
「警備隊だって。」
「とにかく奴らには気をつけるんだ。下手をすると、この世から形を消されてしまうぞ。」
「分かった。」
「じゃあな。」ユングはそこだけはっきりした声で言うと引き返した。途中で踵を返して振り返り、手を振って叫んだ
「きっと皆で遊びに来るんだぞ。」
「また後でな。」バックルパーは手を振ってこたえた。そのとき、ユングの背後に人影が見えて、消えた。
何もなかったように、バックルパーは歩きだした。つけられている。この世界に侵入したことが知れたのだろうか。バックルパーは懐から小さな袋を取り出して白い粉をつまんだ。それを薄くなったあたりに擦り込んだ。
「怖い、」
「大丈夫だ。心配は要らない。それより普通にしているんだ。後ろを見てはいけないよ。」
「うん、」
しかし、結局何もなかった。ユングの思い過ごしだったのかもしれない。それからずっと、つけられている気配はなかったし、見通しのよいところで、何げないふりをして周りを見回しても、怪しい人影はなかった。諦めてどこかに行ったのかもしれない。やがて二人は家に着いた。
玄関の踊り場に安楽椅子があって、そこに骸骨が座っていた。日当たりのいい場所で、居眠りをしているらしい。二人が近づくと、骸骨は目を覚ました。そしてびっくりしたように立ち上がった。骨がギシギシ鳴った。
「お前は、もしや、バックルパーでは。」
骸骨は骨をガクガク鳴らしながらバックルパーに歩み寄って来て、そして言った。ヅウワンの母親に違いなかった。
「お義母さん。」バックルパーは骸骨の手を取った。
「おお、やっぱり、お前だったのね。」骸骨の眼窩から涙があふれていた。
「お義父さんはどうしています。」
「仕事に出ているんだよ。」
「そうでしたか。」
「お前はどうしてここに、何があったのだい。この前はヅウワンが来たし、向こうでは何か大変な事が起こっているの」
「いえ、この子が母親に会いたいと、ヅウワンに会いに来たのです。」
「ヅウワンは中にいますよ。それでこの子は。」
「エミーと言います。私達の子です。」バックルパーはエミーの肩を抱いて言った。
「そう。そうだったわね、私達の孫だったわね。」骸骨はエミーを見た。
エミーは黙ったままお辞儀をした。
「かわいい子だね。ヅウワンにそっくりだ。あれも喜ぶよ。」
「では、」そう言ってバックルパーは家の中に入って行った。エミーは入り口で戸惑っている。
「どうした。」
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