今後も入れたいなあ。

さぶろうのヒューゴは、石像。
オープニングからラストまで、穴の中でじっと動かない。
天幕芝居では今までそんなキャラクターなかったので、すごく新鮮でした。
不安定な脚立の上にずっと立ってるので、体力的にはすごくキツい。
けどそれが、お客さんから見えないので、辛そうには見えないのでした。
しめるところをしっかりしめてくれるというか。
物語をきちんと支えてくれる、流石だなあと思ったのでした。

今までは、どれだけ詰め込めるか、どれだけ過剰にするか、
をずっと考えて芝居を作っていた気がするのですが、
近年は、どれだけ削ぎ落とせるか、どれだけシンプルにできるか、
を考えて作品を作っています。
物語を客席に渡すこと、それが大命題であって、
そのために何をするか、余計なモノと必要なモノを選別する作業。
そういう演出、そういう稽古をしているのです。
この、「ノートルダム」は、ある種その作り方の、
ひとつの形だという気がしています。

台本がとても遅れて周りにたくさん迷惑をかけましたが、
出来上がったモノはとても心地よい肌触りの、
素敵な作品だったような気がしました。



というわけで、2014年。
新作を2本、再演が1本、客演で2本、やりました。

来年は、天幕が7月と12月。
それ以外でも、春ごろに1本やりたいなあ、と考えていたりします。
そして、役者として客演もしていけたらなあと思っております。

本年も、天幕旅団をご贔屓頂きましてありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

!最新興行情報!(固定)

2014-12-02 00:00:00 | お知らせ
天幕旅団♯9
よ、水際に揺らぐノートルダムのよ」

声が、聞こえた気がした。涼やかな君の、歌声が。
それは静寂の遥か、深き闇の彼方、包み込むように微かな調べ。
十六夜に揺らぐ灯火は、今にも零れ落ちてしまいそうで。
掬い上げてはさらさらと、儚に崩れてしまいそうで。


        鐘をつく、その、手を止めた。君の声を聞くために。

天幕旅団♯9は、暗闇から浮かび上がる悲劇。
灯火のようにゆらゆらと、漆黒の帳に浮かんで消える、光と闇の幻想演劇。

ヴィクトル・ユーゴー「ノートルダム・ド・パリ」を天幕芝居に本歌取り。
初冬のSPACE雑遊に、15世紀パリの鐘が鳴り響く!

それは、百年に一度のカーニバルの日。
祝祭と喧騒の渦の中、閉ざされた聖域で二人は出会う。
大聖堂に住む鐘つきのせむし男と、ジプシーの踊り子、
二人の行く末はまるで、セーヌの流れに揺らぐ満天の星空、
水際に深く、深く沈んでやがて、消える。

終わらない夢の物語。天幕版 純愛ファンタジー。


<作・演出> 渡辺望
<出演> 加藤晃子 佐々木豊 渡辺実希 渡辺望(以上、天幕旅団)
     牧野ななわり 小田本亜莉紗

@SPACE雑遊

2014/11/28(金)~12/1(月)
11/28(金)      19:30
11/29(土) 15:00 /19:00
11/30(日) 11:00 /15:00
12/ 1(月) 15:00★/19:00       (全7ステージ)

前売3000円・当日3300円
平日昼割2500円(★の回・前売当日共)
高校生以下2000円(要学生証)

2014年10月11日(土)10:00~ 前売開始予定!
PC:https://ticket.corich.jp/apply/59578/002/
mobile:http://ticket.corich.jp/apply/59578/002/