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商標の広場

弁理士の福島が商標のお話をします。

ドワンゴ提訴

2016-11-16 09:52:50 | 日記

11月15日、動画サイト「ニコニコ動画(ニコ動)」を運営するドワンゴが、同社の商標権などを侵害されているとして、同じく動画サイトやブログサイトなどを運営する米FC2を相手取り、東京地方裁判所に提訴した。

これに先立ち、FC2も今年7月、ドワンゴに対して同様の提訴をしており、ドワンゴは徹底抗戦の構えだ。 両社の争いが泥沼化しつつあるかに見える訴訟合戦。が、事はそう単純ではない。ドワンゴが提訴した背景には「国境を超えた権利侵害にどう対峙するか」という川上量生会長の問題意識がある。

まず、争点を整理しよう。争いは、ドワンゴとFC2、それぞれのブログサービスが「ブロマガ」という呼称を使っており、それぞれ別の目的で商標登録されているために生じた。ドワンゴはブログとメールマガジンが一体となったサービス「ブロマガ」をニコ動内で提供。

記事ごと、あるいは月ごとの課金が可能で、サービス名のブロマガは「電子出版物の提供」などを対象に、2013年9月に商標登録されている。

一方、FC2は、ブログサービス「FC2ブログ」において、記事ごと、月ごとに課金ができる機能「ブロマガ」を提供。「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」などを対象に、2013年10月に商標登録されている。

先に動いたのはFC2だ。今年7月、FC2は自社の商標権を侵害しているとして、ドワンゴに対してブロマガの記載を中止し、不当利得を返還するよう求める訴えを東京地裁に起こした。

ドワンゴは、「商標権を取得して正当に使用しており、当社の行為はFC2の商標権を侵害するものではない。徹底的に争う」として、今回の訴訟に踏み切ったという経緯がある。

だが背景を探ると、両社のあいだには数年前から“火種”が燻っていた。ブログではなく、動画配信サービスの違法コンテンツで。いずれにしても、今後両社は提訴合戦に突入か?


徳川家

2016-11-15 10:24:35 | 日記

水戸徳川家の家紋にそっくりのマークが商標に登録されたとして、同家15代当主の徳川斉正さんが理事長を務める公益財団法人「徳川ミュージアム」が、特許庁に異議申し立てをしたことが4日、分かった。

今、同庁で審理している。同庁によると、登録したのは水戸市のイベント会社。「お守り・お札」「日本酒」などに使用するとして、水戸徳川家の「葵(あおい)紋」に似たマークを商標として出願し、昨年12月に登録された。

徳川ミュージアム側の代理人によると、同庁の公告で登録を知り、今年3月に登録の取り消しを求めて異議申し立てをした。代理人は「一私人に独占されると、水戸徳川家と縁のある神社や徳川ミュージアムなどが使用する場合に制限がかかる可能性がある」と訴えている。

イベント会社側は「社長不在で対応できない」としている。


トランプの知財政策

2016-11-14 10:19:21 | 日記

TPP(環太平洋連携協定)の承認案と関連法案が11月10日、衆議院本会議で賛成多数で可決された。11日からは、参議院本会議で趣旨説明と質疑がスタートし、今国会で成立する見通しだ。ところが、先立っておこなわれた米大統領選挙で、TPP反対を公約として掲げたドナルド・トランプ氏が勝利したことから、米国内の承認手続きが暗礁に乗り上げる可能性が高まっている。

12カ国が合意したTPP発効には、域内国内総生産(GDP)の85%以上の国が批准する必要があるため、日米の批准が不可欠とされる。今後の情勢変化や課題について、衆議院TPP特別委員会で、知的財産権の保護ルールについて参考人として意見を述べた福井健策弁護士の見解を紹介したい。

いったい、このTPPという条約はどんな数奇な星の下に生まれたのか。そういいたくなる流転の運命ぶりである。知的財産権の面でいえば、もともと米国提案の知財条項案がリークによって流出して、その「非親告罪化」「保護期間の延長」「法定賠償金」といった刺激的な内容がネットを中心に激論を呼んだのは2011年。その後、TPP反対を掲げる自民党の選挙大勝、知財条項などでの米国と途上国の対立長期化、秘密協議に対する各国の議員・有力団体の抗議と、試練が続く。

さらには米国議会での大統領に権限を与える法案(TPA)の薄氷の可決など、いくたびも頓挫の危機にさらされながら、ついには加盟国が署名にこぎつけたのが今年2月である。そして、この条約の承認と著作権法など関連する法案の審議のため、衆議院ではTPP特別委員会が開催されて、筆者も知財面の参考人として招かれて意見を述べた。法案の評価と今後の課題については、詳しくはその要旨をご覧いただきたい。

つまり、TPP承認と法案成立はいよいよ大詰めである。ところがだ。米国では、「就任初日にTPP離脱を宣言する」と明言するトランプが大統領選で大勝してしまった。TPPは加盟国のGDP全体の85%以上を占める国の批准がないと発効しないので、米国か日本のいずれかが批准しなければ発効はない。選挙中の公約の目玉だったことを考えれば、トランプの早期翻意は難しいだろう。

これに対して、オバマ大統領は来年1月の任期末までの駆け込み議会承認というウルトラCを狙い、日本政府もそれに賭けていた節がある。だが、これまた選挙で大勝ちした共和党の幹部はそろって年内の議会承認はないと明言。これも、承認したところで進める気ゼロの大統領がすぐに誕生してしまうのでは、さすがに踏み切れまい。

少なくとも現状でのTPPについていえば、どうも、限りなくゲームオーバーに見える。政府はめげずに、衆議院では関連法案を可決し、今後参議院でも成立の予定とされる。だが、著作権などの改正法は、いくら国会で成立してもTPPが発効しない限りは施行されない。つまり非親告罪化も保護期間延長も、成立しても死文となる公算大だ。これが長い旅路の末の「イマココ」である。というわけで、状況は注視するとして、TPPが残した「通商条約と著作権など知財政策の課題」を挙げておこう。

現在、情報社会やコンテンツ立国にとっての最大の課題は、膨大なコンテンツを発信し活用をはかるために「権利処理コストをいかに低下させるか」だ。その際、条約、特に多国間の通商協定による知財制度の拘束には注意を要する。こうした条約は、長期にわたって基本的な社会状況や政策目標が変わらない分野には向くが、情報・コンテンツのように変化があまりに急速で、3年先の状況も見通せないような分野では危険である。

なぜか。条約は国内法に優越するので、一度通してしまえば国会をもってしても変えられない。だからといって、多国間の通商条約では離脱も修正も容易ではない。つまり肝心の知財制度の柔軟性が失われるからだ。そもそも、通常は交渉自体に長期間を要するので、一時代前の相手国内のロビイングの影響を受けるリスクもある。TPPの知財条項についていえば、その元はすでに6年以上前の米国内のロビイングである。

その後、米国では著作権局長が孤児著作物を減らすために保護期間の部分短縮を提案する時代を迎え、ITネットワーク系セクターのロビイ力も格段に上がった。すでに状況はかなり変わっており、数年先となるとまったく見通せない。そもそも「トランプ政権の知財政策」を誰が見通せたと言うのだ。

そのとき、国会でも変えられない知財の制度を多数抱え込むことは、柔軟な制度による競争力を削ぐことになる。それは情報・文化・コンテンツ立国に未来を賭けるべき日本にとって、危険な選択肢だ。今後、TPPが形を変えて復活することがあるとしても、あるいは、ほかの通商条約の協議においても、(たとえば協調メリットの大きい海賊版対策に対象を絞り込むなど)知財条項のスコープの取り方は十分に注意を要するべきだろう。


公序良俗違反の商標

2016-11-13 10:23:42 | 日記

商標登録を受けることができない商標については、4条1項各号に規定してあります。 そのうち7号では、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標について登録を受けることができない旨を定めてあります。

王家の有名な紋章や各国のシンボルマークは、国際信義に反するものとして4条1項7号で拒絶されます。差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形等は4条1項7号で拒絶されます。

差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形等であるかどうかの判断は、文字又は図形に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断し、例えば、関係団体等からの情報提供や申し入れがあった場合には、その内容を詳細に検討し、更に必要があるときは資料等を求めることにより慎重に判断することとしています。

国家資格等を表す又は国家資格等と誤認を生ずるおそれのある商標(「××士」「××博士」等)については、地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体が認 定する資格(以下「国家資格等」という。)を表す場合、一般世人において、国家資格等と一見紛らわしく誤認を生ずるおそれ のある場合には、原則として4条1項7号に該当するものとして拒絶されます。

指定暴力団が自己を示すために用いている標章(代紋等)と同一又は類似の商標に係る商標登録出願については4条1項7号で拒絶されます。

歴史上の人物名からなる商標登録出願の審査においては、商標の構成自体がそうでなくとも、商標の使用や登録が社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も4条1項7号に該当し得ることに特に留意するものとし、次に係る事情を総合的に勘案して同号に該当するか否かを判断することになります。

(1)当該歴史上の人物の周知・著名性
(2)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識
(3)当該歴史上の人物名の利用状況
(4)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係
(5)出願の経緯・目的・理由
(6)当該歴史上の人物と出願人との関係

結局、上記に該当する商標は登録されません。


知財とTPP

2016-11-12 14:55:04 | 日記

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の国会承認を求める議案と関連法案は、衆議院本会議で民進党などが退席するなか、採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されました。TPP=環太平洋パートナーシップ協定の国会承認を求める議案と関連法案は、先週、民進党と共産党が抗議するなか、衆議院の特別委員会で可決されました。そして、10日午後開かれた衆議院本会議で採決が行われました。

それに先立つ討論で、自民党は「自由で公正な、開かれた経済の枠組みを作ることはわが国の大きな使命であり、核となるのがTPP協定だ。TPPの重要性をトランプ氏含め、アメリカに伝え、共有することが重要だ」と述べました。一方、民進党は「アメリカ大統領選挙で当選したトランプ氏が、明確に反対しているにもかかわらず、採決を行うのは、世界の笑い者になるだけだ。アメリカの動向を見極めながら、TPPに対応するのが常識だ」と述べました。

このあと、民進党、自由党、社民党は、先週の特別委員会での採決は、不正常な状況で行われたものであり、無効だなどとして、採決には加わらず、退席しました。そして、採決の結果、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。共産党は、採決で反対しました。

TPP協定には、日本が輸入する農林水産品や工業製品などの95%の品目で関税を撤廃することや、知的財産の保護、投資に関する紛争を解決するための制度など、幅広い分野の貿易や投資などに関するルールが定められています。また、関連法案には、協定発効後、牛肉と豚肉の生産者が、全体で赤字経営になった場合に、赤字額を補填(ほてん)する制度の拡充などが盛り込まれています。

議案などの衆議院通過を受けて、論戦の舞台は参議院に移り与党側が、今の国会で成立させたい考えなのに対し、民進党などは、徹底した審議を引き続き求め、廃案に追い込むことを目指すことにしています。この問題、アメリカの事情はともかく我が国にとってTPP承認が国益になるかを考えるべきと・・・?