日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 薩州住良一 天明五年 Yoshikazu Katana

2015-09-16 | その他
昨年から日本刀県連の出版の大波が寄せ来ている。筆者も写真の使用と解説の相談を受け、多くの出版社に協力してきた。
それら雑誌のメインテーマは、三日月宗近など号が附された古来有名な刀類の来歴や伝説などの紹介。それが故にほとんどの雑誌が同じ刀を重複して、おなじように説明している。もう少し個性的な内容にすべきであろうと提案してみるも、編集者に日本刀の知識がないものだから、結果として先行している書物の後追いにならざるを得ない。雑誌の製作工程は異常に早く、時には校正もないまま、いつの間にか出来上がったものが届くといった状況もある。

そういった意味では数年前に学習研究社から出された『日本刀大全』などはじっくり時間をかけて創ったもので、内容は濃いと思う。現在の刀剣出版物は、ほとんどが学研の日本刀大全を下敷きにしているのだ。
ついに、学習研究社が、豪華本日本刀の写真集『日本の美 日本刀』を発行する。豪華本という点が新しいだけではない。等身大の写真が満載。さらに英文による解説もある。この点がうれしい。


刀 薩州住良一 天明五年

刀 薩州住良一 天明五年

薩摩新刀でもちょっと珍しい作。良一は正幸の高弟で、鹿児島の住人。正幸には頗る近い位置にあった名工であるが、作例は少ない。この時代、弟子は師の手足となって働くもの。自作が世に出る機会は頗る尠い。この刀は師の作風そのものというより、かなり出来が良い。地鉄は良く詰んだ小板目肌に板目肌と杢目が交じり、刃寄りに柾目が現れ、全面に地沸が厚く付いて地沸を分けるように地景が現れ、潤い感は最高。尖りごころの互の目に湾れを交えた刃文は、古作相州物を手本としたもの。小沸の粒子は綺麗に揃ってしかも明るく冴え、肌目に沿って綺麗に流れ、刃縁ではほつれになり、刃中では金線砂流に変じ、処々沸筋が流れて薩摩刀の特徴も顕著。写真でもこの沸の美観は良く判る。これぞ良質の薩摩刀といった出来である。
 


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