Blog満賊亭

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介護入門

2005年09月02日 | 雑記
 同居している祖母の痴ほうが静かに進行中。
 
 2年前、祖母の介護度が2から3に悪化したこと頃からにわかに本格化した我が家の介護体制は、昨年の祖父の急逝により新たな局面に突入した。

 図太いところが売り?の祖母だったがすっかり無気力になってしまい、どうにか気力を持たせようと着替えなどは極力祖母にさせているが、黙って見守れば靴下を同じ足に履こうとしたり脱いだズボンを再びはきだそうとする現実を目の当たりにすると、なんともいえない悲しさがこみ上げてくる。

 それでも祖母には野菜や魚を絶対食べない頑固な意思と、甘いものや煎餅を好む口、そしてデーサービスに通える足腰がある。デーサービスを無理なく受けられる介護保険は貴重なもので、平日の昼間以外の時間と土日の二日間を家族で介護にあたるだけで済んでいる。介護当初はゆとりを失った家族間での衝突が絶えなかったが、最近はそれぞれの負担が偏らないよう父・母・子で役割が分業化され連携が取れるようになった。当初は大惨事だった『しもの失敗』も、最近は第一発見者の号令のもと抗菌手袋がホイホイと手渡され、現場処理係、オムツ処理係、お風呂入れ係に分かれ流れるように対応している。

 これが自宅での完全介護となったらどうなるだろう…。母親への負担が今以上にのしかかる。目方の多い祖母の入浴は男手でないと無理だろうから父親と自分の仕事か。そして極度の食わず嫌いはホームヘルパーをも困らせるに違いない。そんな日がいつか来るのだろうか…。



 昨年の芥川賞受賞作品モブ・ノリオ氏の『介護入門』はタイトルとは裏腹にショッキングな内容の作品だ。

 玄関先の石畳で頭蓋骨折し下半身付随となった祖母の介護だけに生きる著者は、介護という戦争に従事する兵隊の本音を歯に衣着せぬ口調で洗いざらいぶちまけている。読者に語りかける独特なリズムとスレた文章は読みにくく共感を得にくいかも知れないが、この本を薦めてくれたカルチャースクールの老婦人は、にっこり微笑んで
「永年介護に従事した私は溜飲を下げることができたわ」
こう感想をもらしていた。
ほんの少しだけ、その感想を共有できる今日この頃。明日の食事当番は父親と自分、どちらになるだろうか。

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