長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

300  『野うさぎ』

2016-09-12 21:16:33 | 日記
 舟本恵美第一歌集 短歌研究社2016年8月
かりんの先輩舟本さんとは校正や発送でよく一緒になる。いろいろ教えて頂いたり、生きる上でのヒントを見せてくださる。現役の頃は大きな会社の重役だったそうだがそれと関連してもしなくても広く世界に乗り出す生活を送っておられたらしい。その心を濃い言葉で描く強烈な歌集である。その強烈な裏にあるそそとしたたたずまいの歌に惹かれるなんて書きたいけれどそういうたたずまいが又強烈な印象だ。いわゆる「濃い」人生を送るべく生まれついた方なのだ。このままどんどんお進みください。良い歌が多く、選歌という意味で抜き出したのではなく並べる。
汝(な)を成しし父母のいのちに尽くしたかあけびは身を割りひっそりと問う
やまかがし赤の斑紋揺らせ逝くわれには足らぬ執する覚悟
アジテート止すを決意と始めたがいまだアジってるわたしの短歌
夕焼けの空に燃すべきいささかの怒りをまとめ会議終わらす
しんしんといとおしきかな宙わたる月と寡黙に酒飲む汝を
会議果てぽつねんと月を見ており人を恃むを嫌う野うさぎ
生殖の単純にして激しくも蛙の声はまっとうである
ひとふりの匕首のようなる三日月を胸に忍ばせ逢いにゆきたし
八月は『火垂るの墓』を教材に日本語教師のわれは選んだ
平原は夕陽吸い込み黒く燃え轢死カンガルー悼みておりぬ
責めること汚れた行為と思う日よ枝垂れ桜に心音を聞く
牧童の鋭き口笛にいっせいに馬駆けだして、必死のわたし
白亜紀の骨格化石タルボサウルス鋭き歯を見せて我を見下ろす
くれないか白銀いろか我に棲むおみなのこころは 春雨の夜
人を思いし余韻のごとし冬の陽にていかかずらの種子風に散る
しかれども枇杷の花咲く冬日陰われにもひそと枇杷の花咲け
全共闘の君なれば独り逝きたり襤褸の旗を霧に掲げて
ひづめ跡著しく残れる初雪に言えないことば埋めて帰る
シェーファーで書いた便りをさらさらに月にさらして記憶の君へ
左舷の南十字星右舷の北斗を胸分けてゆくわれの大船
ゆたにたゆたに歳は心を遊ばせるしずかに栗を剝く古稀われは
五月革命「敷石の下に海がある」茱萸坂は海に繋がりいるよ
「泣く児は殺せ」船艙に隠れしわれら 泣くな恵美子と母は祈りき
吾の骨を耀かしめよ絢爛のひまわり畑の風に散らせて


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