海外の医療情報サイト 「メディカル ニュース ツデイー」の中に、神経系疾患やガンに詳しいと言う医療ジャーナリストの寄稿した “ハーブ野菜食は如何に脳活動を向上させるか”と題する記事がありました。
それで昨年は、脳機能を活性化するハーブに就いていろいろと知る機会となり、認知症を予防するハーブとしてのレモンバーム茶を取り上げ、また自らも春から秋まで、レモンバームティーをずうっと飲み続けて見ました。
そのレモンバームには、様々な薬効成分が含まれているのですが、その中に人の脳活動を向上させると言う物質があり、植物本体が太陽からの紫外線から自らを守る役割をしていると言うアピゲニンと呼ばれる黄色~白色の植物色素であります。
そのアピゲニン、他のハーブ類にも含まれている天然に生成する多くの配糖体物質のフラボンであります。
ー昨年春から秋までお世話になったレモンバームティー
実はそのレモンバームも秋遅くになってからは、新鮮な生葉の刈り取りが儘ならぬようになり、替って飲み始めるようになったのが、昨シーズンに自宅の庭の柑子(コウジ)ミカンで作った「陳皮」であります。
陳皮茶を飲み始めた当初は、苦味が大変強く感じられて一寸閉口したのですが、柚子ジャムを小匙に半分ほど入れて飲むと結構な飲み味に変わると、先のブログで申しました。それが今では、その「苦味」が全く気にならず、一般のお茶と同様にその儘でも飲めるようになっているから不思議です。
その陳皮の薬効ですが、漢方では理気剤であり、生体活動を活発にさせて血行を良くし、自立神経系のバランスを整えて、エネルギー産生の基となる健胃整腸等の消化器の活動を促進する作用や去痰効果もあります。
ー毎日飲む陳皮茶が習慣になりました!-
その薬効成分は、先のブログ 「柚子茶に含まれる柑橘成分の効用」で触れた、精油成分のリモネン、フラボノイドのヘスペリジン、カロテノイドのβ-クリプトキサンチン、ペクチン等であり、その中のフラボノイドのヘスペリジンはビタミンPとも呼ばれる成分であります。
その効果、一般に 「血流改善作用」であり、その血流改善効果によって、冷え症、肌荒れ、生活習慣病、皮膚の乾燥、肩こり、腰痛など、色々な効用が期待できることが分かっていると言います。
その薬効成分は柑橘類の果皮および薄皮に多く含まれるフラバノン配糖体のフラボノイド類であります。
その陳皮、中医薬学の基礎となった中国最古の薬物書 『神農本草経』(西暦112年)の中では、その人への作用の強さで分類される上薬である「柑橘」が記載されて居り、それが「陳皮」の源になっています。
その古代中国の本草書の原典となっている“神農”とは、4000~5000年前と言われる古代中国の伝承上の三皇五帝の一人であり、身近な草木の薬効を調べるために自らの体を使って、草根木皮を嘗め、何度も毒にあたっては薬草の力で甦ったといわれています。
こうして発見した薬によって多くの民衆が救われ、神農は薬祖神として祀られるようになったのであり、日本でも、湯島聖堂内に「神農像」が祭られていて、毎年11月23日には神農祭が行われています。
ー湯島聖堂内に祭られている神農像―
『神農本草経』は、もちろん神農がまとめた書物ではありませんが、こうした伝説にあやかって、書名がつけられたようであり、古代中国に伝わる薬物の知識が集録され、編者だけでなく成立年代も定かではありませんが、一般的にその成立は1~2世紀頃といわれています。
扨て、歴史的には大変古くから利用されて来た柑橘、漢方薬では馴染みの深い陳皮の利用法ですが、その材料となる温州ミカンの皮等は日常的には特に利用されず廃棄されている事から、今ではその優れた薬効から、様々にその利用法がネット上で紹介されています。
そして、その薬効成分が、フラボノイド骨格を持つポリフェノールの一種のヘスペリジンであると言い、その期待できる効果・効能を次のように羅列して紹介しているサイトがありました。
- ①毛細血管・末梢血管を強化する
- ②血流を改善する効果
- ③冷えの改善
- ④肩こり、腰痛の予防・改善
- ⑤倦怠感の改善
- ⑥むくみ予防
- ⑦高血圧を予防する効果
- ⑧コレステロール値・中性脂肪の低下作用
- ⑨生活習慣病の予防改善
- ⑩メタボ対策・脂肪分解
- ⑪抗アレルギー作用(花粉症・炎症など)を予防
- ⑫リウマチの症状の改善
- ⑬骨粗しょう症を予防
- ⑭ビタミンCの安定化、消耗抑制、リサイクル効果
- ⑮肌(皮膚)の状態を改善
- ⑯自律神経への作用・ストレス対策効果
- ⑰発ガン抑制作用
- ⑱集中力アップの効果
- ⑲抗酸化作用・活性酸素を除去
以上のようにヘスペリジンには、幅広い健康促進効果があると言いますが、「これが凄い!」と感嘆される方が、日本にどれだけおられるでしょうか?
実はよく読んでみると、従来から言われている事をちょっと大袈裟に言い直しているだけであり、その中身は特に変わりません。
ー陳皮は水をさばく健胃腸剤であり去痰剤です!-
先のブログでも触れましたが、橘皮に含まれる精油成分のモノテルペン炭化水素類の α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、リモネン、テルピノレン、1,8-シネオール、リナロール、ボルネオール等、その植物に含まれる多様な成分による、血行促進作用、強壮作用、抗感染作用、免疫活性作用、疲労回復作用、鎮痛作用の複合効果であり、決して今更の多く語られる程の話ではありません
実はよく読んでみると、其処には、何か仕掛けられた「落とし穴」があり、フラボノイドのヘスペリジンだけの効果で言える話では無い事を知りながら、唯ヘスペリジンだけを取り上げて、その効果を如何にもらしく喧伝する仕掛けがあるのに気付きました。
驚くなかれ!そのサイトは、某食品メーカが「陳皮」を語って、その「ヘスペリジンサプルメント」を売り出す為に仕組んでその効能を謳い上げる商業戦略の口上であったのです。
健康生活の一端にと毎日飲み始めた「陳皮茶」ですが、美辞麗句のように並べあげられた、その良いこと尽くめの万能効用振りには呆れるやら、がっかりさせられるやら、何か複雑な気分にさせられました。
―青ミカンならより効果が高い複合柑橘サプリもあり?-
しかし、其処は野菜園芸の栽培経験豊かなマニア老人ですから、サプルメントの効果は良く理解しており、作物では化学肥料等の単一成分や高濃度肥料分を多く与えても、その吸収効率は返って悪くなるのであり、その多くが殆ど吸収出来ずに流亡して仕舞うのです。
人の場合も亦然りであり、同じ生物の生体活動であっての栄養分吸収、自然から摂取する多様な微量薬効成分は、その必要量に応じて相乗的に摂取されるのであり、構成成分の複合作用があってこそ、初めてその摂取効果が発揮されると考えられるのです。
この考え方の原理・原則が生かされているのが、東洋医学の漢方薬の薬効に対する評価であります。一方西洋医学の薬物療法に基く「栄養サプルメント」の捉え方、其のどちらが本当に健康効果が高いのか、ご自分で試して実感して見ては頂くしかありません。
ー農薬の人の神経系への影響は何処まで分かっている?-
尚、最後に申し上げて置きますが、市販品のミカンの皮を利用するなら、使用されている農薬汚染の心配があり、水洗いで簡単に農薬成分が落とせると思っておられるなら、それは大方は間違いであります。
使用されている農薬の成分は一般に公開されいなのであり、どんな残留成分がどの程度、収穫物の細胞の内部まで浸透しているかは正直に言って生産者にも分からないのです。後は自己責任でご判断ください。
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