昨年9月の末に新ポットポニックスの5号プラポットに球根を植えたワケギ、一端はしっかり伸び上がった葉が12月末には寒さに葉がだらしなく垂れ広がって成長が全く止まってしまったのですが、それが2月の下旬から再び新葉が伸び出して見る見る内に青々となり、忽ち40-50cmの高さ迄に伸びたのです。
―ニューポットポニックスで育ったワケギの姿ー
其の姿は先のブログ 「見事に育ったポット栽培のわけぎ」でお見せししましたが、其の長く伸びた葉が、今度は4月の下旬に入ると突然のように根元から次々と倒れ、まるで玉葱の成熟期と同様に葉柄の倒伏が一期に始まったのです。
しかも、丸く膨らんだ球根部が狭い鉢内で行き場を無くし、その一部が盛り上がるように露出もしています。
―倒伏して球根が一部露出するワケギー
実はその分葱、日本人の研究者によってゲノム構成分析から、ネギとタマネギの自然交雑種であると発表され、今では新しい学名のAllium × wakegi Arakiで呼ばれています。
其の新しく命名された分類法に就いてですが、1990年代以降にDNA解析による分子系統学が大きく発展し、植物の分類体系もこの手法を試みる研究が分類学において主流になりつつあると言います。そう判定された事から今では、以前の分葱の学名の Allium fistulosum L. Var. caespitosum Makinoから、玉葱の交配種であるとして、Allium × wakegi Arakiとされたのです。
―倒伏しても球根の肥大の為に給液を続けるー
一方、其の分葱の片親と言う分球型タマネギのエシャロット(シャロット)は、以前は玉葱の分球種としての学名の “Allium cepa Var. Aggregatum”とされて居たのですが、今ではシャロット玉葱と言う事からか、Allium ascalonium Lとされているのであり、其の為に分葱はその亜種としての学名、Allium fistulosum L. Var. caespitosum Makinoとされていたのです。
しかし、そのように断定されている事実はさて置き、どう見ても日本のワケギ、それ自体が世界で一般に言うエシャロット(シャロット)其のもの一種では無いかと言うのが以前からの実感でありました。
―三月末では45cm程までの高さに伸びたワケギー
何故なら、エシャロット(シャロット)には形態的、生態的に異なる種類が多々あり、欧米で一般に利用されているエシャロット(シャロット)の伸長した青い葉柄部分は、ネギとして食用にする「グリーンオニオン」であり、一方グリーンシャロットとも呼ばれ、実は日本で昔から利用されて今日までに至っている「分葱」と何ら変わり無いのであり、エシャロット(シャロット)には形態的に異なる種類が色々とあって、分葱がエシャロット(シャロット)の一種以外の何者でも無いと言う事は動かし難いからです。
―株元の太い分葱の5号ポットで育つ姿 ポットポニックスの偉力です!―
エシャロット(シャロット)の持つグレーや灼銅色、紫紅色などの色彩、丸型や細型の球根形状など、日本で言う分葱でもこれ亦同様であり、分葱が分球型の玉葱の一種、エシャロット(シャロット)そのものである事を示す証しとも言え、日本で言うワケギ、今般の季節の到来に合わせて葉を枯らして休眠期に入る姿を見ると、エシャロット(シャロット)の一種と言うよりも、唯そのものずばりと言っても良いと感じ取れるのです。
尚、其の分葱とエシャロット(シャロット)との違いに就いては、先のブログ 「分葱とシャロットとの違い?」でやや詳しく触れていますのでご参照されたら尚一層ご其の辺の理解ができるかと思います。
扨て、そのエシャロット(シャロット)ではないかとも言える分葱が、日本に伝わったのは何時ごろかはっきりしませんが、平安中期に編纂された辞書の『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(931-938年)には、既に分葱の記載があると言いますから、遅くとも平安時代には日本には既に入って来ていたと言う事です。
―『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』―WebImagesより
それ以来、エシャロット(シャロット)としての分球根の食用対象に分葱ではされる事がなかったと言うのには、今更ながら誠に不思議な話に思えて成りません。
何しろ、同じ仲間のニンニクやラッキョウ、形態的にはそっくりであり、其の根部の鱗茎が食用にされながら、玉葱に至ってはその伝来は極近年であり、其の原種とも思われる?エシャロット(シャロット)の仲間の分球型の玉葱のポテトオニオンでは、日本では其の名前さえ知る人が殆ど無く、今尚日本で其の姿を目にする事が無い事実から、極東の外れの島国の日本に伝わり損ねた情報のズレでは無いかと痛感させられるのです。
―これがポテトオニオンです!-Webimagesより
そうした野菜類食文化は、其の背景となる食生活の中で築かれるのであり、これだけネギ属野菜が日本でも広く利用されて来たにも拘わらず、玉葱の伝来は、江戸時代に南蛮船で長崎に伝えられたのですが観賞用で有った言い、栽培が始まって一般に利用されるようになったのは明治以降であり、俗に言われる「喰わず嫌い!」であったと言えば其の通りかも知れません。
―喰わず嫌いは単なる偏見です!-WebImagesより
それとも日本に伝わったエシャロット(シャロット)の仲間の「分葱」の球根は日本人の口には合わず、食材価値が劣るとされていたのでしょうか?
ネット上に有る分葱の球根の食べ方の質問の多くは、今尚、どうやって食べるのが美味しい食べ方かと尋ねているのですが、素直な質問と言えばそれまですが、何か知恵に疎い話に思えて成りません。簡単に言うなら分葱の球根、ネギ属野菜が活きた儘で休眠状態を保つために栄養たっぷりの鱗片を球根の形で閉じ込めているのです。
栄養的に優れて居ても人が食べて見て、食べにくい事も考えられますが、ラッキョウのような形をした小玉葱と思って頂けたら、それ相当の価値のある食材になるのは確かです。
それでは此処で、分葱の仲間である欧米で言われているエシャロット(シャロット)の高い栄養価、一寸申し上げます。
―フレンチシャロット品種の Mikor―WebImagesより
シャロットの球根は、一般のネギと近隣関係にある分球型の小玉葱であり、含まれる栄養成分は玉葱と余り変りは無いのですが、其の健康への寄与度で見るならば、単位重量当たりでの抗酸化物、ミネラルやビタミンの成分含有量が、全てで玉葱を上回っているとアメリカの健康食品情報サイトにあります。
それを端的に申せば、豊富なフラノボイド類のケルセチン、ケンフェロール等の抗酸化作用物質が多く含まれ、更には硫化アリル類のdiallyl disulfide, diallyl trisulfide 及び allyl propyl disulfideであります.
これらの物質が細胞を切ったり、潰したりして壊されると、含まれる酵素の働きでお馴染みのアリシンに変換されるのです。
其のアリシンの作用、肝細胞の中のHMG-CoA リラクターゼエンザイムを阻害してコレストロール産生を減少させ、更に、抗バクテリア作用、抗ウイルス作用、抗菌作用を持つことが研究で明らかにされてます。
アリシンには亦、血管拡張させる化学物質の酸化窒素(NO)の作用で動脈硬化を防ぎ、全血圧を下げる働きがあります。
更なる研究から、アリシンは動脈内の血栓の形成を阻止する事が示唆されていて、冠状動脈不全や末梢動脈疾患、脳溢血等のリスク回避する事が明らかにされて居ます。
玉葱に含まれるアリウム属のフイトケミカル化合物のアリルジスルファイドは、抗細胞変異作用(癌を防ぐ)や抗糖尿病特性(血中の糖度を下げる作用)があります。
シャロットは一般の玉葱と比べると、ビタミンやミネラルが数倍も多く含まれ、特にビタミンA、ビタミンB-6、葉酸、チアミン、ビタミンC等ですが、人の脳内の神経活動をスムースにする働きを持つ化学質物GABAのレベルを上げる働きをします。
それに加えて、100gの生のシャロットには1190 IU (35% RDA) のビタミンAが含まれて居り、ビタミンAは、肺癌や喉頭癌を防ぐ働きを持つ強力な抗酸化作用を持つと言います。
その上にシャロットは玉葱よりも多いミネラル類、電解物質が含まれ、特に多いのが鉄分、カルシュウム、銅、カリウム、リンであります。
―フランスで最も珍重されるグレーエシャロットーWebimagesより
これでお分かりと思いますが、分葱の球根、玉葱の縮小された野菜と思って献立を工夫されては如何ですか。
尚、最後に一寸分葱情報を一言付け加えますが、一般に薬味として利用されるネギでも、高級ラーメン店の拘りは、必ず分葱を使うと言います。
其の分葱の入手、関東では出荷量で限られるのであり、替わって青ネギと呼ばれている一般ネギが代用として多く利用されており、其の違いは其の道の味の通しか判らないと言うのです。
―カナダトロントのベストラーメンの姿-Webimagesより
多分、高塩分濃度に馴らされた関東人の舌では、其の旨味の微妙な違いの識別は困難だから返って良いのかも知れません。
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