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世界はやがてジャパネスクの時代を迎える(非公式)

「日朝接近」で戦後総決算を行う北朝鮮の真意

2014-07-25 | 北朝鮮
2014年07月24日(木) 原田 武夫
Photo by GettyImages

「北朝鮮についてはどう思うか? 正直、もうどうしようもない状況になっているのではないか」

今から1年ほど前のことだ。都内にある大きな森の中にある邸宅で、私の正面に座るある人物はこう切り出した。事柄の性質上、それが誰か、その内容が何かを詳らかに述べることは出来ないが、その言葉は私の脳裏に深い余韻を残した。

北朝鮮の巧妙な交渉戦術

そして今。安倍晋三政権は北朝鮮に接近している。「日本人拉致問題」について再調査をするとの北朝鮮側からの約束を取り付け、いよいよそのために北朝鮮側の設置した委員会の陣容が明らかにされたのだという。そして政府当局が行うブリーフィングに従ってであろう、マスメディアはこう書き立てている。

「今回の再調査に際して北朝鮮は本気だ。なぜならば秘密警察として恐怖政治を支えてきた国家保衛部の要人が参加しているからだ」

これを読んで私は余りのナイーヴさに苦笑した。おそらく東西冷戦の真っただ中であればこんなことを書く記者はいなかったであろう。東側の共産体制において独裁は当たり前の現象であり、そこでは「国家」が行う行為のすべては結局のところ独裁者ただ一人の意思によるものだったからだ。東側諸国はあれやこれやと違う顔の交渉当事者を出してはきた。だが、それらは結局のところダミーに過ぎず、演出なのである。

北朝鮮についてもまったく同じことだ。2004年11月、私は藪中三十二アジア大洋州局長(当時。後の外務事務次官)が率いる日本側代表団の一員として平壌に滞在した。日本人拉致問題についての調査結果を北朝鮮側から聞くためだ。その時、北朝鮮側は次のように繰り返し述べたのである。

「拉致問題を管轄しているのは特殊機関だ。特殊機関はその性質上、自らが行ったことの詳細を語らない。その点について日本側も理解してもらいたい」

国交のない日本側には、国際法上、それ以上を要求することができなかった。現場で地団太を踏んだのをよく覚えている。これに対して今度は「国家保衛部」が出てきたというのである。確かに表面的にみると、何か事柄が進展したかのように見えなくもない。

だが、繰り返し言おう。共産体制である北朝鮮にとって、これらはすべて壮大な演出なのである。そしてあたかも譲歩しているかのように見えて、実際には空手形を振り出しつつ、「これだけやったのだから日本側も経済制裁を解除せよ」と迫る。実に巧妙な交渉戦術なのだ。これに日本が乗ってしまっている。

「北朝鮮」は何のために、誰が創り出したのか

なぜ私がこうした北朝鮮側の態度に危惧を抱くのかといえば、私たち日本人が北朝鮮という一つの「国」との関係でしか問題をとらえていないのに対し、北朝鮮はもっと広い文脈の中で今回の交渉をとらえている気配があるからだ。

そしてこのことを正確に理解するためにはまず、そもそも「北朝鮮」という国家を何故に、誰が創り出したのかを知らなければならない。

そのための大きなヒントになるのが、本来ならば満州(現在の中国東北部)の守備隊に過ぎなかったはずの「関東軍」のナゾの南進だ。終戦当時、「関東軍」はどういうわけか元来の守備範囲を大きく越え、朝鮮半島の守備には別の部隊があたっていたにもかかわらず、北半分まで南下して来ていた。そしてその南下にあたって関東軍が立ち止まったラインこそが現在の南北国境である「北緯38度線」だ。

これだけでも十分不思議ではあるが、もう一つ手がかりがある。「北朝鮮・建国の父」である金日成、そしてその「息子」である金正日は(北朝鮮側のプロパガンダは別として)それぞれ旧ソ連と深い関係に立っていたことが知られている。簡単に言えば北朝鮮は旧ソ連が認めなければ最初から存立しえなかった国家なのである。

すなわち、北朝鮮の領土を事実上あらかじめ画定していたのはわが国の「関東軍」の動きであった一方で、北朝鮮の体制について人的整備を行ったのは旧ソ連であった。両者は本来、対立しあっているはずの存在であり、現に私たちはそのようなものとして教育現場で教えられてきている。したがってそういう「思考の枠組み」で見るとこうした出来事は単なる偶然に過ぎないように見えてしまう。

しかし、こうは考えられないだろうか。---敗戦色が濃くなった段階でわが国は、いかにして戦後アジアの秩序において優位性を保つのかを極秘裏に検討した。その際、基本的な原理として採用されたのが、簡単にいうと「毒をもって毒を制す」というやり方だった。

第二次世界大戦では、米ソ両大国のどちらが「世界の覇者」になるのか決着がつかなかった。そうである以上、これら両者の間で早晩、深刻な争いが始まるのは目に見えている。そうであればわが国としてその中で生き残りを図り、しかもこれら両大国と対等にわたりあっていくためには、それぞれに対して別の言い方をしながら協力関係を築いていくしかない。

そう考えたわが国は米国との関係において「同盟関係」を築き上げる方向性をとった。日米安全保障体制は当たり前のことのように思われるが、米国はその軍隊をわが国に長期にわたって駐屯させるつもりはまったくなかったのである。嫌がるマッカーサーを説き伏せ、「在日米軍」による駐屯を決定させたのはわが国側だった。これで対米関係はひとまず形が整った。

しかしこのままアジアが収まってしまっては、やがて米軍が「それでは失礼」と逃げてしまう危険性がある。そのためわが国はこうした対米交渉と同時、あるいはそれより先立つ形で東アジアの諸国に人知れず「地雷」を埋め込み続けたのである。

その一つが中国における核開発に対する支援であり、もう一つが北朝鮮の「建国」だったのではないか。敗戦色が濃くなる中で後者については、本来「敵対」するはずの関東軍から旧ソ連の側に対して次のように呼びかけを行ったのではないか。

「米国は今後、共産主義体制に対する防波堤として『緩衝国』を朝鮮半島に創ろうとするであろう。そうなった時、直接これが国境に面してしまうのは不都合なのではないか。そうであれば日ソが共同して『緩衝国』をもう一つ作ってしまってはどうか」

このような呼びかけが旧ソ連のスターリンの耳に届き、スターリンもこれを認めたと考えるならば、先ほど述べたような「偶然にしては出来すぎている事実関係」はまったくもって納得できる。つまり「北朝鮮」はそもそも建国にあたってわが国の「権力の本当の中心」とその手足である関東軍、さらにはそれと本来「敵対関係」にあるべき旧ソ連の合作、というわけなのだ。

日本人との問題の棚卸しを始めた北朝鮮の真意

余りにも壮大な話であるように聞こえるかもしれない。しかも仮に北朝鮮が我が国の意向の下に創られたのであれば、何故に「日本人拉致問題」などという非人道的な行為を行ったのであろうか。まったくもって理解できない。

だが、こうも考えられる。---元来、「緩衝国」として日ソが創ったはずの北朝鮮はその後、自立した意思を持ち始めてしまった。その結果、旧ソ連から核開発のための設計図を得つつ、それとの濃密な関係を事実上疎遠なものにし始め、もはや旧ソ連であっても手がつけられない存在になってしまった。同じことはわが国についてもいえる。こうした工作活動の最前線を担った旧陸軍士官学校人脈の高齢化が進む中、北朝鮮はわがもの顔で動き始めてしまった。そして残地諜報者として置いてきた者たちは年老い、もはやわが国も手が出せなくなってしまった。

今回、北朝鮮は「日本人拉致問題」だけではなく、あらゆる「日本人との間における問題」の棚卸しを始めている。「日本人妻」問題に加え、「残留日本人」までも取り上げている。単なる交渉材料を増やすための手段のように見えなくもない。だが、つくられた「緩衝国」北朝鮮を巡る本当のストーリーに視線を合わせると、そこには全く違うイメージが見えて来る。そう、北朝鮮は「生みの親」の一方であったわが国との関係性を完全に清算しようとしているのである。

そしてその最終的な狙いはいわゆる「戦後賠償」を勝ち取ることなのだ。それは言ってみれば「協力者に対する報償」とでもいうべきものなのかもしれない。

このように考えることでようやく私は今、冒頭に紹介した人物が吐き捨てるように述べた言葉の真意を理解している。そのような壮大なゲームが進展しているとは知らず、無邪気にも自らの保身をも図るべく「北朝鮮カード」に手を出してしまった安倍晋三政権。そうしたレべルを超えた展開が急激に進み、わが国外交がフリーズしてしまうという意味での「真実の時」が訪れるのはそう遠くないはずだ。

(参考図書:小著『狙われた日華の金塊』(小学館)及び「『日本バブル』の正体」(東洋経済新報社))

 

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39912


 

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