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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

近江守久道 刀 Hisamichi Katana

2020-07-08 | 
近江守久道 刀


近江守久道 刀

 久道は三品鍛冶の一人。高い技術を備え、湾れ互の目を得意とした。三品系の焼刃構成は、志津を想わせるように古作に倣った刃文構成でパターン化しないところに面白みがある。沸が強く深く、互の目も湾れも抑揚変化に富み、刃中には沸の流れの働きが濃淡変化をしながら焼刃全面を装う。



河内大掾正廣 刀 Masahiro Katana

2020-07-06 | 
河内大掾正廣 刀


河内大掾正廣 刀

 江戸時代前期の肥前正廣の湾れ刃。正廣家は忠吉家と並んで肥前に栄えた鍛冶集団。この正廣は四代目。正廣は相州伝を得意としており、互の目乱などを焼いている。地鉄は緻密に詰んだ肥前肌。この湾れ刃は、ゆったりとした構成であり、焼の深いところに小足や葉が入っている。互の目に葉が入って虻の目状となるのが肥前の互の目の特徴であるのだが、湾れ刃でも同様の働きがある。三所物の一つと言えよう。

井上真改 刀

2020-07-04 | 

日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

井上真改 刀


井上真改 刀

 真改は、助廣と並んで大坂の横綱と評され、正宗の再来と呼ばれるほどに美しい地鉄と沸深い焼刃を生み出した。特に沸深い焼刃は、刃文構成が判らないほどに変化に富み、地刃の境界が判らないほどに沸深く、時には刃先まで沸が広がる作もある。この刀の刃文は浅い湾れ。刃中は沸の広がりが刃先近くまで及び、物打辺りには沸筋が霞みの流れのようにたなびき、わずかに掃き掛ける帽子へと連続している。とにかく美しい。湾れ刃を美しく焼くという作意はあるのだろうが、自然な構成となり、作意を感じさせないところが魅力。□



水田國重 刀 Kunishige Katana

2020-07-03 | 
水田國重 刀


水田國重 刀

 戦国末期から江戸時代にかけての水田國重一門は、かなり強く相州伝を意識していた。沸強い湾れ刃に互の目を交えている刃文構成。この作では鍛え肌に沸の絡んだところが刃肌となって強調されている。やや尖り調子の互の目は不定形に乱れて出入り複雑に、湾れとの調和もとられている。刃文をくっきりとさせずに、肌目が刃中に自然に溶け込んでいるようにもみえる。このような刃肌は、微妙に質の異なる鋼を織り込むように鍛え合せているために生じるもので、刀身の強靭さを求めた結果である。好き嫌いは別にして、すごい景色となっている。



信濃守信吉 刀 Nobuyoshi Katana

2020-06-25 | 
信濃守信吉 刀


信濃守信吉 刀

 信吉は江戸時代前期正保頃の京都の刀工。超の付く有名刀工ではないが、頗る上手で、大互の目出来の名品を遺している。本作は互の目に湾れを調合した刃文構成。沸深く刃中に流れる砂流しが美しい。特に互の目の谷から隣の谷へと流れ掛かる細かな沸の砂流しがいい。帽子も単に丸く返るだけでなく、先端に掃き掛けのように砂流しが広がって美しい。

言之進照包 刀 Terukane Katana

2020-06-23 | 
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

言之進照包 刀


言之進照包 刀

 先に紹介したことのある越後國包貞同人。綺麗な濤瀾乱。刃中にすぎることのない沸筋とも砂流しとも言い得る綺麗な働きが流れ掛かる。沸の粒子が揃ってしかも明るく冴え、地鉄の均質さが一段と高まり、これらの調和美を成している。照包は助廣などに次ぐ濤瀾乱の上手な刀工だと評価されているが、時に助廣を凌駕する作品を遺している。濤瀾乱を創始したのが助廣でその功績を称えるのであれば、より深みのある作風へと広めていった多くの刀工の存在を忘れてはいけないし、ただの真似だと低い評価を下すべきではない。



肥前國住人貞吉 刀 Sadayoshi Katana

2020-06-17 | 
肥前國住人貞吉 刀


肥前國住人貞吉 刀

 貞吉は肥前國を代表する初代忠吉の一族。地鉄は均質に詰んだ小板目肌。大坂新刀とよく似ているところである。大坂新刀も、肥前刀も、小板目肌が緻密に、均質に詰むという大きな特徴がある。江戸時代の多くの刀工が目指した点でもある。それがゆえに地鉄に特徴が見出しにくくなっている。刀工は、おのずと刃文構成に特徴を出さねば個性が光らなくなることを認識している。吉貞は、相州伝を目指したようだ。湾れの所々に不定形の互の目を配しているところがその証し。小沸の帯による焼刃がゆったりと続き、互の目は頭が揺れるように配され、互の目の中に葉が組み込まれて目玉のように感じられる。この辺りに肥前刀工の互の目の特質が窺える。帽子も乱れ込んでいる。

越後守包貞 刀

2020-06-16 | 
越後守包貞 刀

 
越後守包貞 刀

 包貞も濤瀾乱刃を焼いた一人。直刃も上手だし、このような、ゆったりとした湾れ刃も焼く。刀身全体を眺めると、地に湾れ込むところが五つ焼かれている(刃採りのために刃文は判りにくいが刃採りは刃文に沿っている)。意匠の主題は繰り返し寄せ来る波に他ならない。沸は深く明るい。沸の粒子も揃っている。湾れの中に断続する沸筋が、食い違いを成し、所々二重刃のように感じられる。層状の沸筋が帽子へと連続し、強く掃き掛けているのも見どころ。



越前守助廣 刀 Sukehiro Katana

2020-06-15 | 
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋


越前守助廣 刀


越前守助廣 刀

 寛文年間の作。かなり不定形に乱れた中に互の目と湾れがある。いろいろと工夫し研究していたころのものと考えられる。このように完成とはいえないであろう作品にも面白いものがあるという一例。刃中は沸が流れて層を成し、一部は地中にも沸筋が流れて丹波守吉道を見るようなところもある。沸が叢付いて激しい印象があり、帽子も大坂新刀らしからぬ掃き掛けで火炎状に乱れて返っている。

刀 左行秀 Yukihide Katana

2019-11-01 | 
刀 左行秀


刀 左行秀

 兼虎の特質の一つでもある沸深い出来に関連して、例に出した左行秀を改めて眺めてみる。沸が強くて深いという左行秀の凄さは、この作例で判るのではなかろうか。左行秀が生きた同時代、これほどに沸が深く強い刀を製作した刀工はいない。他には、少し時代が上がって井上真改がいる。刃縁の沸の帯から刃先に向かって沸が柔らかく広がり、明るく細密な沸が刃先にまで達しているのが判ると思う。地中にも地沸があり、本作においては、いずれも叢がなく均質である。もちろん湯走りや刃中に金線沸筋砂流しを働かせた作もあるが、ここに見るような均質な地刃を生み出した左行秀の凄さは、他にこのような作を遺した刀工がいないという点で理解すべきだ。同時代の相州伝刀工では、肌目を強く出して沸出来の刃文を焼いた大慶直胤がいる。直胤も清麿と同様に鍛え肌を強く意識した作風で有名だが、左行秀の相州伝とは異質、まったく別の分野と言っていい。左行秀もまた相州伝の刀工。この差を鑑賞して楽しんでほしい。

刀 備中國住人貞次 Sadatsugu Katana

2018-08-08 | 
刀 備中國住人貞次


刀 備中國住人貞次

 鎌倉時代後期の青江貞次の作。大薙刀を刀に仕立て直している。現状で二尺五分強。比較的反りが少なく、鋒の棟方を磨って反りを矯正したものと思われるが、物打辺りの身幅が広く残されており、迫力がある。地鉄は板目に杢目を交えて縮緬肌となり、さらに小板目肌が交じった極上の肌合い。刃文は直刃で、たっぷりとした帽子は焼き詰め。刃境はほつれ、小足が穏やかに入る。青江らしい出来である。



刀 青江 Aoe Katana

2018-08-02 | 
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

刀 青江


刀 青江

 南北朝時代前期の青江の作。大磨上で二尺三寸弱、磨り上げにより、抜刀と截断に手頃な、操作性に富んだ武器とされている。元先の身幅広く、大帽子が詰まったような感じ。元来は頗る大振りで大鋒の迫力ある姿であったろう。地鉄は板目に杢目を交えて揺れるような肌合いで、前回の青江に比較すると同じ質感を基礎としているも、細かな地景によって肌立つ風が強い。刃境はほつれ、小足もさほど多くなく、品よく入る程度。穏やかな出来である。





刀 青江 Aoe Katana

2018-07-30 | 
刀 青江


刀 青江

 鎌倉後期の磨り上げ無銘の刀。板目肌が揺れるような、しかも均質に詰んで細やかな地沸で覆われ、繊細な地景で肌目が際立つ。とても綺麗な地鉄で、青江物の優秀性を示す作とも言えよう。刃文は直刃で、帽子は小丸返りの綺麗に整った出来。焼刃は小沸を主調に匂を伴い、刃縁小沸で乱れて小足が入り、物打辺りが特に乱れた感じとなる。







刀 青江 Aoe Katana

2018-07-23 | 
刀 青江


刀 青江

 大磨上無銘で、青江と極められた作。鎌倉後期の、未だ古青江の風情が遺されたままの作。姿格好はさほど身幅が広くはならず、総体に輪ぞりとなって直刃との調和もとれているい。鋒は中鋒で、先幅とのバランスも良い。地鉄は杢目を交えた板目肌が微塵に詰んでいながらも、肌に縮緬状に揺れる風が窺え、微細な地沸、繊細な地景、淡い斑のような映りが立つも鯰肌とは異なる穏やかな景色となっている。刃文はごく浅い湾れ調の直刃で、匂口締まり調子に刃境には小沸が付き、ほつれ掛かり、喰い違い、二重刃などがやはり過ぎることなく品よく入る。帽子も二重刃風にながれ、ふくら辺りが穏やかに湾れ、先は焼き詰め風にごく浅く返る。この時代の極上の地鉄からなる作品である。







太刀 古備前 Ko-Bizen Tachi

2018-07-05 | 
 刀の地鉄が大きく変化したのは、鎌倉時代前期と戦国時代後期であろう。戦国時代の変化は、「祐定」と銘された作品群の変化を眺めると、少しは判かってくる。江戸時代にも進化はしているが、むしろ刀工の関係が複雑になりすぎて分かり難くなっているようにも思える。
平安時代から鎌倉初期にかけての地鉄の見かけは、映りというべきか地斑というべきか総体に白っぽく感じられる。技術革新はどこから起こったものであろうか、大和の古千手院派が古くから活躍しており、大和鍛冶に限らずこの辺りを深めてみたい気もするが、なかなか時代の変化を如実に示している作品群に接する機会がない。
備前鍛冶も歴史が古く、平安時代末期から鎌倉時代初期には大きな変化がみられる。古備前鍛冶から古一文字へ、さらに福岡一文字、長舩鍛冶、吉岡一文字などへと、作風を微妙に違える流派の隆盛に至っている。


太刀 古備前


太刀 古備前

 鎌倉時代初期備前鍛冶の大磨上無銘の太刀。備前の古作では、平安時代から鎌倉初期の作を古備前と呼び分けている。古一文字も時代的に含まれるが、一文字の特徴が現れているものを特に古一文字と呼び分けている。本作は、系統までは絞り切れないため、古備前。焼刃は、刃文の様子が判らないほどに乱れた小乱に沸筋、砂流し、金線などが交じった出来。ねっとりと詰んだ地鉄が古作の特徴。一見して板目肌が地景で肌立っているように感じられるが、その肌間は微塵に詰んでおり、それらに映りが感応して躍動的景色が窺える。極上質の古作であることは間違いない。