改札を通ると、私の前にも後ろにも列が出来ていた。自然に順番を待つことになったのだが、見ると前のものは順番に手荷物を取られて腰の高さのベルトコンベアーに乗せられていた。
その様々な荷物達はまっすぐに進んで、魚の口が開いたような穴の中に次々と吸い込まれていった。
その光景は私の頭の中で、里依子を待ったあの到着ロビーの、ベルトコンベアーを流れていく荷物達としっかりつながるのだった。
「ここで渡すのか。」私は心の中で大声を上げて合点した。そう理解すると、私はつい身構えてはやる心と気負いを覚えた。
私は自分の番がやってくると、弾かれたように荷物を係員に差し出した。係員は無造作にそれをベルトコンベアーの上に乗せた。
緊張してそこを通り抜けると、今度は突然すぐ目の前に制服の男が現れた。男は
「ボディチェックです。」と言ったかと思うと、すぐに私に手を伸ばしてきた。
びっくりしたものの、私はその言葉を聞いて咄嗟にその状況を理解した。
私には不測の事態にあっても、一つのきっかけさえあれば俊敏に判断を下す能力があった。つまり私はその瞬時に、度重なるハイジャック事件のことを思いお越し、それは未然に防がなければならないと考え、更に西部劇で保安官が悪人にピストルを突きつけてボディチェックをする場面を思い出したのだった。
それは私の刹那の理解であり、係官がボディチェックですといい終わるや終わらないうちに私は、自分の両手を高々と持ち上げたのである。
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