再びニンニクの話で恐縮ですが、先のブログで申し上げた「エレファントガーリック」の温熱熟成、10日程で立派な熟成黒エレファントガーリックが出来上がりました。
早速外皮を剥がして試食をして見ましたが、黒褐色の褐変した表面は水分が多くて、一寸、べた付いた感じであり食べて見ると、得も言われぬ甘さの柔らかい羊羹のような歯触りであり、これと言った風味や旨味が特に感じられない、他に喩えようの無い一寸奇妙な味でした。
ー出来上がった褐変エレファントガ‐リックー
ところが、料理好きの家内は、褐色のリン片の片端を一寸なめて見て、此の甘さは何か他の食材と混ぜてペースト状にしたりするのが良いと言い、早速クリームチーズとクラッカーを取り出して、褐変エレファントガーリックを薄く切り、クリームチーズと合わせてクラッカーに載せ、試食しながら 「これなら、誰もニンニクとは思わないで食べられる味!」と、中々の好評価です。
―StarChefsCom- HPより
扨て、其のエレファントガーリックの話では無く、一般の黒ニンニクの事ですが、先のブログでも触れたアメリカの黒ニンニクの反響が意外な形で受け取られている話が料理界雑誌のウェブ版で紹介されて居ました。
その話の表題には 「その汚れたな秘密と黒ニンニクの深い旨味」(The dirty secrets and deep flavor of black garlic) とあり、厨房に国境は無しとばかりに、突如海外からスーパーフードとしてアメリカ市場に入って来た黒ニンニク、その登場の来歴に何か秘密があって、なにかすっきりしていない姿が覗われます。
―House-made Black Garlic from Parish Hall―
何と言ってもニンニクは、有史前の尤も古くから栽培されて来た薬効に優れる調味香辛食材であり、世界中に広まって今日まで、その地域の異なる食文化の中に溶け込んで、それぞれに利用されて来た、誰ひとり、知らない人の居ないのです。唯、其のユニークさの最大の特徴は、一般に妨げとなる特有の臭いであり、それを感じさせない新しい利用法と言える黒ニンニク、その登場は、多くのアメリカのプロの料理人を魅了する一方で、彼らの矜持からでしょうか、そんな風に受け取られる事になったのかも知れません。
―Sunny Egg, Black Garlic, and Herb Sauce―from Parish Hall
その料理界雑誌のウェブ版で紹介された話の冒頭には、「黒ニンニクには、少しばかり汚れた秘密があり‥‥」と、こんな風に書かれて居ます。
「黒ニンニクは、韓国の伝統的な食品かも知れないし、又そうでないかも知れず、その始まりは、土壺の中に入れて夏の暑い太陽の下での「発酵」、或いは懐疑的なネット情報では、古代中国、或いは日本、更に古代エジプトから伝わったものかも知れない‥‥」とあります。
―Parsley Cake, Caramelized Fennel-Black Garlic Gelato―
又、「そうは思えないが、記録によれば黒ニンニクは韓国の発明家、スコット キムが2004年に開発した、新しいスーパー食材と言う事であり‥‥」とあります。
そのブラックガーリックの背景がはっきりしない事は、プロの料理人であるシェフ達が新素材として腕を振るって新しい料理を作り上げても、何か食材の出生のロマンに欠けるところが有るからでしょう。
ーPickled Cauliflower, Marcona Almonds, Black Garlic, and Kaffir Lime-
ところで、その黒ニンニク、日本ではどんな経緯で市場に出て来たのでしょうか。実は、日本の最大のニンニクの生産地の青森県で黒ニンニクの生産が始まったのは、驚くなかれ、ホンの5-6年前からと言います。
その辺の事情をネット上で拝見した所、其の発端は、何と三重県と言いますから驚きです。
日本のニンニクの生産の大部分を担う青森県、黒ニンニクの生産を始めるにあたって、其の価値や市場性を検討しながら、慎重に推し進めた話が、青森県黒ニンニク協会のHPの中で紹介されて居ました。
ー青森県黒ニンニク協会HPよりー
そもそも、2005年に三重県の企業からの黒ニンニクの製造を打診するアプローチであったと言い、「黒ニンニク」がどんなものか分らず、三重県迄出向いて、三重大学の田口教授の写真入りのチラシや中国産のニンニクを加工したらしい黒ニンニクを始めて見比べたそうです。
ー田子の黒ニンニク海外カタログーWebImagePhotoes
そして、食べてみると、ニンニクなのに不思議と甘酸っぱく、「美味しい」とは言えないまでも不味い程ではなく、何より今までは調味食材として僅かしか食べる習慣の無いニンニクが、下手をすれば一度に数片食べられる可能性を持つ事、チラシによれば、抗酸化力が生の10倍とあり 「抗酸化力って何だ!」「今流行のアンチエイジングですよ!」の会話から始まり、いろいろと事業化の検討をしたそうです。しかし、結果的には、申し出の製造プラントやパテント料が高価過ぎて見送ったとあります。
ー青森県黒ニンニク協会HPよりー
それが、其の後の平成18年3月13日の「陸奥新報」に、「生より強い抗がん作用」、3月20日の「デーリー東北」には、「がん細胞撃退に効果」等、それまでなんと3回目となる、がん細胞を移植されたマウスの実験で、生ニンニクを発酵させた黒いニンニクのエキスを投与する事で、がん細胞が消滅したという報道記事が出た事が事業推進に動く転機となったと言います。
又、平成18年暮れから19年にかけて小林製薬、ファンケルなどの大手健康食品メーカーが次々と黒ニンニクサプリメントの販売に踏み切った事も大変な刺激になったと書かれています。
ー青森県黒ニンニク協会HPよりー
一方、その日本黒ニンニクの発祥の地、三重県の黒ニンニク事情は如何かと言いますと、これ亦、びっくりした話です。
真偽の程はわかりませんが、「人類がニンニクを食べ初めて以来の快挙」とまで言われ、各地に多くの模倣品を生み出したと言う「熟成黒ニンニク」。
その発祥の地は、実は、或る三重県の会社であったとネット上にありました。其処には、黒ニンニク開発の秘話が、次のように書かれて居ます。
ー株式会社 元気HP-より
「‥‥高温多湿の「むろ」の中に数週間前から放置したままのにんにく。若干軽くなったそのニンニクを手にとって剥いてみると、 なんと中身は真っ黒。抵抗があったものの少し口に入れてみると驚くことにニンニク独特のニオイがなく、甘酸っぱい味がするではないか!
‥‥まさに、目からウロコの出来事でした。しかも、このニンニクは何も加えていない無添加の状態で置いてあったもの。自然の力に驚愕した瞬間でした」とあります。
ー黒ニンニクの褐変熟成過程ー(株)元気HPより
ところが、ネット上には、我こそは、三重の黒ニンニク誕生の元祖と称する方が、他にも居られるのです。
その話では、昔、祖母が好んで食べていた蒸しニンニクであり、其の祖母の亡き後、夢枕に立った祖母から詳しくその製法を伝授され、其の通りに実行すると立派な黒ニンニクが出来上がったと言います。
ー三重県産黒ニンニク販社HPよりー
これ亦、大変真しやかな話ですが、真偽の程は分かりません。唯、言える事は、日本では、三重県で黒ニンニクが誕生した事は確かなようです。唯、其の歴史は余りに浅い10年程であり、それが既に韓国はもとより、中国でも盛んに黒ニンニクは作られているようですし、中国製の大小の黒ニンニク製造機が盛んに宣伝販売されている情報がネット上に有りました。
ー中国製黒ニンニク製造装置ーWebImagePhotesより
しかし、此の黒ニンニク、先にブログで申し上げたように、ニンニクに含まれる還元糖とアミノ酸に依るメイラード反応で生れる褐変物質メラノイジンの生成であり、日本の代表的な調味料の醤油や味噌でも、褐変色の同様な反応物質が生まれ、それらの物質も亦、ニンニクと同じような抗酸化作用や免疫賦活作用を持つと言います。
食の洋風化で、今の世代は日本食の味噌汁を余り飲まなくなったようですが、その世代に癌発症が多くなっているのもその所為かも知れません。
ーメイラード反応の研究者ールイ・カミーユ・メヤール
その黒ニンニク、褐変熟成処理をして薬理作用や滋養効果が増したとばかりに、宣伝により更なる付加価値を付けて高値で販売されているようですが、其の真価を言うなれば、矢張りニンニクの加工食品の一種であり、先に紹介したウェブ雑誌の中でも、既に黒ニンニクはシェフが、キッチンで自家供給用に自作を始めていると語られて居ます。
ーブラックガーリックチョコレートーWebImagePhotesより
当家でも、来年からは、ニンニクは、自家用に黒熟成ニンニクを作って保存する積りです。今般のエレファントガ‐リックで、新食材としての利用範囲が広がる事が分かりましたし、健康食材としてその摂取量も増やせます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます