Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ウブッド

2017年01月15日 | バリ

  僕はバリ芸能を本格的に学ぶようになった30数年前から今まで、ウブッドにはあまり永居したことがない。ここに宿泊すれば買い物がしやすいとか、夜に上演される芸能の舞台を気楽に見れるという理由から、何度か宿泊したことはあるが、一人ならば確実に日帰りで、滞在時間も1時間弱である。
  1980年代前半からウブドは賑やかな村だった。といってみたところで、当時を知る友人なんてほとんどいない。賑やかとはいえ、その賑やかの度合いは今の10分の1くらいだった。車の中心は観光客を乗せた白タクかベモの時代なんだから、今の渋滞と路上駐車なんて想像できなかった。あのころからあった店は今でも何軒かは残っているが、そんな時代の面影はもうない。
  ぼくがウブドに行くもっぱらの目的は本屋である。ここにはガネーシャブックショップという比較的バリ関係の書物が充実した本屋がある。ここができてから、年に一度はこの店を訪れる。発見があることもないこともあるが、出向くことが慣習になってしまっているから特に気にしない。訪れることで一つのミッションが完了したように気分になる。かつてはガネーシャに行くついでに買い物でもしようか、なんて気分にもなったが、渋滞する道路のことを考えると躊躇するようになった。不思議なものである。車の多いデンパサールに宿泊しているくせにウブドの渋滞にうんざりするのである。
  変わりゆくのは当然である。別にそれをとやかく言っているわけではないし、初めてこの街(もう村と書くには少々勇気がいるようになった)を訪れる観光客にとっては「こんなものなんだろう」と街歩きをする。それでいい。まさにこれが今のウブッドなのだから。でも私はここに住んでいるわけではないから、30年以上もの間、行くたびに段階的に変化していく街についていけなくなってきているのだ。別に悲しいとも、そういう自分が情けないとも思わないが、こちらも自然体でウブッドに接することができればそれでいいと思っている。背伸びして相手に合わせようとすると、いずれはへとへとなってしまうものだ。