6月20日(日曜日)

午前11時

娘をスケボーに乗せて渋谷駅前、スクランブル交差点へ行く。
ツタヤ、スターバックスの前に警官が10名ほど居て、警護車やパトカーも数台、瞬(またた)いている。
ものものしい雰囲気のほうに向かってみると、その警官の輪に囲まれて明らかに渋谷の路頭からは浮いた身なりの人たちが30人ほどの弱々しい集団を形成していた。
このヒッピーなんだか、NPOなんだかよく分からない、的な人たちの中に今回の主催者、福井浩さんが落ち着いて立っていた。

彼は始めから覚悟していた。「最初から人が集るわけはない。これは継続して行く運動だ。」

だから、津波のように渋谷をウネる群盲たちが奇異なる目で我々を見ようと、それは僕もおかまいなしだった。
しかし5歳の娘は、すっかりうつむいて、つま先の視線に閉じこもってしまった。そりゃ恥ずかしいにきまってる。

デモ、パレード、の類いに参加するのは僕も初めてだ。

「ウニャウニャフニャ ムニャコレコレ ヘンターイー」
「カクカクシカハ ジカマキダキォ フロイレロー!!!」
棒読み日本語のシュプレヒコールは嫌いだ。
芸がない。
ということは、聴衆に対する愛がない。
ユーモアのないものに、人は振り向かない。
人間だからだ。



あと、僕は拡声器が嫌いだ。
サウンドシステムとして、最悪だ。
低音が零。ハイが痛い。

到着して1分で最初にした僕の主張行為は、参加したデモ隊の拡声器持ってる人の肩をつついて「音を圧倒的に下げたほうがいいよ。あと、人に向けないこと。」と伝えることだった。

ただでさえ、東京の公然であまり認知されて居ない「デモ行為」をやって「何かをつたえよう」としているのに、この無神経さは何だ。伝わるわけがない。表現だぞ、オイ!

などと思いながらデモ隊として歩いて居ると、今度はマイクを持った青年が、裏返った声でヒステリックに、内容は伝わらないが「怒鳴っている」ことは分かる演説を始めた。VO的に、この人は腹から声だしたほうが良いと思った。拡声器使ってるから、怒鳴らなくても聴こえるんだぜ、青年♪

目一杯お洒落した5歳の娘連れて来て、愉しく代々木公園までデモンストレーションしたかったのに、ヨシてくれよ。デリカシーのない。恥ずかしいよ。娘はすっかり虚ろな目で、口に含んだ水筒のストローと僕の手を離さないことで耐えて居た。

ただでさえ、10数名の警護の警察隊とピカピカ光ル数台の警護車に囲まれて、こっちはたったの30人くらいで、日曜日の渋谷の全衆目を一身に浴びてるんだぜ。だったら、センスよくやろうよ。センス磨こうよ。デモ以前の問題だよ、これ。ユーモアこそが活力を具現化して、世の中を変えるんだぜ。



そこで、僕がしたこの日の二番目の主張行為は、青年からマイクをトルことだった。
だが畢竟、今度はマイクを手にした僕が演説をしなくては、ならなくなった。

「朝から拡声器でスミマセーン」少しローヴォイスを意識して、低音気味に喋った。感度の好すぎるマイクを手にした時のように。

僕らが今何を主張しているのか、の前に何をしているのかを説明しなくては、行き交う人々には余りに唐突だろうと思った。
ただでさえ、日曜日の渋谷に用の在る人たち、の興味の対象からは、かけ離れた我々の行進だ。
なるべく平易な言葉を選んで云った。
「普天間の基地の移転問題についてパレードしています。賛成や反対という対立軸に落とし込まれるのではなく、まずは知らないことを知っていこうという思いで、今代々木公園に向かって歩いています。12時からフリーコンサートをやるので是非来てください。朝崎郁恵さん、AILIE、ラキタや、ボク三宅洋平などがライブします」的なことを喋った。


救いだったのは、ネイティブアメリカンの楽器を持った人たちが、たゆまぬ大らかなビートを出し続けてくれたこと。
そして、最後尾を歩く奄美・徳之島の唄い手、偵一馬さん達や沖縄から来た人々の、屈託のない笑顔。


パルコ前らへんを通る頃には、それでも少しづつデモ隊は吹っ切れて来て、なんとなく堂々と歩き始めた。
お世辞にも上手ではないが伸び伸びと踊る女性が現れたりした。仮装をした男性は、既に着ぐるみの自分に成りきっていた。

僕がPASS THE MICして、他の人にマイクを譲ると、先頭を警護していた警官に聴かれた。
「沖縄の人?」


いいえ違います。生まれは沖縄ではありません。という意味深な答え方をしておいてから、ふと思った。
東京の者が基地問題に言及することは、そんなに特別なことなんだろうか?
はい、沖縄から来ました!と輝くような目で答えれば、彼は喜んだろう。

それでも、日本国の首相にでも成ったような気分じゃないか。
この小さな移動集団のために、この物々しい警護。
なるほど、きちんと申請をして通れば、こうして合法的に渋谷の公道を使用して表現行為できるのか、と。
そのためにわざわざ警護までしてくれるなんて、ありがたいサービスである。
警察も法律も、使い用なんだな、と。
なるほど、僕が主権者なのだな、と。



かくして、小さきデモ隊は、全員の勇気を振り絞って代々木公園まで辿り着いた。
何処かののアーティストを観るために公会堂前らへんに、同じ色を身にまとった、あどけない顔した少女たちが同じ色した団扇をあおぎながらこちらを観たり、写真を撮ったりしている。あの子達を、どうやって誘ったら、一緒に歩いてくれるかな。



ライブは、トークライブも含めて、非常に意義の在る、素晴らしい一日となった。

娘も、他の子供たちとたちまちに愉しい社会を形成して、デモの時とは打って変わって、伸び伸びと代々木公園を走り回っていた。初めてのデモを、本当によく頑張ってくれたとおもう。次はもっと面白くするから、また参加してくれるといいな。


普天間基地のことで、政治に揺らぎが生じ、世論調査も含めてそれら全てが大きく観れば決められた「路線」であったことに気づいた福井さんたちが、「兎に角、今、何か動きを起こさなければ」と、企画したのが2週間ほど前のことだったろうか。
奇跡的に代々木公園野外音楽堂の空きが出て、実現した。宣伝期間も短かった。

去年の春風の時は後ろの柵まで満員で、それに巻き込まれるようにして通りすがらの人々も人の輪を成していたが、この日はざっと100~150人くらいが、御座敷いてのんびりしている。それはそれで和やかで、良かった。梅雨の晴れ間に、素敵な一日だった。

日本に基地が要る、なんて本気で思ってる人、いるんだろうか?
米軍が居ようが、自衛隊が頑張ろうが、54基の原子力発電所をどうやって護れるのか?
もうこの時点で、日本の外交に「戦争」なんて選択肢は存在し得ない。
1基でも攻撃を喰らったら、壊滅じゃないか。



青空すら見える気持ちの良い夕方に僕はギター1本で唄った。
ブルースハープのHIROKINGも最後の手芽口土で、飛び入りしてくれた。
会場に来てくれてる面々の中には、いつもライブに着てくれる愛しきヘッズたちが結構な割合で居てくれた。
彼らは、こういうシチュエーションで俺が何をやらかしてくれるのかが、愉しみで溜まらない風だった。
あの期待、そして歓声、っていう追い風は、本当に最高の波をつくってくれる。
あとは、メイクするだけだ。
僕は辛辣なことを言いながら、会場が笑顔になる。

出番直前に、福井さんが会場にアナウンスした。

「今日は、会場はこんなもんですが、何故か今ユーストリームで1000人以上が観ていて、現時刻に於ける日本のユーストリーム番組の中で視聴率NO.1だそうです」

これには、励まされた。

ユーストリームの可能性を改めて感じた。
今日の150人足らずで事が終わっていたか、1000人がネットを介して共有できていたかは、大きな違いである。
とりわけこうした、政治的なメッセージがハッキリとしたフリーコンサートの場合はナオサラだ。

BALANCE編集長の稲田さんたちがチームを作っていた。
1000人のユーストリームという存在の後押しを感じた。

そして彼らが、次はデモから参加してくれたら、随分とにぎやかで愉しいデモンストレーションになるのではないかと思った。

チャントやシュプレヒコールを、もっと音楽的で愉しいものにするのは、僕ら音楽家の仕事だとおもった。
今、日本人は、共通のリズムや旋律、ビートを失っている。
昔は日本中が沖縄くらい、独特だったのに。

そして、この音楽的な試みは、友人である植田旭くんたちが率いるウルトラスニッポンの応援の向上などにも、繋がると思う。
少なくとも、彼らはもう10年以上、必死に応援の仕方を研究してきているし、どんなに少数派のアウエーのスタジアムでも立派に使命を果たしてきた。彼らの経験と熱意から学ぶこともある。
サッカーの応援が素晴らしいアルゼンチンなどでは、ロックのコンサートでも観衆のコールが凄い。
チャントや合唱の文化が成熟している。

チャントの文化を、日本につくるんだ。
取り戻すんだ、金に塗(まみ)れていない、みんなの唄。

渋谷の街行く人々が、思わず付いて来て一緒に歩きたくなるような、デモ。




昨日は、音響のハリマオ隊長たち裏方も含めて、全ての人がボランティアで参加した。
其の中に、金持ちは一人も居ない。いや、別に居たって良い。居てくれるほうが、居いんだが。僕の知る限りこういう所に来る金持ちは一人も居ない。今のところ。5万円や10万円ポンと、寄付していってくれるような人。100万円くらい出してくれる企業。居ない!
でも1000円出してくれる1万人に問い掛けるほうが、全然いいな。そういう人は、いくらでも居るでしょ。

千葉や茨城、高尾山から駆けつけた人も居た。
だから、次は東京の人がもう少し、たくさん来たらいいなと思った。

なんせ、気持ちの良い、愉しい一日だったから。
そして、トーク出演者たちの知識から学ぶことも多くて、本当に知りたかったことをたくさん知ることが出来た。

そして何せ、ライブが良かった。
ギャラのためじゃない演奏が、みんな良かった。






ファンキーな輩よ、こうした物々しいパーティを浮き上がらせに、各地で集って欲しい。
近場での機会は逃さずに、集ってみて欲しい。
必ず、持ち帰れることがあるし、貢献できることもある。
ノリがいい、踊りが上手、唄が好き。これらが、こうした状況でどれほど大きな力になることか。



色んな意見の人が集って、愉しく融合すると、プライドなんか平気で横に置いて、新しい価値観を積み上げる切っ掛けが創れるんだ。デモって、フリーコンサートって、愉しいよ。







この活動は、継続する。



*情報を広める、とにかく参加してみる、小銭でいいから寄付する。欲しいのはANTAのACTION。
 それは、世界を変えるためのものではなく、世界をつくるために必要とされる力なんだ。



RESPECT & LOVE
全てのクルーの皆さん
集ったお客さん
ネットの向こうの聴衆の皆さん
辺野古、高江、高尾山、六ヶ所村、祝島、その他、社会の不条理と闘い、あるべき社会を形成しようと奮闘されている皆さん
代々木公園
昨日の最高に快適な天気(そして今日は夏至)

そして国立YAHMANクルーの福井さん、声掛けてくれてありがとう!





6/20イベント詳細は以下のようなものでしたー

『ピースフルニューアースセレブレーション (平和に満ちた新しい地球への祭り)』  
http://peace-creation.com/

日時 2010年6月20日(日曜日)
開演 12:00
閉会 20:00 
場所 東京渋谷区代々木公園野外ステージ
※入場無料
※雨天決行

ピースパレード 渋谷11:00スタート~代々木公園12:00到着(10:45渋谷駅ハチ公前集合)

【概要】
来たる6月20日日曜日、代々木公園にて、ネオ琉球弧ネットワークによる『ピースフルニューアースセレブレーション』を開催します。
ピースフルニューアースクリエーション(平和に満ちた新しい地球の創造)、それが私達の願いであり、成して往くべきことです。
この理念を元に私達は、この日を皮切りに、それぞれの願い、祈りと行動を持ち寄り、創造し、新しい地球へと届けていきましょう。
平和と自然環境へのメッセージに満ちた音楽、芸術、トークを通して、今、琉球弧で、世界の様々な場所で起きていることをシェアしましょう。

【目的】
・辺野古、徳之島への新たな基地建設という政府決定に対する断固とした白紙撤回の要求
・沖縄の民意を踏みにじったマニフェスト無視の政府決定に対する反対表明と前政権の決定を踏襲すると表明している菅新政権への撤回要求
・ネオ琉球弧理念に基づいた琉球・奄美群島の連帯と世界平和のためのネットワークの創造
・琉球弧の持つ類い稀なる豊かな自然環境と貴重な生物多様性の保護・保全

≪メインステージ≫
・トーク出演者(予定・順不同)
星川淳(日本グリンピース代表)
坂田昌子(虔十の会)
志葉玲(ジャーナリスト)
ゆんたく高江
US for OKINAWA
他、各関係平和団体
また、奄美群島における加計呂麻島の大規模な森林伐採問題、ならびに徳之島の基地建設における黒うさぎをはじめとする絶滅危惧種、希少生物への破壊的影響などの件についても識者を招いて言及。

・映像メッセージ(予定・順不同)
徳之島町長・天城町町長・伊波宜野湾市長

・ライブアーティスト(予定・順不同)
朝崎郁恵
偵一馬
Ailie
真砂秀郎
ジンタらムータ
三宅洋平((仮)ALBATRUS)
ラキタ
たける
The ARTH
他、多数のアーティストによるパフォーマンスを通じ、平和と環境への思いを訴えていきます。
(演目、出演者は予告無く変更になる場合があります。ご了承ください。)

《ピースパレード》
会場である代々木公園までアピールデモを遂行します。
基地建設反対と環境の保全を訴えながら、誰もが気軽に参加出来るような開かれたアピールデモ=ピースパレードを目指します。
それぞれの個性を生かし、感性を開いて、ピースフルでカラフルな思い思いのスタイルでご参加ください。
途中参加大歓迎!
渋谷駅から代々木公園会場までを平和への祈りを込めてパレードします。

《これから》
これは継続するアクションです。
このアクションは7月参院選~8月日米合意~9月COP10~10月PEACE MUSIC FESTAとの連帯~11月オバマ来日などのタイミングに合わせ、都内各所及び琉球弧各所にて断続的に行われます。
また様々な基地反対運動やイベントとリンクし、協力しあいながら、大きなうねりを起こしていきたいと考えています。

注意点
※出店・出展はありません。
※自分で出したゴミは必ずお持ち帰りください。

お願い
※他の人に迷惑となるような行為はお控えください。
※カンパ大歓迎! このイベントは有志による完全なボランティアによって作られています。
ぜひカンパにご協力ください。

主催
ピースフルニューアースセレブレーション実行委員会
http://peace-creation.com/

共催
PEACE NOT WAR JAPAN
SPRING LOVE~春風~実行委員会有志
NEO琉球弧ネットワーク

協力
沖縄を踏みにじるな!緊急アクション実行委員会


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