熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

雨ニモマケズのホワイトサポテ「モルツビー」

2013年01月16日 | ホワイトサポテ

 知人の圃場にホワイトサポテの樹があります。
 2010年1月末に接木で複数品種を導入しましたが、度重なる台風のため2011-2012年冬に初出蕾を迎えたときには「スマザース(Smathers)」しか残っていませんでした。
 そのときは「接木2年で出蕾したね」と喜んでいたのですが、「スマザース」は葯の発育が悪い品種(タイプⅠ)のため着果せず、子房が直径1cm強になると全て落果しました(写真1)。

 そうなると「受粉樹が欲しい」と思うもの。
 2012年3月末に、葯と子房の両方の発育が良い(タイプⅢ)の「モルツビー(Maltby)」を「スマザース」と同じ樹に高接ぎしました。
 高接ぎは成功し、同年5月中旬には新葉を展開させました(写真2)。



写真2.高接ぎが成功した「モルツビー」



 ところが、2012年は数多くの台風が襲来しました。
 この圃場がある沖縄島北部地域は9月15-16日に接近した「台風16号」で大きな被害を受けました(写真3)。



写真3.台風16号で落葉した「モルツビー」



 写真3でわかるように、同じ樹内で高さが約1m違うせいか、品種特性のためか落葉の違いが見られます。
 高い位置にあった「モルツビー」は、ほぼ落葉してしまいました。

 しかし、生育旺盛なホワイトサポテはその後2回の台風襲来にも負けず11月中旬には大半の枝で葉を茂らせました(写真4)。
 このときホワイトサポテの新芽はカタツムリの食害を受けやすいので注意が必要です。
 この圃場では、ペットボトル(500ml)の飲み口側1/3を切り捨てて作った容器にカタツムリ用の誘引殺虫剤を入れ、薬剤が雨に当たらない様にして有効に使っていました。
 このやり方の欠点は、ペットボトルが風で飛ばされることですが、ここでは針金ハンガーを半分に切った固定具を使い問題を解決していました。



写真4.台風約2ヶ月後に新葉を展開させる「モルツビー」



 そして2013年1月中旬には、一見台風被害がなかった様に樹が回復しました(写真5)。



写真5.台風約4ヶ月後にさらなる回復を見せる「モルツビー」


 
 さらに嬉しいことに、「モルツビー」の枝の2箇所から蕾が出てきました(写真6、7)。



写真6,7.「モルツビー」の蕾



 高接ぎから1年弱、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、夏ノ台風ニモマケズ、度重なる試練から復活した「モルツビー」に生命の力強さを感じました。
 今後、タイプⅢの「モルツビー」が単独で結実するか否かに注目したいと思います。

 そして、台風被害をあまりうけていない「スマザース」も出蕾・開花・結実すれば良いのですが・・・。


〇参考文献
 ・「熱帯果樹の栽培 完熟果をつくる・楽しむ28種」.2009.米本仁巳.農文協.
 ・「WHITE SAPOTE VARIETIES: PROGRESS REPORT(ホワイトサポテの品種に係る成果報告)」.Robert R. Chambers.California Rare Fruit Growers; Vol.16; 1984 Yearbook; pp.56-65.




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