九州に飛んだ呑み鉄旅は "いさぶろう1号" で八代駅を発つ。この車両は見るからに水戸岡鋭治氏の作品だ。
SL人吉号など多彩な観光列車が走る肥薩線、開通当時は鹿児島本線として九州を縦貫する幹線だったという。
昭和2年に水俣・川内を経由する海沿いの新線が開通すると、名称を肥薩線と改めローカル線となってしまった。
肥薩線の起点は鹿児島本線の八代駅、0キロポストは1番ホーム上にある。
肥薩線の八代~人吉間は通称「川線」と呼ばれ、最上川、富士川と並ぶ日本三大急流・球磨川に沿って走る。
翠緑色の水を湛える球磨川では、尺アユと呼ばれる30センチもの大きなアユが育つそうだ。
"鮎屋三代" は九州駅弁ランキング3年連続1位の名物駅弁、乗車前に八代駅前の「鮎の老舗より藤」で仕込んだ。
焼鮎からとっただし汁で炊き込んだごはんに、球磨川産の天然鮎で作る甘露煮がのった一品は期待を裏切らない。
甘露煮はもちろんのこと、炊き込みご飯や脇を固めるおかずの旨さにはとても満足なのだ。
城の形をした人吉駅は「からくり時計」が迎えてくれる。情緒豊かな小京都・人吉を散策してみようと思う。
駅から徒歩5分、国宝「青井阿蘇神社」が在る。御祭神は、健磐龍命(たけいわたつのみこと)、その妃である
阿蘇津媛命(あそつひめのみこと)、お二人の子どもの國造速甕玉命(くにのみやつこはやみかたまのみこと)の三柱だ。
球磨川を人吉橋で渡って訪ねた繊月酒造の焼酎蔵、随時蔵見学を受け付けてくれる。
15分ほどの工場見学の後は、繊月城(人吉城)址や球磨川を眺望する城見蔵で試飲を楽しめる。
ぼぼ全商品を自由に飲み比べできて焼酎ファンには堪らないだろう。
人吉駅に戻ると「ハチロク」の愛称で親しまれている8620型機関車が牽く "SL人吉号" が入線していた。
旅の続きは篠ノ井線の姨捨、根室本線の狩勝峠と並び日本三大車窓に挙げられる絶景を "いさぶろう3号" で往く。
肥薩線の人吉~吉松間は通称「山線」と呼ばれる。ひとつ目の大畑(おこば)はスイッチバックの駅。
駅舎の待合室のには多くの名刺が貼られている、ここに名刺を貼ると出世するという噂があるからだ。
気動車はループ線を走って標高を稼ぐ。ピークで停車した車窓から大畑駅のスイッチバックを見下ろす。
ふたつ目の矢岳(やたけ)は肥薩線で最も高い標高536.9mに位置する。ここで仕込んだ "たる繊月" を開ける。
吉松盆地へと下りはじめて、三つ目の真幸(まさき)はスイッチバックの途中にある味わい深い木造駅舎。
国鉄時代に使われていた鐘は「幸せの鐘」として旅人たちに人気、「真」の「幸せ」と記す入場券はいいお土産だ。
"いさぶろう号" の終着駅吉松では、鹿児島中央行きの観光特急 "はやとの風" に乗り継げるダイヤになっている。
けれども自ら課した有料特急は使わない「呑み鉄」ルールに反するので1時間後の普通隼人行きを待つことにする。
単行気動車は霧島連山を左手に錦江湾に向かってガタゴトと50分、日豊本線に合流する隼人が肥薩線の終着駅だ。
旅の終わりに大隅一の宮・鹿児島神宮に詣でる。漆塗りの現神殿は宝暦6年(1756年)、島津重年公による再建。
主神は天津日高彦穂穂出見尊(アマツヒダカヒコホホデミノミコト)と豊玉比売命(トヨタマヒメノミコト)だ。
本日の〆、投宿したホテルの日本料理店「京はるか」で、地元日當山醸造の芋焼酎 “隼人心” を楽しむ。
酷と甘みが際立つ芋焼酎に合わせた肴は、キビナゴ刺身、黒豚豚骨、さつま揚げ、そして黒豚しゃぶ小鍋。
郷土料理肴に、雨に煙る桜島のシルエットを眺めながらの独り酒なのだ。
肥薩線 八代~隼人 124.2km 完乗
現実は厳しいかもしれませんが、再びこうした鉄道の旅を楽しむことができればと願うばかりです。
しなの鉄道 「観光列車 ろくもん」
に似ていると思ったら デザインした人が
同じ水戸岡鋭治田で しかも ろくもんより
かなり前で驚き
ちょうど 今年の 善光寺ご開帳に
あわせて 四度目の乗車しました。
https://blog.goo.ne.jp/tsakaegoo/d/20220713
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、肥薩線も再び訪ねたい路線です。
でも今回はちょっと厳しいかも知れませんね。
観光客を誘致する前に、地元の方が利用しないと。
鉄路は残したいけど、私は便利なクルマで通う。では無理があります。
日本中の地方に突きつけられた課題ですね。
コメントありがとうございます。
水戸岡氏が脚光を浴び始めたのはJR九州がきっかけですね。
今では顧問の肩書きをお持ちとか。
「ろくもん」はきれいに使ってますね。
ふるさとを走る列車でもあり、長く活躍して欲しいと願います。