脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

『獄窓記』(山本譲司)を読む。

2010年01月30日 11時25分49秒 | 読書・鑑賞雑感
著者は演歌歌手ではない。あれは「山本譲二」である。
お二人はお知り合いらしいが、山本譲司氏は、菅直人氏の秘書を経て
都議会議員さらに衆院議員(民主党)に当選、二期目に当たる2000年
に秘書給与詐取容疑で逮捕され、翌年に一審で懲役1年6ヶ月の実刑判
決を受けるが、控訴せずに栃木県の黒羽刑務所に服役する。

「獄窓記」の書名通り、本書の大半は獄中生活433日の体験記である。
服役中に、辻本清美(社民党)議員が同種の事件で議員辞職をするが、
当時の山本氏(辻元氏とは早大でのゼミ仲間)の胸中の揺れが腹蔵なく
語られてもいる。

山本氏は服役中に障害者等が働く「寮内工場」の「指導補助」という役
に就くが、排泄のコントロールさえ出来ない同囚の下の世話、便で汚れ
た床を掃除し、糞まみれのパンツを洗濯し、入浴の介助をし、されてい
た様子である。

私も以前から触法障害者の服役とはどのようなものになるのか、疑問に
思えていたが本書を読んで初めて分った。一般社会以上に規律の厳しい
刑務所生活である。歩き方から布団での寝方まで規則で決まっている
ホリの中である。果たして障害者(知的・身体・精神)が適応できるのか
という疑問である。

本書に拠れば、犯罪者はA・B・L・Yと等級区分されるらしく、関東
地区でいえば、A級(初犯者)は黒羽刑務所、B級(再犯者)は府中・横浜
・甲府の刑務所、L級(刑期8年以上)は千葉刑務所、26歳未満のY級
者は川越刑務所、加療を要する者は八王子医療刑務所という振り分けが
一般的傾向のようである。

では触法障害者は何処へ行くのか、八王子かと言えばそうではない。
そこで本書に登場するのが「寮内工場」という、一般受刑者が勤める工
場とは別に、生活寮の中に設置されている施設の存在である。障害者等
(ここで「等」とは認知症者、非識字者、覚醒剤後遺症者、懲罰常習者
、自殺未遂常習者、同性愛者など)は、その刑期や前科等に応じて各々
の刑務所に振り分けられ、そこの「寮内工場」勤務となるようである。

刑務所では刑務官・看守が受刑者の中から「指導補助」役を選任し、
囚人に障害者囚人の面倒を看させる仕組みがあり、山本氏もそのお役目
に就いた体験が、彼自身の人生の方向を大きく変える程のものだったよ
うである。本書を読んで、触法障害者の服役の実態を知り得心した。


山本氏は、出所(出所当時40歳位)後は、政治の世界とは縁を切り、
訪問介護職に転じて、介護福祉の現場に身を置いている。
私は、山本譲司さんの高潔さに敬服している一人である。

この度ようやく『獄窓記』に眼を通したが、山本さんは現在、一介の
ホームヘルパーとして働かれているご様子であるが、氏の優れた人脈
・知脈・見識等を活かし、障害者・介護福祉の向上に政治力も発揮し
て下さるよう願いたい所存です。

山本さん、この零細ブログからも応援しております。
あなたのような方が、今の日本にいらっしゃることだけで、
私は、救われる思いです。
志のままに、でもご自愛も忘れず、
どうぞあなたの真実の姿を見せて下さい。




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