脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

e. s. t. (エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)

2014年06月14日 14時57分49秒 | 音楽
数年前、深夜のFM・JAZZ番組で偶然耳にしたスウェーデン人のピ
アニストがいた。キース・ジャレットのようなタッチで一聴して惹かれ
た。名前が判らないままだったが、どうもe. s. t.というピアノ・トリ
オのピアニスト、エスビョルン・スヴェンソンだったようだ。

スヴェンソンは1964年生まれ、ベースのダン・ベルグルンド(1963年生)、
とドラムのマグヌス・オストロム(1965年生)とほぼ同年代がトリオを組
み、1991年から演奏活動をしていたらしい。
(真に残念なことだが、スヴェンソンは2008年6月、スキューバ・
ダイビング中に、海で事故死しているそうである。享年44歳。)

e. s. t.を知り、早速図書館から数点のCDを取り寄せて聴いてみた。
今となっては晩年の作品『Leucocyte』(2008年録音)を一聴し、誰の模
倣や影響でもない、独自の新しい音楽世界に、出会えた気がした。

これはJAZZに基礎を置くノン・ジャンル音楽というべきか。三人と
もロックの影響は受けているようだが、音作りや音運びに幻想的な奥行
と膨らみがあり、その点プログレ風でもあり、トータスやヘンリー・カ
ウのような前衛ロック風でもある。「実験音楽」っぽい印象でもあるが、
スヴェンソンのピアノの調べは、どこまでもピュアで、繊細で美しい。

『Tuesday Wonderland』(2006) 、『Seven days of falling』(2003)
『Good morning Susie soho』(2000)、『From Gagarin's point of view』
(1998)(各カッコ内は録音年を表示)とランダムに聴いてみたが、e. s. t.
は、21世紀の新しいJAZZ音楽に、方向性を示しているように思う。

テーマを中心に各自がソロをどう展開するかという従来のJAZZでは
なく、あるモチーフの大枠の中で、自在にトリオが共振し続けているよ
うな、テーマではなく、音響空間が提示され、果てのない音調の展開、
三人の共時的インタープレイが聴者を引き込み、魅了していく感じだ。

実に新鮮で、素晴らしいトリオ演奏である。それだけに、スヴェンソン
の早死は、音楽ファンにとって本当に、心から残念で悔やまれる。彼の
才能と栄誉を称えたいと思うし、今更ではあるが、ご冥福を祈りたい。




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