院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

このたびの地震に寄せて(15)

2011-04-02 17:51:14 | Weblog
 とうとうPTSD(心的外傷後ストレス障害)の「亡霊」が出た。いつかは出ると思っていたけれども、ついに出た。

 精神科医という肩書きのタレント、香山リカさんが新聞でちょろっと言ってしまったのだ(中日新聞朝刊3月31日付、愛知県版)。もっとも、彼女が言わなくても誰かが言っただろうが・・。

 PTSDのことを伝えるには、3月29日のこの欄で述べたように、たくさん注釈を付けなくてはいけない。香山さんは注釈もなく「2,3ヵ月後に起こるといわれている」と述べた。これはデマの一種だと思う。PTSD概念を撒き散らしたDSM(アメリカ精神医学協会の精神疾患診断統計マニュアル)にさえ、そんなことは書いてない。

 そもそもDSMは「状態像だけで診断する。原因は問わない」という「哲学」をもっていたはずである。それなのに、PTSDだけ原因を問うのである。つまり、「トラウマ」がなければ、PTSDとは診断できない。これは自己矛盾ではないか?(つまり、政治の圧力に負けて、「哲学」を曲げたと思われても仕方がない。)

 この概念が俗耳に入りやすいのは、「トラウマ」の捉え方がどういうふうにもできるからだ。「トラウマ」のまったくない人なんていやしない。すでに述べたように、この概念は政治、あるいは補償がらみだから、いっそう曖昧になる。

 このたびの災害では、PTSDなぞというインチキの診断をすると、禍根を残す。「驚愕反応」とか「喪失反応」など、控えめに考えておいたほうがよいだろう。間違ってもPTSDを確立した疾病概念として取り扱ってはならない。

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