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必殺シリーズ 備忘録

主に各回の名シーンまとめ
※『新仕舞人』『仕置屋稼業』をまとめ中!

第12作 江戸P・必殺商売人 第26話「毒牙に噛まれた商売人」【最終回】

2016年03月16日 | 第12作 江戸P・必殺商売人



【ストーリー】

中村家ではりつが産気付き上を下への大騒ぎであったが、そんな中、勘定奉行が比丘尼姿の女殺し屋に殺された。
下手人の行方が掴めず焦った奉行所では、江戸の殺し屋の元締・蛭子屋卯兵ヱを訪ね「三日のうちに下手人を探せ」と厳命する。
蛭子屋はおせいが下手人だと決めつけ、おせいは江戸中の殺し屋から命を狙われることになってしまった。
だがどうしても今回の件に納得のいかない新次は蛭子屋を探り、下手人は蛭子屋の女・おりんであり、蛭子屋と同心の根来(ねごろ)もグルであることを知る。
この状況に打つ手がない主水は三人に江戸を出るように告げるが、新次はただ一人、蛭子屋の元へ向かう。

【知ってるゲスト】
山本麟一、石橋蓮司、桜井浩子、田中弘史

【名シーン】
①りつ、出産
   出産が近づき念仏を唱える主水とせん。やがて赤ん坊の声が聞こえる。
主水「母上!生まれました!」
せん「はっ!まぁ!いけません、男は入ってはいけません!」
   りつのもとへ向かうせん。主水は一人呟く。
主水「いやぁ、やっと俺も人の子の親か…」


↑ほっと一息つく主水だったが…
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せん「婿殿!りつが!」
主水「はい、どうしました!?」
せん「りつ!」
主水「りつ!おい!」
医者「おう、心の臓が弱ってる!やはりこの年でお産は無理じゃったのう…」
主水「りつ、しっかりしなさい!りつ!」


↑高齢出産でりつの体に異変が!
 こんな緊迫した中村家は他の主水シリーズでは皆無だよな…。

②秀英尼の秘密
    殺し屋に狙われたおせいと正八を寺にかくまう秀英尼。

おせい「庵主さん、あなた私たちの素性を御存知だったんですね?」
秀英尼「はい、存じておりました」
 正八「嘘つくなよ!師匠、この人何にも知らないよ!」
秀英尼「いいえ、あなた方が殺し屋だということは、とうの昔から…
    死んだ私の父親も殺し屋でした」

↑のんびりした口調でとんでもないカミングアウトをする秀英尼。
 この人これまでもけっこう重要な情報を知ってたりしたもんなぁ。
 例えば17話ではさちがお尋ね者だと知ってたり。
 彼女自身は殺し屋じゃなくても、裏の世界とつながりだけは今も持っていたのかもしれない。

③主水の夢
   秀英尼の寺で寝ている子供たち…その寝顔を見ながら主水は呟く。
主水「子供ってのは可愛いもんだ…」

↑子供の中にふて寝する正八もまぎれている。
 主水にとって正八も可愛い存在だったわけだ。

↑これを想像した時の主水は、自分が殺し屋だということを忘れていたんだろうな…。
 そしてこの二人の笑顔…ラストを知ってると胸が痛くなる。


④おせいと新次、最後の会話
おせい「新さん…」
 新次「えっ?」
おせい「こっち来ない?」
 新次「…」
おせい「また長い旅が始まんだね…」
 新次「ああ…」
おせい「江戸じゃ新さんととうとう所帯が持てなかった…
    はぁ…私達ってよくよく根なし草に生まれついてんだねえ…行くの?」
 新次「荷物を取ってくる」
    新次に近づくおせい。
おせい「今夜この櫛を使っちゃいけないよ」
 新次「そいつはお前に預けとこう」
    歩き出す新次の手をおせいが握る。
 新次「…」
おせい「…」
    新次はおせいの手を離すと出かけて行った。

↑これが最後の会話になるとはおせいは知らない。

↑これから何をしに行くか分かっていた新次には覚悟があったかもしれない。
 最後になるかもしれないんだから、肩くらい抱いてやればいいのに。
 なぜここまで頑なにおせいを拒むのかよく分からない…。


⑤新次の最期
蛭子屋一味の船を襲撃する新次。
おりんを櫛で始末すると、手下の刀を奪い蛭子屋卯兵ヱを殺す。
水中で大勢の手下と戦うが、多勢に無勢で次第に攻撃を食らう。
そして遂に根来の放った矢を首に受け、新次は絶命する。


↑憎きおりんと蛭子屋卯兵ヱを討ち取る新次。


蛭子屋を殺した太っちょの殺し屋を狙う根来。
 漁夫の利を得るのがこいつの目的だ。


↑やっぱり出血の表現は欲しかった。水中での撮影だと難しいのかしら?

↑一人で戦い、一人水中で死んだ新次。もちろん最後の言葉もなかった。
 おせいと逃げることもできたのに、敢えて戦い死ぬことに何の意味があったのか。
 シュールさすら醸し出す新次の水死体…彼もまた無意味な死を遂げた一人だと思う。 

⑥主水殺しシーン
   殺し屋たちが全滅したため、根来は笑いが止まらない。
   そこに主水が現れる。
根来「ヒヒヒ…ヒハハハ…アハハ、アハハ…!」
主水「根来さん!いや~どうも、お役目ご苦労様です」
根来「おう、なんだ中村。なんでこんなところでうろうろして」
主水「あぁ、それが。うちはお産でてんやわんやの大騒ぎ。

   こういう時男ってのはからっきし値打ちのないもんですな!」
根来「そうか、生まれたのか!そいつはめでたい!ようし、お祝いだ、一杯飲みに行こう!」
主水「いや~これはありがたい」
   親しげに主水の肩を組んでくる根来を突き飛ばし、主水は根来を一突きにする。
根来「ま、待てぇ…」

主水「根来さん、あんたは少し深入りしすぎたようだな。
   知りすぎた者は消される。殺し屋の掟を教えてやろう」
   更に斬り付ける主水。
   倒れて悲鳴を上げる根来を奥の草むらに引きずって行き、トドメの一撃を加える。

↑お祝いしてあげようと思ったのに殺されて、ちょっぴり可哀想。

⑦おせいと主水
    新次を探すおせい。だが新次はどこにもいない。
    河原にたたずむ主水を見つけたおせいは主水に問いかける。

おせい「新さんは?ねえ!新さんは!?」
 主水「あの野郎は一人で先にいっちまったぜ…。
    師匠、おめえも無粋な女だな。あの色男はやっと一人になれたんだ。
    冥土まで行って付きまとうことはねえじゃねえか…一人にしといてやんなよ…」
    主水は去って行く。

↑政吉を失った時のおせいはぼろぼろに泣き崩れ、自害までしようとした。
 しかし今回はおせいの表情は分からないし、取り乱しもしない。
 もしかしたら、新次とは永久に添い遂げられないという覚悟があったのかもしれない。
 覚悟があったからこそ、それが現実となった今、取り乱すことなく耐えられたのかもしれない。

⑧中村家の悲劇
   主水は家に戻るが、中村家には多くの人が出入りし、尋常でない様子だった。
主水「りつが…りつがどうかしましたか!?」
   家の中に入る主水。
主水「りつ!」
せん「こんな時にどこをうろついてたんですか!」
   泣き崩れるせん。
   りつは落ち着いた様子で寝ているが、奥には小さな布団が…。
   そこには赤ん坊の遺体が安置されており、主水も手を合わせる。
 

⑨ラスト-商売人たちの別れ
正八は一人川に飛び込み、水浴びを楽しむ。


↑明るい正八に一人は似合わない。でももう正八には仲間はいないのだ。
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    旅立つおせいの前に現れる主水。

 主水「手形だ」
おせい「中村さん…赤ちゃん、お元気ですか?」
 主水「うん、丸々太ってやがってね、女の子なんだ」
おせい「そう、おめでとうございます」
 主水「うん、ありがとう…じゃあ、達者でな」
    一礼するおせい。
    二人は別れると振り返ることもなく歩いて行く。

↑赤ん坊のことについて嘘をつく主水。
 傷心のまま旅立つおせいには本当の事は言いたくなかったのだろう。

↑ある街角に来た時に振り返るおせい。新次がどこかにいるかも…と思ったのか
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街はずれを歩く葬送の列…そこに主水の姿はあった。

↑こ、これがラストシーンとは…。

↑「ガキができちゃこの稼業はつとまらない」と新次は言っていた。
 子供が元気だったら、新次の言う通り主水はここで裏稼業から足を洗ったかもしれない。
 だが運命は結局それを許さなかった。
 
【必殺商売人・感想】
ラストの鬱加減が半端じゃなかったです。
必殺シリーズでは最終回で殉職者が出て悲しい結末になることが多い。
ただ、それは殺し屋の宿命とも言えるわけで、因果応報、報いが返ってきたとも言える。
けど、本作に限っては赤ん坊の死という非常に重い内容でした。
まぁこれももしかしたら主水の数々の殺しに対する報いなのかもしれないけど…。

そして全体を通じて感じたことは、新次の影の薄さ。

必殺の顔である主水、「仕事屋」で元締だったおせい、この両名にはもうすでに十分な貫禄がある(藤田さん、草笛さんの演技力含め)。
新次には「おせいの元夫」「おせいに言い寄られてもそれをかわす」という設定がある以上、おせい以上の貫禄が欲しいところだったけど、結局新次の貫禄ポイントは「お腹」と「謎のモテ設定」だけだったという印象。
恐らく製作者側では新次の貫禄を寡黙さで表現したつもりだったのかもしれないけど、そうするとどうしても無口になり影が薄くなってしまう。
殺しシーンも衣装が全身黒で、武器も小さくて殺し方もコンパクトだし、トドメの台詞も三人の中で一番少ない。
何もかも目立たないずくしで、これでは影が薄くなってしまうはずです。

おせいとも、あくまで距離をとったままで終わる。
普段から一緒にいて十分仲は良さそうだったし、所帯を持つくらいどうってことない気がしたけどねぇ。
殺し屋が子供を持つことを特に毛嫌いしていたようだったし、所帯を持つ=子供を作るって意識があったのか?
黙って死んだので、もはや何も分からないけど…。

それでも中盤以降は新次メイン回も増えたし、最終回の死に様もそれなりのインパクトは残した。
最後死んじゃって、それでよかったのかどうかは分からないけど、おせいが存命のままラストを迎えられたので、それでよかったのでしょう。