いつも小さな身体に元気はつらつ、14才のチワワの菜々子ちゃんですが、6年前に子宮蓄膿症で大変な思いをしましたが、その後は元気に過ごしていました。
*内容に手術中の写真があるので、苦手な方はご遠慮下さい
今回は、「お腹が張って昨日からご飯を食べない」とのことで来院されましたが、顔つきはそんなに悪くなく、一般状態も特別異常を感じませんでしたが、お腹を触ってみると確かにパンパンに張っています。
流石に正常レベルでは腫れない大きさなのでレントゲンとエコーを見てみると・・・
↑レントゲン所見(お腹が真っ白で腹腔臓器が辺縁に押しやられています)
↑エコー所見(嚢包状の大きな腫瘤が腹腔を占拠していました)
レントゲンとエコーの所見を見た時に、かなり悪いイメージを持ちましたが、それにしては、菜々子ちゃんの一般状態がそれほど悪くない事を考えると、まだ間に合うのではという期待感を持って診断を進める事にしました。
腹腔内に腹腔臓器の位置関係が分からなくなるほどの巨大腫瘤が存在した場合、考える項目としては、
1.転移所見があるかないか?
2.摘出できるものか?(生命活動に必要な重要器官を巻き込んでないか、もしくは重要器官そのものではないか)
3.摘出に必要な麻酔に影響を与えるような併発疾患が存在するかどうか?
になります。
しかし、今後の判断基準に関わってくる1と2に対して、腫瘤が大きすぎる為にレントゲンやエコー検査の情報のみで判断するのは、情報としてかなり不足した状態と言えます。
そこで、飼い主の方と相談して、1と2に対してCT検査にて判断する事になりました。
3については院内検査で特別影響を与える大きな異常はないと判断しました。
↑CT画像の1つ(腫瘤が脾臓から発生している像が認められます)
CT検査の結果、腫瘤は脾臓から発生しており、幸いにもその他重要な器官は巻き込んでおらず、転移所見もないとのことでした。
今回のCT検査は「iVEAT福岡VSP」の宮林先生にお願いしました。
様々なリクスを伴いますが、各種検査結果から手術適応な状態でしたので、その旨を飼い主の方をお伝えした所、手術希望というお答えを頂いたので、実施しました。
↑手術所見(脾臓に多数の嚢胞を伴った腫瘤が存在)
↑摘出した脾臓の腫瘤
手術中の麻酔は予想以上に安定しており、癒着も無くスムーズに終える事ができました。
術後の合併症も無く、翌日から食欲もあり、数日してお家へ帰りました。
↑術後の菜々子ちゃん(可愛い顔をして元気になると怒るんです)
摘出した腫瘍の病理学的診断名は「多数の空砲形成を伴った未分化肉腫」で、悪性腫瘍ということですが、腫瘍の異型性が低く、核分裂指数も低い事から、転移が無ければ比較的予後良好とのことでした。
今回の病理検査は「動物病理診断センター」にお願いしました。
いっときは転移の有無を観察する日々が続きますが、日常生活に戻れた元気な菜々子ちゃんをみると、頑張ってよかったと思える事例でした。