熱帯果樹写真館ブログ

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ピタンガ(品種:ラバー)を接木しました

2010年01月10日 | ピタンガ
 ピタンガ(Eugenia uniflora L.)は、フトモモ科に属するブラジル原産の常緑低木果樹です。
 ピタンガは、樹形が美しく(垣根仕立ても可能)、葉に光沢があり(新葉は赤みを帯び)、病害虫の被害が少なく、手間をかけずに果実が結実し、果実は緑色からオレンジ色、赤色と鮮やかに変色する等、「育てやすい、美しい、果実(食用)が着く」という優れた特性から、沖縄県では主に庭木果樹として利用されています。

 しかし、これほど優れた特性を持ちながら経済栽培果樹になり得ないのは、果実を食した際に独特な樹脂臭とえぐみを感じるからです。

 ところが、数年前に米国のカリフォルニア州からピタンガの優良品種が導入されました(米本ら、2006)。
 そして、導入者の米本氏が雑誌「現代農業(2008年2月号)」に「(ピタンガの優良品種である)ラバー(Lover)とバーミリオン(Vermilion)は この(独特の)においが少なくて糖度も高く美味です」と記したことから、一般の熱帯果樹マニアも「ピタンガに樹脂臭が少ない優良品種がある」と認識し、「食べてみたい!」という衝動に駆られました。
 その後、2009年に専門誌「熱帯農業研究」でラバー、バーミリオンのデータが改めて発表されました(表1)。



表1:ピタンガの品種別 果汁糖度及び滴定酸度、樹脂臭、食味の季節的変化


(「米本ら、2009」より抜粋加工)


 表1を見ると、果汁糖度や滴定酸度では、優良品種も実生も有意差はないですが、数値化できない樹脂臭とえぐみ、食味で季節を問わずに優良品種に優れた結果が見られます。
 同品種では春実より秋実の糖度が高く美味しそうです。
 また、優良品種間では差異は見られない様に思います。

 さて、ここからが今回の本題です。
 2009年11月に知人が石垣島に行くことになりました。
 石垣島では、この数年間でピタンガの優良品種が出回っていますので、穂木が確保できれば入手してきて欲しいとお願いしました。

 11月中旬に知人は、ピタンガ「ラバー」の穂木を持ち帰ってくれました。
 穂木を受け取った私は、直ちに別の知人が所有している地植えのピタンガ(2008年夏に播種)の枝先(亜主枝)に接木(高接ぎ)させてもらいました(写真2)。



写真2:1樹に対し穂木1本を接木(11/16)



 そして、接木完了から1ヶ月強が過ぎた12月21日。
 穂木から発芽しているのを確認しました(写真3)。



写真3:1番最初に発芽した穂木(12/21)



 一番最初に発芽した穂木の太さは直径約5.7mm、長さは約5.5cm、台木部分の枝の直径は約5.0mmでした。

 更に10日後の12月31日、一番最初に発芽した穂木の芽はさらに大きくなり(写真4)、他の樹でも発芽を確認しました。
 接木が成功すると本当に嬉しいです。



写真4:一番最初に発芽した穂木(12/31)



 このまま順調に育ち、数年後には沖縄本島北部でもピタンガの優良品種の味見ができることを夢見ています。


○ 参考文献
 ・「ピタンガ ,Eugenia uniflora Linn.(E.michelii Lam.)品種‘Lover’と‘Vermilion’の果実肥大特性と果実品質」.米本仁巳・緒方達志・香西直子・近藤友大・雨宮俊・樋口浩和.2006.園芸学会:平成18年秋季大会;ポスター発表(孫引き).
 ・「あこがれの熱帯果樹品種 国内で作れそうなものは?」.米本仁巳.2008.現代農業;2月号;p.270-275.
 ・「沖縄におけるピタンガ(Eugenia uniflora L.)品種‘Lover’と‘Vermilion’の果実の生長と品質」.米本仁巳・緒方達志・香西直子・近藤友大・樋口浩和・野村啓一.2009.熱帯農業研究;2(1);p.8-14.