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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 兼法 Kanenori Tanto

2016-07-09 | 短刀
短刀 兼法


短刀 兼法

 兼法は美濃から越前に移住した刀工。この短刀は、一尺弱。先に紹介した政常もほぼ同じ寸法だが、印象が異なる。反りの付き方によってこのように違ってくる。地鉄は板目肌が細かな地景によって肌立ち、ザングリとした感がある。この「ザングリ」という表現は刀剣では良く使われている。板目肌から小板目肌に進化してゆく過渡期ともいえるが、板目の肌が縮緬状に細かに揺れていたり、小模様に杢目がそれに交じったりして、鍛着は密ながら肌が強く立って感じられる様子を指す。この越前に移住した刀工群にも多くみられるが、慶長頃の山城堀川國廣一門の特徴でもある。これが斬れ味に影響していることは間違いない。「ザングリ」とは、肌立つ鍛えでありながらも良い意味で用いられているのだ。刃文は湾れに小互の目交じり。焼刃は小沸に匂が複合し、所々に強く沸が付く。刃縁はほつれ掛かり、帽子もそれに伴って強く掃き掛けて返りは長く下がる。相州伝の影響を受けた美濃伝の一つ。いかにも戦場で用いるために製作された、という印象だが、頗る健全な状態で遺されている。




短刀 相模守政常 Masatsune Tanto

2016-07-08 | 短刀
短刀 相模守政常


短刀 相模守政常

 信高や氏房と同様に美濃から尾張に移住したのが政常。鍛冶の流れは兼常家。戦国動乱の時代には槍の製作に長けており、家康などに納めている。慶長年間に我が子二代目政常が亡くなったため再び槌をとっている。元和五年に八十四歳で長命を全うした。即ち、新古境の作刀において急激な進化が進んだ時代を生きた刀工だ。そして、この良く詰んだ地鉄の様子は、後に続く多くの鍛冶の手本となったに違いない。強く激しい板目肌から小板目肌へと移り変わる頃の、最先端を走る鍛冶の高い技術が窺いとれよう。詰んだ中に揺れるような肌が地景によって表れており、斬れ味も高そうだ。叢がないため刃中の沸付き方も均質であり、冴え冴えとしている。何より焼刃は沸だけでなく匂によっていっそう鮮やか。刃文は湾れにわずかに砂流しが働いている。



短刀 越中守正俊 Masatoshi Tanto

2016-06-29 | 短刀
短刀 越中守正俊


短刀 越中守正俊

 正俊は金道の弟の一人。ともに京に移りすみ、江戸初期を活躍期とし、後の刀剣の世界に影響を与えた一人でもある。刃長九寸半、元幅が九分強、重ねが三分半もある、がっしりとした造り込み。鎧通しといってもいいだろうが、さらに身幅が広い点が異なり、迫力がある。この時代の特徴的な造り込みと言えるだろう。板目の流れた地鉄は、緊密に詰んで地沸が付き、鍛え目に沿って明瞭に地景が現れ、ここも迫力がある。刃文は不定形に乱れた湾刃で、物打から先が沸筋強く働いて、やはりここも力強い。造り込みはこの刀工の創案と思われるが、地刃の出来は相州伝、沸を意識した作である。肌目に伴うほつれ、喰違、金線、砂流、殊に物打から帽子にかけての折り重なるような沸筋は圧巻。焼刃を超えて地中にまで沸筋が流れ込む。彫り物が火炎不動に剣巻龍だから、見事に風合いが合致している。

短刀 金高 Kanetaka Tanto

2016-06-25 | 短刀
短刀 金高


短刀 金高

 刃長九寸強だから短刀としたが、先反りが付いた平造の小脇差といった姿格好。重ねを控えて刃先を鋭く仕立て、ふくら辺りの身幅も広く張りのある造り込み。地鉄は板目に小板目肌交じり、良く詰んで映りが立つ。刃文は、研磨によって互の目に縁取りされているから分かりやすいだろうと思う。くっきりと鮮やかに見える。ふっくらとした互の目に尖り調子の互の目、それが地に深く突き入るような部分があるなど、構成は比較的創意が感じられる。刃中には繊細なほつれが掛かり、匂の満ちた中に足が柔らかく広がり、濃淡変化に富んでいる。飛焼も淡く施されている。このような構成美が背景にあり、江戸時代の刀工によって刃文の美として完成を見るのであろう。




短刀 兼貞 Kanesada Tanto

2016-06-24 | 短刀
短刀 兼貞


短刀 兼貞

 室町時代の美濃物を、時代を追って紹介してきたが、ここのところ戦国時代、天正頃の美濃物が続いている。戦乱の激しい時代だ。この短刀は一尺弱の寸法で比較的肉厚。革具足をすっぱりと切るための薄手の刃物と、堅物を相手とする場合の頑丈な刃物が混在した時代だ。戦国時代後期の天文年間には鉄砲が伝来し、それに応じて胴を鉄板で強固とした具足が製作されており、さらにそれに対応するための刀もがっしりとしたものに変わってきている。戦国時代でも、刀の造り込みを見れば時代背景が分かるのだ。さてこの短刀は、緻密に詰んだ小板目肌鍛えに地景で板目流れ肌が浮かび上がった、頗る躍動感に満ちた作。板目肌が強く出ているのは微妙に質の違う鉄を混ぜ込んだ結果であり、強靭な身体にするための工夫だ。質が異なれば鍛着は難しい。それを巧みに行っており疵気なく、地沸がこれにからみ美しい。刃文はやや沈んだ湾れ刃。ここにも打ち合いを想定した焼き入れの考え方が窺える。刃中にはほつれ、砂流し、金線が、これも綺麗に流れ掛かっている。



短刀 兼國 Kanekuni Tanto

2016-06-23 | 短刀
短刀 兼國


短刀 兼國

 両刃状に両側に焼刃が施された短刀だが、鋭く仕立ててあるのは片側のみ。菖蒲造だ。兼國は美濃から播磨国に移住した刀工。播磨に移住した後に備前の両刃造に接し、その恐ろしいまでの構造を再現したものであろう。寸法は七寸強、無反り。断面が菱型。鎧の隙間から突き刺し、どちらに力を入れても内部をえぐるように斬るのが両刃造であり、考えただけでもぞっとする武器だ。その片側に刃を付けていないのは、いずれ研磨して刃を付けるつもりであったのか。現状では、片側から押さえつけるような使い方が可能だ。充分に鎧通しの効果がある。板目流れの地鉄が詰み、刃文は肌目に調子を合わせたような浅い湾れ調子。小沸出に匂が交じり、ほつれ、喰い違い、金線などが刷毛で掃いたように流れ掛かっている。


短刀 兼先 Kanesaki Tanto

2016-06-18 | 短刀
短刀 兼先


短刀 兼先

 両刃造の短刀。両刃造というと備前刀工の作を思い浮かべるが、美濃にも多くはないがあり、相州鍛冶にもわずかにみられる。両刃造短刀は相対的に出来の良いものが多い。頗る実用的な武器であるにもかかわらずだ。この造形が製作上頗る難しいと考えられる。鎬を立てて身幅を狭め、双方に焼刃を施す。鎬の厚さ、鋒の薄さ、それぞれが焼き入れ時にどのように影響を及ぼしてくるのだろうか。茎の形状から、備前國与三左衛門尉祐定辺りの両刃を手本としたものであろう、研究の成果は表れていると思う。頗る良くできているのだ。元先のバランス。鎬筋と鋒までの構成線。均質な小板目肌鍛え。匂口明るく互の目の出入りに抑揚のある刃文構成。刃中に広がる小沸と匂の冴え。ちょっと見には備前物と間違えそうだが、地鉄も刃文も美濃物だ。

短刀 兼友 Kanetomo Tanto

2016-06-16 | 短刀
短刀 兼友


短刀 兼友

 八寸半ほどの短刀。小板目肌の刃寄り板目流れとなった地鉄が特に綺麗な作。わずかに反りを付けた姿は、南北朝期の一尺三寸ほどの小脇差にもあるような、刺突と截断の両方に使えるようにしたもので、実用の武器という印象が強いのだが、頗る綺麗だ。このような小板目鍛えが、後の江戸時代の作刀に変化してゆくのである。刃文も綺麗な直刃。所々に小足が入り、刃境は盛んにほつれかかり、これが刃中に及んで淡い砂流しとなる。このようなところに美濃鍛冶の出が大和である名残が窺えよう。物打から先も健全であり、焼幅たっぷりと残されている。美濃鍛冶というと、実用一点張りの印象が強いことから一段低く見られがちだが、出来の良い作が意外にも多いのである。生半可の知識で、他人から聞いたことを鵜のみにして美濃刀を軽んじる人が多いのだが、よく鑑賞してみるといい。凄い作が残されている。

短刀 兼門 Kanekado Tanto

2016-06-15 | 短刀
短刀 兼門


短刀 兼門 永禄五年八月日

 九寸強の寸伸び短刀。身幅は相応にバランスよく、重ねも比較的しっかりとしている。地鉄は頗る綺麗だ。杢を交えた板目肌は緊密に詰んでいるが、地景によって肌が鮮明に立ち、躍動感に満ちている。これに地沸がついて映りが重なり、地中は意図せぬ景色が展開している。もちろん映りの様子は備前物のそれとは異なり、凄みがあると評したい。刃文は直刃に湾れ小互の目の組み合わせで、帽子が地蔵風に乱れている。匂口の閉まった焼刃は明るく冴え冴えとし、匂いの所々に沸が付き、刃境はほつれかかり、これが刃中に流れ込み、繊細な一面を見せる。比較的年紀作の少ない美濃物の中でのこの短刀は、いずれかの武士の注文による、特に上手の出来。

短刀 兼景 Kanekage Tanto

2016-06-07 | 短刀
短刀 兼景

 
短刀 兼景

 関七流の中で、兼常の流れは奈良太郎系。これと同じ流れを汲むのが兼景。兼景は、兼常も得意とした直刃を焼いている。刃長九寸強、無反りの短刀。重ねしっかりとしており、小杢を交えた板目鍛えの地鉄が躍動感に溢れて靭性と強みが感じられる。特に映りのかかった肌合いは緊張感に満ちて凄みがあり、これぞ美濃物の優れた素質。匂口の締まった細直刃も引き締まった感があり、刺突のみならず截断に優れていることが分かる。刃境の穏やかなほつれに古作大和伝の名残が窺える。映りの様子が拡大写真で分かると思う。微妙に質の異なる鋼に焼き入れの際の火まわりの調子が影響したものであろうか、あるいは土どりの調子も影響しているのであろうか、様々な要因によってこの不思議な景色が生まれる。



短刀 兼常 Kanetsune Tanto

2016-06-02 | 短刀
短刀 兼常

 
短刀 兼常


 兼常は、大和手掻派の出。美濃に移住して代々が栄え、室町時代には関鍛冶をまとめる立場にあった名流。この門流より尾張で活躍した政常がでている。先に紹介した兼常は乱刃であったが、この短刀は直刃。いずれも得意としている。この時代には、兼元や兼定にもあるように、古作を手本としてその再現を試みた例がある。この一尺弱の寸伸び短刀も、鎌倉時代の来や粟田口を思わせる出来。小板目肌鍛えの地鉄は地中に地景が入って肌目に躍動感があり、肌立つところに斬れ味の追及がうかがえる。身幅たっぷりとして刃先鋭く、具足の腰に備えて戦場を経巡ったであろうことが想像される。使うことを追求したものながら、健全体躯で伝え遺されているところがいい。直刃は小沸に匂の複合。刃縁に小沸の流れがあり、二重刃状の連なりもうかがえる。




短刀 兼元 Kanemoto-Magoroku Tanto

2016-05-24 | 短刀
短刀 兼元


短刀 兼元(孫六)

前回紹介した短刀とは、製作の意識として違っている。鎌倉時代の短刀を手本としたものと推考され、小振りに姿が良い。地鉄も小板目状に良く詰んでおり、改良と進化が窺える。このような小板目鍛えも江戸時代の一般的な刀の地鉄に影響しているのであろうか。刃文は直刃。小沸に匂が複合してごく浅く湾れている。地鉄も含めて鎌倉後期の山城物を手本としている。之定も含めて、美濃刀工の中には、新刀に見紛うような小板目鍛えが詰んで美しい作がある。この短刀以上に綺麗な出来もある。この頃になると相州伝の風合いはまったく感じられない。直刃であっても、匂口が締まって美濃物らしさが強まっている。

短刀 兼定 Kanesada Tanto

2016-05-18 | 短刀
短刀 兼定


短刀 兼定

 之定の初期銘であろう、この短刀は、刃長七寸強の姿が良い作。写真は印刷用に仕上げたモノクロしか残っていないのでご容赦ねがいたい。地鉄が綺麗だ。良く詰んだ小板目鍛えに地沸が付いて映りが加わり、全面が白っぽく見えるほど。焼が強く地中に湯走り沸筋が走っている。刃文は互の目に角のような尖刃が交じっている。帽子も沸が強く掃き掛け、相州伝の影響を強く受けていることが判る。この激しさが魅力だ。先に紹介した短刀にも似ているが、刃文構成は流れるような地鉄に沸筋の流れを同調させているようだ。匂口の締まったところは美濃ものの特質。写真で刃文が明瞭に見えないのは研磨の方法が違っているから。今風の刃採りを施した研磨であれば写真でも判りやすいのだが、刀は写真で見るものではない。手にとって光源の調子を良く観察すれば、この引き締まった焼刃の様子に脳の奥底が刺激され、心奪われること間違いなし。さすが名工の作である。

短刀 兼定 Kanesada Tanto

2016-05-16 | 短刀
短刀 兼定


短刀 兼定

 室町時代後期の美濃刀工の代名的な存在が兼定と孫六である。兼定はその二代目がノサダと呼ばれており、最上大業物作者に指定されていることからも著名で、刀を学んで知らぬ者はない。ノサダとは、定の字のウ冠のしたが之(ノ)となることからの呼称。この短刀は、その初期作。こうして作例をみると、兼定は相州伝の鍛冶であると言っても良いだろう。これまで見て来た綱家、綱廣と大きく変わらぬ地鉄と刃文だ。板目鍛えの地鉄は良く詰んで動きがあり、これに地沸が付いて刃文は尖り刃交じりの互の目乱で、飛焼があり、棟焼がある。その通り、美濃伝と一口に言うも、大和から移住して来た千手院派、手掻派などの工により、時代によって影響を相州伝に受け、移住した美濃においてはその複合的な地刃を突き詰めた結果、直刃出来、互の目出来、湾れ出来、尖刃出来など様々な地刃のものがそれぞれ定着している。その中では特に志津伝(相州伝)が色濃く残されているように感じられる。ただ、一段と尖刃が強くなっている代の降る兼元などのような作もある。皆焼は相州伝や美濃刀工だけのものではない。戦国時代の備前刀工も焼いている。さて、この短刀は、兼定銘を切っていた頃、ノサダ銘になる以前の作。造り込みは鎌倉時代の短刀を想わせる八寸弱の身幅尋常なる格好の良いでき。地鉄は板目が緊密に詰んで流れ肌が交じり、関映りが顕著。尖刃交じりの互の目の焼が強く、棟焼に飛焼が加わりった皆焼の典型。相州伝だが強い沸だけでなく匂が主調となっている。



短刀 綱家 Tsunaie Tanto

2016-05-12 | 短刀
短刀 綱家


短刀 綱家

 刃長一尺二分、反り六厘。平造の脇差とも言い得る武器だが、使用方法からは寸伸び短刀であろう。かなり位の高い武将の具足に備えられ、戦場で重宝されたもの。物打辺りに実用の痕跡がある。地鉄の出来が頗る良い。杢目を交えた板目鍛えの地鉄は躍動的に、しかも密に詰み、焼き入れ温度の高い焼刃ながら肌荒れなく、むしろしっとりとした質感さえ窺える。地沸が厚く付き、しかも飛焼と棟焼が加わって刀身中程より上は皆焼となっている。互の目の刃文は丸みを帯びて足が長く入る傾向にあるも、所々焼頭が角のように尖る部分があり、相州刀工の特質を示している。焼刃は小沸と匂の複合からなり、一段と明るく冴えている。刃縁から沸ほつれが刃中に広がり、細い金線を伴う砂流しとなって足を横切っている。帽子も調子を同じくして沸強く掃き掛けて乱れ返る。刀身彫刻が刀身の中程を過ぎるほどに大振りに施されるのも相州刀の特徴である。