【ストーリー】
河口湖畔の貧しい村にやってきた一行。
あぶり出しで赤く染まった逆さ富士について村人から情報を集めるが、彼らの口は一様に堅い。
仕方なく湖に潜って調べた鈴平は、湖底に無数の白骨が沈んでいるのを発見する。
一方その頃、村の百姓たちは年貢米の都合に頭を悩ませていた。
百姓の一人・富蔵の家では嫁のおそでの出産が近づいていたが、赤ん坊を産めば食い扶持が一人分増えてしまう…。
庄屋の久兵ヱは古くから伝わる『逆さ富士』のしきたりを持ち出すと、祖母のおもんに『富士に登る』よう言い含める。
『逆さ富士』『富士に登る』…実はそれは口減らしのために老人を湖に沈めることだったのだ。
納得の行かない富蔵は久兵ヱの屋敷を訪ねるが、富蔵はそこで久兵ヱが代官や闇の米商人と結託して、年貢米の横流しを行っていたことを知る。
富蔵は代官に斬られると湖へ打ち捨てられ、翌朝、おもんも自らの意志で湖へ沈んでいった…。
お艶たちは米の帳簿と『逆さ富士』のしきたりが記された帳面を盗み出し、米の横流しが行われていたこと、そして、しきたりが久兵ヱのでっち上げであることを知り、怒りに燃える。
【感想】
かなりハードな話でした。
からくり人の悪党に対する怒りもこれまでになく激しく、特にお艶さんが相当怒っていたところが見所です。
仕置シーンで最後に残った久兵ヱを取り囲むからくり人たち、誰が殺すんだろう?と思ったら、なるほど口減らしされた老人と同じように「富士へ登る」仕置方法にするとは気が付きませんでした。
こういう回を見てると、つくづく剣劇人最終回ってクソだなって思うんですけど、なぜか今回の脚本の人と剣劇人最終回の脚本の人は同じだったりするんですよね。
脚本家の人が全て決めたわけじゃないとは思うんだけど、こんなハードな話の脚本を書いた人が、あんなふざけた内容の話を書いた時の気持ちが知りたいですわ。
【知ってるゲスト】
山本清、永野達雄、佐野アツ子
【名シーン】
①今回の仕事は?
↑河口湖に映る富士(逆さ富士)の山頂が赤くなる。
ところでこの絵ってなんで逆さ富士だけ雪化粧してるの?
②おもん婆さんの悲劇
おそでは子供を堕胎しようと石段を何度も往復する。
おもんはそれを止めると、おそでにビンタする。
おもん「子を堕ろしちゃなんねえ!そんなことをしたら巳代松が悲しむ!」
おそで「おばあちゃん、見逃して!」
おもん「赤ん坊は神様からの授かりもんだ。いくら暮らしが苦しくとも、産まなきゃバチが当たる!」
おそで「産んだって育ちゃしないもの!それに産めばまた一人食い扶持が増える!」
号泣するおそで。
↑生まれてくる赤ん坊のため、この時すでに自らを犠牲にする覚悟があったのだろう。
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年貢米を納められない富蔵を責める久兵ヱ。
久兵ヱ「婆さんはいくつになったね?」
おもん「へぇ、69になりました…」
久兵ヱ「69か…」
久兵ヱは物も言わずおもんに布施米(最後の晩餐用の米)を差し出す。
↑この女優さんもずっと昔から活動している人なんだって。
必殺関係では「渡し人」の鳴滝忍(高峰三枝子)と親しかったそうだ(ウィキより)。
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久兵ヱ「村に課せられた石高だけはどうしても納めねばならん。
そのためには自分たちの食い扶持のことは脇に置いて、まず口減らしをしなきゃいかん。
それを避けては村が成り立たないのだ。
これは永遠と続いてきた村の知恵だ、しきたりだ。
わしだってこんな役回りはつらい。
だが婆さんが年に食べる分の米を年貢に回してもらえば、この家も村もそれだけ助かるんだ」
おもん「庄屋さん!…」
おそで「おばあちゃん!」
おもん「…喜んで富士に登らせてもらいます…」
↑強い意志で覚悟を決めるおもんだったが…。
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一人になったおもんは爺さんの位牌を抱き、震えている。
おもん「じっちゃ…!」
↑やはり本当は怖かったおもん。可哀想過ぎて見てられん…。
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巳代松「ばっちゃ、富士のてっぺんに着いた…」
おもん「ありがとう、巳代松…」
巳代松はおもんを見ることができない。やがておもんは水に飛び込む。
巳代松「ばっちゃ!ばっちゃ!ばっちゃ!!!」
↑最後は笑顔で旅立つ…。
↑お艶も思わず手を合わせる。もう少し早く敵の企みに気付いていればなぁ。
③怒りのからくり人
からくり人たちは久兵ヱの企みにようやく気付く。
宇蔵「富士に登ろうなんてもっともらしいことぬかしやがって…何が先祖代々のしきたりだ!
村人たちを騙しやがった卑怯な野郎!もう許せねえ!」
お艶「殺してやる…」
久兵ヱの屋敷に乗り込むお艶。
室内に久兵ヱ一味がいることを確認すると、三味線でふすまを乱暴に開く。
お艶「富士に登ってもらいますよ」
お艶たちは久兵ヱ以外の三人を始末すると、久兵ヱを取り囲む。
お艶は悲鳴を上げる久兵ヱの目の前に数珠を差し出す。
場面変わって、唐十郎と久兵ヱを乗せた小舟が『逆さ富士』へ向かう。
『逆さ富士』へ着くと唐十郎は久兵ヱを釣竿で斬り、湖へ叩き落す。
↑足元の物は蹴っ飛ばすわ、ふすまは乱暴に開けるわ、怒り心頭のお艶さん!
↑殺し屋三人に取り囲まれ、数珠を渡される。
ここでばっさりやられた方がよっぽど気が楽だろうけど、そうはいかない。
↑キラキラ輝く水面の上での仕置シーン。
最低最悪の悪党がようやく仕置されて、すっきり!
↑…するわけもなく、悲しい顔のお艶さんでエンド。