白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―テントウムシは何処に消えた?―

2011年10月07日 | 農薬

愛読するオーストラリアのWeb雑誌の最近号に、「何処に消えたテントウムシ」と言う表題の話が掲載されていました。申すまでも無く、農薬がその原因で有り、既に、世界規模で騒がれている失踪する「ミツバチ」の主原因とされる「ネオ二コチノイド」系殺虫剤にスッポットライトを当て、訪花昆虫から土壌無脊椎動物、鳥類、土壌昆虫に至るまで、このグループの農薬の増大する被害による生物多様性の喪失に警鐘を鳴らしている話です。 

 

農薬の是非となれば、原体メーカーも製剤各社も、不利になるような事の真相は明らかにしないのは洋の東西に限らず当たり前の話です。発生被害に遭遇した当事者は、理不尽にも限られた情報の中で、唯、因果関係の偽惑に苛まれるのが常と申せます。しかし、日本は世界一の農薬消費国であり、知る人ぞ知るで、「ネオ二コチノイド?」、「消えたテントウムシが生物多様性の喪失?」と、対岸の火事の如く、大袈裟な話と思われる方も多いかも知れません。

 

その話は、こんな切り出しから始まっています。 

「2010年の春、テントウムシの姿が謀ったように庭先から消えているのに気付いた。其の数が少ないと言う事ではなく、全く居ないのである。餌と成るアブラムシが不足しているようにも見えない。一体何処へ行ったのだろうか?夏になってからも観察を続けたが、テントウムシの食べる植物もカビ類の不足も無いのに、捕食昆虫がまったく見当たらない。防除管理に携わる同僚にEメールで尋ねると、シドニー湾から南部クイーンズランド、アデライド平原まで大体的な減少が発生しているとの報告、しかし、西オーストラリア或いはビクトリアでは、其の兆候は無いという」。

 

「近隣では、核果類の有機栽培あり、其の反対側では柑橘類を栽培して居り、豪雨の時は、肥料も殺虫剤も洗い流し、共同利用している灌漑クリークに流れ込んでいる。其の所為かどうかは不明であり、昆虫の生息分布は測り様が無く、オーストラリアからテントウムシが消えたとしても、それを心配して調査を始められる程の資金を負担できる者が何処に居ようか・・・・・・」。

 

実は、「消えたテントウムシ」には、何もニュース性はありません。背景にあるのは、訪花昆虫であるミツバチの1990年代から始まったcolony collapse disorder (CCD)蜂群崩壊症候群」の世界的な現象であり、オーストラリア国内でのIPM(総合的病虫害管理)等、其の研究調査に当たるべき関係組織の予算関係の不透明性を衝いた話から始まり、核心は、「ネオ二コチノイド」系殺虫剤の持つ化学成分の高度な浸透持続特性、生態系へ重大な影響、生物多様性の喪失への危惧とにありました。

 

―巣箱に戻るミツバチーWikipediaより

「ネオ二コチノイド」は、オーストラリアでは1990年代始めから論争課題ではあり、このグループの殺虫剤は、ニコチンから派生したネオトキシンですが、幅広い範囲の吸汁食害昆虫に高い活性を持ち、哺乳類には比較的安全とはされています。日本では、クロロニコチル系のアセタミピリド商品名モスビランイミダクロピリド商品名アドマイヤーチアクロピリド商品名バリアードニテンビラム商品名ベストガード、チアニコチニル系の、クロチアニジン→商品名ダントツチアメトキサム商品名アタクラフラニコチニル系のジノテフラン商品名スタークルアルバリンと、「ネオ二コチノイド」系殺虫剤は、有機リン系農薬の後継殺虫剤として、その豊富さには事欠きません。

「ネオ二コチノイド」系殺虫剤では、世界で最も多く使われているのが「イミダクロピリド」であり、19991年にバイエルクロップスサイエンス社から上市され、世界120カ国以上に輸出され、140種以上の作物に使われているそうです。オーストラリアでは、150種近くの登録製品にイミダクロピリドが含まれ、種子処理、葉面防除、獣医学や公衆衛生、芝生や家庭園芸等の農園芸分野から獣医学分野、一般家庭用等、有機リン系殺虫剤に替わり至る所で利用されていると言っています。 

 

バイエルクロップスサイエンスの特許は、2003年に失効し、今や他の多くの会社が「イミダクロピリド」を製造して市場参入しています。バイエルクロップスサイエンスの後継品の「クロチアニヂン」は、特に作物へ持続性が高く、残留成分は大変移動し易く、又、「イミダクロピリド」より遥かにミツバチに対する毒性が高く、土壌昆虫などの毒性もあり、土壌への利用には赤信号とされています。

 

「クロチアニヂン」は2007年にオーストラリアでは登録され、住友化学が「サムライ」の商品名で、りんご、なし、ぶどう、核果類用にと売り出し、「ミツバチ」への毒性が散布後数日に渡って持続する事を警告はしているそうです。

 

虫媒花の「りんご」、「なし」、「ぶどう」や「核果類」の受粉に欠かせない、ミツバチやその他の訪花昆虫を考慮なしには、農薬登録は有り得ないと思われますが、其の答えは簡単です。本剤は訪花昆虫への慢性毒性であり、農業目的の受粉活動に供される蜂類は本来使い捨てであって、結果的に得られる受粉効果には支障ないと言う事のようです。

 

        ―訪花中のミツバチー

その問題とされる蜂群崩壊症候群ですが、国連の環境プログラム(UNEP)は、ミツバチの死について、ネオニコチノイド系殺虫剤のクロチアニヂン及びイミダクロピリドが多大なリスクとなって居て、それは、薬剤の高度な浸透性にあり、種子に被覆された化学成分が根から植物体を通して花まで移行し、ターゲット以外の訪花昆虫の潜在的な慢性中毒を惹起していると、最近報告しています。

 

研究室での試験結果では、そのような薬剤の化学成分が、ミツバチの方向感覚を失わせて帰巣の記憶脳代謝を阻害し、死に至らしめる事が示されたとの事です。

 

尚、本件に関しては、船瀬俊介氏が既に、想像力たくましく書き立てた本、ー悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」、ミツバチが消えた沈黙の夏」ーで発表していますが、其の核心を何処まで突いているかは、中身を読んでいないので分かりません。

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