院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

うつ病の発見(2)

2017-10-17 13:09:22 | 医療

(躁状態のイラスト。nurse-diaries より引用。)

 自殺がもっとも多い精神疾患は、うつ病である。私は何度も苦い思いをしてきた。自殺した患者さんたちには、これといった悲哀体験や過酷労働がなかったのだ。だから私も「まさか」と思うことが多かった。(悲哀体験がまったく無関係とは言い切れないけれども、うつ病の真の原因は現在でも不明というほかはないのだ。)

 不謹慎なようだが、わかりやすいので、自殺した「電通」の若い美人社員を例に出させていただく。彼女はじつは、過酷労働の前にすでにうつ病だったという仮説が成り立つ。「電通」の過酷労働体質が最大の原因だと決めつけるなら、もっとうつ病が大量発生しなくてはおかしいのである。

 ありうるストーリーはこうだ。まず美人社員は原因不明のうつ病にかかっていた。だから休養が必要である。なのに「電通」は彼女に労働をしいた。彼女はSNSに「もうダメ」と書き込んだ。(これがのちに遺書とみなされた。)

 ここでは一般に流布されている因果関係が逆転している。すなわち「過酷労働→うつ病」ではなく「原因不明のうつ病→労働の強要→もうダメ」という逆の順序である。うつ病に自殺が多いことは上に述べた。なぜそうなるかは解明されていない。

 ところが「うつ病の発見(1)」で述べたように、正常反応としての「悲哀体験→うつ状態」という図式がこの件にも適用されてしまい、マスコミや一般人はもちろん労働基準監督署や裁判所までが、これが真相だと思い込んでいる。

 学問的に冷徹に考えるなら人情は排除し、正確に因果関係を考察しなくてはならないと肝に命じさせられた一件だった。

 ※今日の俳句(秋)
    隣り家の熟れ柿けふはもがるるか

うつ病の発見(1)

2017-10-17 05:19:18 | 医療

(悲しいむ老人(ゴッホ)。ウィキペディアより引用。)

 まずもって躁うつ病が発見された。昨日まで躁状態で大騒ぎしていた人が今日はしょんぼりしている。これは誰の目にも不思議に映った。

 のちに躁状態にいたらない、うつ状態のみの病態が注目された。私の若いころは、双極性のうつ状態と単極性のうつ状態の異動が論議された。(今では別の疾患ということになっている。特効薬が別だから。)

 身内が亡くなるような強烈な悲哀体験にさらされると、誰でも「うつ状態」になる。これは「正常反応」だから薬が効かない。たとえば子供を亡くした親が、薬を飲んで急ににこにこするようになったら、かえっておかしいだろう。

 だから病としての「うつ病」と悲哀体験の正常反応としての「うつ状態」は、まったく別物なのだ。なのに最近では両者は混同されている。つまり「過酷体験→うつ病」という図式が一般に流布している。これは「正常反応」を敷衍しただけで、誤りである。

 ところが一般人はおろか、労働基準監督署や裁判所さえそう考えるようになった。だがこれは、とんでもない間違いなのだ。(長くなりそうなので続きはまた次回。)

 ※今日の俳句(秋)
    天井の節目に和する秋の蝿

MCとはなにか?

2017-10-17 00:04:04 | 芸能

(情報ライブミヤネ屋。Dimora より引用。)


 CMではない。MCである。この略称は突然使われ始めた。どうも司会者のことらしいのだが、原語はなんなのか未だに知らない。また、どうして省略する必要があるのか?

 CMという略称がむかし出てきたときに、これもなんの略称なのかわからなかった。CFならわかる。コマーシャルフィルムの頭文字だ。だが、CMは頭文字ではないから、わからなかったのだ。

 勝手に略称を使うのはやめてほしい。まったくテレビ局の驕りというほかはない。

 ※今日の俳句(秋)
    秋雨のつづいてをりし夜半かな