長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

549 『白い年賀状』

2018-03-09 22:51:38 | 日記
千田政子第二歌集 2017年12月 角川書店
かりん歴26年のベテランの方で、まだお会いしたことはたぶんない。長いことかりんの写真係をされていたそうだ。
この歌集は日本ッカー協会の偉いさんだったらしいご主人の闘病と死、二人のお姉さんの永眠、その後を元気に生きる暮らし旅行の様子を中心にまとめられている。写真が上手なせいだろうか映像が浮かぶ詠み口である。お元気でご健詠を。

われの名が刻印されしチケットが届きて迫るワールドカップ  (2002年、決勝戦特別チケットだそうだ)
新緑の満天星(どうだんつつじ)苦笑せり<ベッカム・カット>は夫のいたずら
失点に己を許さず決勝のドイツのカーンはポストに凭れ
人数がふえるそのつどわれ下がり集合写真のカメラは孤独
牧水の鮎も跳ねしか坪谷川今日も静かに流れておりぬ
金色の蛹の色が黒ずみてオオゴマダラの羽化はじまりぬ
病ゆえの姉強ければ受けて立ち姉の弱れば愛しさわきぬ
朝夷奈切通の標示曲がれば地に向けて<天使のラッパ>音なく咲けり
銀鮭の一生ここから始まるとキャビラノ孵化場の空気つめたし
獅子舞の大きな口にご祝儀をはさみて男孫はお守りを受く
血液のサラサラ薬が仇となり夫の全身は薬疹の海
ホスピスに「霊安室」はございません正面玄関から堂堂と出る
新盆を迎えて白きちょうちんを灯せば帰るあの日の夫(つま)が
元旦の雪は「白い年賀状」新しい一歩をあなたに誓う
全自動のトイレは快適楽しくてフタ上るたびあいさつをする
大切に保管されいし<背番号10>遺品の中の亡夫(つま)のユニフォーム
クリスマスの七面鳥を焼く婿ウエインの得意な料理われはみており
五本指のソックスはけばのびのびと根っこがほしい地に足つけて