「かに道楽」と聞いて、何を連想するだろうか。もちろん浪速っ子なら「あれや」と即答するだろう。大阪・道頓堀のシンボルともいえる、巨大な動くカニ看板のことだ。
だが、中部地方の人なら違うものを連想するかもしれない。愛知県の老舗練り物会社が販売しているかまぼこも、実は「かに道楽」という商品名なのだ。
商標権はカニ料理専門店の「かに道楽」が保有しているため、同社は名称使用の差し止めを求めて大阪地裁に訴訟を起こした。
しかし、江戸期創業の練り物会社も「うちの方が先に使っていた」と譲らない。商標権をめぐる争いの行方は-。
すっかり秋めいた10月下旬の日曜日。大阪・道頓堀の「かに道楽道頓堀本店」前は、いつものように外国人観光客や家族連れらでごった返していた。
正面のカニ看板を撮影したり、カニの炭火焼きをほおばったり…。その存在は一飲食店の枠を完全に超え、名所・名跡とほとんど変わらない。
「食いだおれの街」のシンボルとして、ランナーが両手を挙げたポーズでおなじみの江崎グリコの電光看板と双璧(そうへき)をなす。
店のホームページ(HP)や訴状によると、道頓堀にカニ料理専門店「かに道楽」の第1号店がオープンしたのは昭和37年のことだ。営業不振が続いていた前身の魚介料理店「千石船」で提供した「かにすき」が大ヒットしたのを機に、屋号を「かに道楽」に変更した。
「『かにで儲けさせてもらったから、かにで思いっきり、道楽をしてみたい』と捨て身の覚悟と無謀ともいえる熱意」(HP)を込めたという。この商標権争いは道楽?