私は自分に余裕のあるところを見せようと思い、出来るだけゆっくりとした足取りでトイレに入った。その動作は私の意識に中につまびらかにあって、私は自身が演者でありながら同時にそれを観るものとして、動かす指先のその先端まで見ているのだった。
トイレの中はごみ一つなく、必要以上に磨き込まれた室内に清楚な便器が並んでいた。私は心までも清められてしまいそうなトイレをこれまでに見たことがなかった。便器の前で用を足すのにふと罪悪感を覚えさせるようなそんな白さが私を戸惑わせるのだ。それはたとえば、王侯貴族の部屋に立たされ時に感じるであろうような、気後れに違いなっかった。
落ち着かない気持ちのままそこを出て、私は中央改札に向った。
チィケットを示すと、入り口に立った係官は表情を変えずに一瞥しただけで私を通した。
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