のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

ジイジと北斗(新スケール号の冒険)43

2022-11-20 | ジイジと北斗(新スケール号の冒険)

(47)-2

 

黒龍が悲鳴とも雄たけびともつかない声を響かせてそのまま大空に舞い上がったのです。

女の子の剣は黒龍の首筋にあるウロコの隙間に食い込み、剣もろとも空に舞い上がりました。

黒龍の首は女の子が三人がかりで一周できるほどの大きさで、上空に舞い上がった姿は、手足の生えた大蛇そのものだったのです。

風に逆らいながら女の子は大蛇のたてがみをわしづかみにして身を立て直し、剣を再び黒龍の首に突き立てました。

黒龍は真っ赤な口を開けて火を吐き、暴れまわって女の子を振り落とそうと空をうねるのです。

ところが女の子は龍のたてがみを手綱にして、暴れ馬を制するように身をこなし、龍の首に第三の太刀を深々と首に突き刺しました。

「ぐぐぐおーー」

黒龍は突然頭を下にして急降下を始めました。そして一直線に頭から湖に突っ込んでいったのです。

大きな水の音が響き湖面が揺れ、そして再び鏡の水面に還っとき、湖面に丸く霧の穴が出来ました。

「ピユー」

その丸い穴の中央から女の子の顔が浮かび上がりました。

女の子が高い喉笛を鳴らしたのです。

その水面下には真っ赤な口を開いた黒龍の顔がぐんぐん近づいてきます。

女の子はとっさに身をよじって龍の口から逃れ、顔を出した黒龍の角をつかみました。

ザザザザッと再び天に上る龍にしがみついて女の子は黒龍のたてがみを伝いながら首に刺さった剣を取ろうとしました。

しかしその時、龍の身体が大きくうねったのです。

長い龍のしっぽがうねりに合わせてしなり、首筋にしがみつている女の子の身体を薙ぎ払ってしまいました。

まっすぐ落ちる女の子を追って、龍が再び急降下し始めました。

龍は渦巻きになって推力をつけると、女の子はついに空中で黒龍の爪に捕らえられてしまったのです。

黒龍は霧の湖面にとぐろを巻いてその中に女の子を巻き取り雄たけびを上げました。

そして歓喜のためか怒りのためなのか、中空に向かって勢いよく炎を噴き上げるのでした。

鎌首を持ち上げ、勝ち誇ったように女の子を見下すと、ぎりぎりと体躯を締め上げました。

口が真っ赤に裂け、女の子を呑み込もうと頭を下げたのです。

 

「いやぁー!」

 

女の子は虚空に手を伸ばし、最後まで戦う意志を持って抵抗の姿勢を崩しませんでした。

まさにその時だったのです。

突然黒龍の頭上が白く輝き始めました。

そしてその光と共に白い剣士が姿を現わしたではありませんか。

剣士の頭上に差し上げられた白い剣が切っ先から光を放っているのです。

真っ白なローブで全身を包んだその剣士は黒龍の頭上に仁王立ちになって、天上に剣をかざしているのです。

天に向けた切っ先からエネルギーがほとばしるように白いオーラが立ち上がりました。

白い剣士はその剣を逆手に持ち替えると、黒龍の頭上めがけて渾身の力を込めて突き刺したのです。

「ぐぐぐぐぐおーーー」

黒竜の身体が激しく揺れました。

剣の白い光が黒龍の頭に吸い込まれるように消えると体を痙攣させてもがき始めました。

女の子を巻き取っていた胴体が緩み長々と脈打ち身もだえすると、湖に身を隠しました。

とっさに白い剣士は跳躍して首筋に突き立っているピンクの剣を引き抜くと両手に剣を持って黒龍の背中を切り裂いたのです。

黒龍の消えた湖面に、投げ出された女の子が横たわっていました。

白い剣士は女の子に駆け寄り助け起こすと、黒龍の消えた湖面を睨み据えました。

しばらくして剣士は剣を納め、ピンクンの剣を横に置くと、女の子の胸に手を置いたのです。

するとピンクのローブに沁みた黒い血が少しずつ消えて行くのでした。

「あ、あなたは?」

女の子が白い剣士の腕の中で気を取り戻したのです。

「龍、龍は?。」

白い剣士は無言で湖面を指さしました。

「逃げたのか。また来る。戦わねば。」

女の子はそう言うと身を起こして自分の手を見、腰を探って、探す目を周囲に向けました。

白い剣士がそんな女の子の前にピンクの剣を差し出しました。

「あ、ありがとう。これを探していたの。」

そう言って剣を受け取ると、女の子が真顔で言いました。

「どうして私を助けてくれたの?あなたは誰なのです?」

「はぶはぶ、うきゃー」

「ええっ・・・」

「うーばぶー、うばうばハブばぶ」

そう言って白い剣士は女の子に手を差し伸べたのです。

二人は肩を並べて湖面に立ちました。

さらに濃くなった霧が毛嵐となって二人の腰まで隠して漂っています。

その毛嵐を通して湖面に二つの赤い色が見えました。

その赤い光が左右に動き、二人をとり囲むようにゆっくりと大きな弧を描き始めたのです。

二人は手を取り合ったまま背中合わせになって立ち、互いの剣を天にささげました。

二人を中心にした大きな二重円が毛嵐の湖面に描かれました。

二重の赤い円がゆっくりと、呼吸を合わせるように点滅し始めたのです。

 


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